表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第8章 偽物編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

542/597

28.誰がキリストの母だ

「エリ様……ついに神になったんですか……?」

「誰がキリストの母だ」


 家を訪ねてきたリリアがそんなことを言うので思わず突っ込んでしまった。

 リリアはそっと声を潜めて、私に尋ねてくる。


「あの、本当に心当たり、ないんですよね?」

「あってたまるか」

「エリ様じゃなくて」


 リリアがちらちらと周囲を窺った。

 部屋の隅に侍女長が控えているが、彼女はプロだ。何を聞いたとて知らないふりをしてくれるだろう。

 リリアがさらに一段、声を落とす。


「エリ様とお兄様、痩せてるときは結構似てたじゃないですか。その子のお母さんがお兄様とエリ様を見間違えたのかも……」

「怒るよ」

「真面目な話でふ、いひゃい、いひゃいれすエリしゃま」


 頬をつまんでやると、不満げに眉を顰めて抗議された。

 ため息をついて、頬杖を突く。やれやれ、リリアは前世できちんと保健体育の授業を受けていなかったのだろうか。


「あのね。お兄様が痩せたのはこの1カ月の話だろ。人間の子どもは1カ月では生まれないよ」

「あ」


 リリアが口を開け放した。

 分かればよいと頬を離してやって、紅茶のカップに手を伸ばす。


 そう。お兄様の体積が減っていなければ、お兄様と私を見間違える人間などこの世にいるはずがないのである。

 十月十日というくらいだ、人間の子どもが生まれるには時間が掛かる。痩せた状態のお兄様とあの母親との間に「何か」があったとて、その結果が生まれるには早すぎるのだ。


 だいたい、お兄様は外にも出られず引きこもっていたから痩せてしまったという話だった。

 出会っているわけがないのだから、間違えようがない。簡単なことだ。


「そんなことよりエリ様、いい加減何とかしてくださいよ」

「この騒動を『そんなこと』で片づけたのは君が初めてだな」

「そ、そうですかぁ?」


 何故照れる。

 件の乳幼児の件、アイザックに話してもマーティンに話しても、訓練場と騎士団の連中に見せても、全員唖然呆然と言った反応だった。

 訓練場と騎士団では神妙な面持ちで「本当に心当たりはないのか」と聞かれたのでそこはリリアも同じかもしれないが。

 

 視線で「何が」と問いかけてやると、リリアがだらんと机に体を預けて脱力した。


「北の国の王子様、ていうかあの双子です……もうお姉さんなんか、お見合い勧める親戚のおばさんみたいになってて、しょっちゅう教会に来てて」

「優良物件だと思うけどね」

「エリ様」


 リリアがじろりと私を睨んだ。

 すまし顔で受け流すと、じたばたと机を叩いて暴れ出す。


「怒りますよ! もう!」

「怒っても可愛いだけだよ」

「ぐぎぎぎぎ」


 嘯いて鼻先を突いてやると、怒っているのか喜んでいるのか判別がつきがたい反応が返ってきた。



 ◇ ◇ ◇



「リリアさんは?」

「帰ったよ」


 乳児の様子を見に行くと、先客のクリストファーがいた。

 彼もすっかりメロメロなので、しょっちゅうこうしてベビーベッドに貼り付いている。


 柵の中を覗き込めば、乳児がすやすやとよく眠っていた。

 眠っていると静かなのだが……ずっとこうなら苦労しないものを。


「リリアも見てみたいって言っていたけど。せっかく寝てるのに、起こしたら面倒だからね」

「起きてたって大人しくて、いい子ですよ」


 クリストファーがそっと、乳児の頬を指先で撫でる。

 乳児が眠ったままで、クリストファーの指を掴んだ。


「ふふ、かわいい」


 ふにゃりと幸せそうに笑うクリストファー。

 この世の可愛らしさと幸福を詰め込んだような光景である。まるで天使がじゃれ合っているようだった。


 彼の様子を横目に、やれやれと肩を竦める。

 あまり情を移すと、離れるときにつらくなるぞ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍最新6巻はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生幼女(元師匠)と愛重めの弟子の契約婚ラブコメ↓
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜

社畜リーマンの異世界転生ファンタジー↓
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
[良い点] リリアが死ぬのもわかるわ…すげーな、少女漫画のヒーローのポテンシャル
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ