19.キャラデザのコンセプトが同じ
「お招きいただきありがとう」
「こちらこそ」
一週間後。
開催されたガーデンパーティーで、私は北の国の姫巫女様……ターニャ王女と対峙していた。
国を挙げての大々的な儀式めいたお迎えでちらりと顔は合わせていたが、こうして話ができるような形で会う機会はなかった。
ここでしっかりとアピールして、きちんと諦めてもらう必要がある。ここが正念場だ。
すらりと長い手足、透き通るようなプラチナブロンドに、ラムネのような淡いアクアマリンの瞳。儚げな雰囲気がありながらも、自信にあふれた佇まいが彼女らしい。
隣に立つ神子様ことサーシャ王子――双子だけあって全体的なカラーリングはターニャ王女と同じだが、瞳の色だけが鮮やかな赤色だ――と並んでいると、非常に絵になる。
RPGなんかでプレイヤーキャラを男か女か選択できるようになっているものがよくあるが、それの主人公キャラのようだ。
それぞれ女性らしい、男性らしい見た目でありながらも、キャラデザのコンセプトが同じと言うか。
この場合同じなのは遺伝子なのだろうが。
「これがエリザベスの愛しのダーリン?」
「ああ」
隣にいたリチャードの肩に腕を回す。
彼も今日はパーティーだけあってきちんと正装している。いつもより盛れていること間違いなしだ。
だが如何せんフツメンよりのイケメン。隣にばっちりめかし込んだ私がいるので、少々霞んでしまっているような気がして、「いやぁ、悪いね」という気分だ。
だからといって自分のメイクや衣装選びに妥協をする気はないのだが。
滅多にない我が家主催のパーティー、しかもお兄様の発案だ。主催者の家族として、お兄様の顔に泥を塗るようなことはできない。
最大限に気合を入れた顔面でおもてなしをするつもりで、いつもに増してきっちり仕上げてある。
おかげさまで登場しただけで参加者のご令嬢の目がハートになっていたほどだ。
引き立て役までこなしてくれる働き者の「ダーリン」にありがとうの思いを込めて、彼を紹介する。
「リチャード・ヴィルヘルム。私の自慢のダーリン」
「……お会いできて光栄です」
「ふぅん」
ターニャ王女が上から下まで、検分するようにリチャードを眺める。
遠慮がないながらも、見目麗しいターニャ王女がやると嫌悪感がない。美人と言うのは実に得である。
リチャードも戸惑いながらも、彼女を睨みつけるようなことはしなかった。
私に対する態度とずいぶん違うな、お前。
じっくりリチャードを観察したあと、ターニャ王女は形のよい眉を寄せながら、首を傾げた。
「うちのサーシャの方が背も高いし、顔も可愛いわよ。サーシャじゃダメ?」
「姉さん」
「婿入りだって嫁入りだって構わないし、身分だって折り紙付き。悪い話じゃないでしょう?」
ぐいぐいと詰め寄ってくるターニャ王女の肩に手を置いて制しながらも、サーシャ王子が私に向かってニコリと微笑んだ。
ターニャ王女と同じ、少し癖のある髪がふわふわと揺れる。
「けど、僕も知りたいな。エリザベスさんがどうして、リチャードさんを選んだのか」
言われて、私もリチャードに視線を向ける。
リチャードは視線に気づいてこちらを向いたが……やはりちょっと喧嘩腰というか、視線から「何を言う気だお前」というのがにじみ出ている気がする。
そっちがその気ならと、私は昨晩考えてきた台詞を口に上した。
「リチャードはこう見えてとても家族想いでね。故郷である西の国に家族を置いて婿入りはできないと言っていて」
「え?」
「あら」





