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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第7章 天下一武道会編

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28.エリ様が事態をややこしくしてる件(リリア視点)

「あ。繋がった」

「え?」


 気づくと、目の前にエリ様がいました。


 いきなりすぎて、慌てて周囲を見回します。

 真っ白な空間にわたしはいて……目の前の壁に、エリ様の姿が投影されているようでした。

 短焦点プロジェクターでも置いてあるのかと思いましたが、そういった機材は見当たりません。


 エリ様の後ろには、まるで洞窟の中のような背景が広がっています。

 そこどこ、と思いますが、まずここどこ、が先でした。

 わたしはこんな、真っ白な空間には覚えがありません。

 さっきまでパジャマでベッドに転がっていた、はずで。


 つまり、これは。

 わたしが寂しさのあまりイマジナリーエリ様を作り出してしまったのでなければ。


「ゆ、夢……?」

「まぁ、そんなところ。夢を通じて君の脳内に直接語りかけてる、みたいな」


 エリ様がわたしの言葉を肯定します。


 脳内に直接語りかけられている割に画面の向こう側みたいな感じなのは何故でしょう。

 目の前にエリ様が現れたらしがみついて離れないつもりだからでしょうか。


「何度呼んでも返事がないから、もう次に行こうかと思ってたよ」

「次、とは、」

「たぶんレイあたりなら、まだ覚えてるんじゃないかな」


 エリ様の言葉に息を呑みます。

 こちらはエリ様の言っているとおりの状況だったからです。


 つまりエリ様は……今こちらで何が起きているか、知っているということでしょう。

 勢い込んで壁に近づいて、エリ様を見上げます。


「な、何が、起きてるんですか!? わたし以外、いえ、わたしとレイちゃん以外、みんなエリ様のこと、忘れてて! エリ様一体全体今どうなっちゃってるんですか!?」

「ちょっとややこしいことになっていて。私の存在が消されかけているらしい」

「はい?」


 はい?


 エリ様の言葉に、そう聞き返しました。

 予想より……いえ、もとから大して予想なんてついていませんでしたけど……突拍子もないことを言われている気がします。


「私も受け売りだから、よく分からないけど。認識阻害の上位互換ってとこかな? 山脈を越えてそちらにも影響があるぐらいだ。相当強い力みたいだね」

「山脈って、エリ様、今どこに」

「北の国」

「そんな、……北の国にも、探してもらったのに、」


 エリ様の回答に、唇が震えます。

 確かにエリ様は、北の国の国境付近で行方不明になりました。

 だからエリ様がそちらにいること自体は、おかしなことではありません。


 でも……それは、北の国がエリ様の所在を隠していたということです。

 捜索に協力するフリをして、隠していたということです。

 つまり、エリ様は今……北の国で、囚われていたり、するのでしょうか。


「うん。何かそんな通達は来ていたらしいって聞いたよ。公爵令嬢を探してくれって」


 わたしの呟きに、エリ様が頷きました。

 それならやっぱり、エリ様は。


「もうちょっと言い方ってものがあるだろ」

「え?」

「その指示で私が見つかると思う?」


 ぽかんと口を開け放ちました。

 そうでした。

 何だか最近エリ様の存在というか性別エリ様が当たり前になってしまって忘れていましたけど……エリ様、とてもではないけれど、公爵令嬢には見えない外見をされているのでした。


「何なら私も捜索に参加しちゃったよ」

「エリ様が事態をややこしくしてる件!!」


 その場に崩れ落ちました。


 何ということでしょう。行方不明になったのがエリ様だというだけで、こんなに面倒くさいことになるなんて。

 かといって「男装している公爵令嬢を探してください」と言ってもその検索にエリ様が引っかかる気がビタイチしませんでした。


 それどころか「男装していて男にしか見えないけど実際は女性の公爵令嬢を探してください」とか指示しようものなら現場が混迷を極める気しかしませんけど。

 捜査を撹乱したいのかと思われそうな説明です。

 事実なのに。全部事実なのに。

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― 新着の感想 ―
息ができる
[一言] 確かにそれでは見つからないですね笑 私も盲点でした!さすが先生!!
[一言] エリ様大好き組が記憶取り戻した後、リリアちゃんが胸張ってイキリ散らかす未来が見えた
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