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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第7章 天下一武道会編

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17.番狂せも予定調和も

 もう一つのトーナメントでも番狂せがあった。

 私を始め多くの人間が優勝候補と目していたであろう近衛師団が敗退したのだ。


 近衛師団を破ったのは、第四師団。

 私が普段警邏でお世話になっている師団だ。


 勝負は大将戦までもつれ込んだが、大将戦はロベルトとマーティンという、しょっちゅう一緒に手合わせをしている者としては非常に見応えのあるカードだった。


 第四師団の師団長は「ボク頭脳派だからなぁ〜」とか言いそうであったが……実際あそこの師団は腕っぷしで言えば副師団長の方が強いと思う。騎士団の中では珍しいタイプだ……近衛の大将としてマーティンが出てくるのは意外だった。


 実力から言っても、日々強くなっているとは言え、まだマーティンよりも近衛師団長の方が上だろう。

 それなのに何故近衛はマーティンを大将に据えたのか。


 総力戦対策なのか、それとも近衛師団はこのお祭り騒ぎを実践形式のトレーニングの場と見做して後進育成に当てているのか。

 ……後者の気がしてきた。もしかしたら一番合理的にこの大会を利用しているのは近衛師団なのかもしれない。


 スピード特化型のマーティンとパワー特化型のロベルト。

 どちらが勝つか私も楽しみに見守っていたのだが……闘技場の舞台の上という限られたスペースで、かつ隠れるところがないという環境がロベルトに有利に働いた。

 実力という意味ではほとんど五分と言える状態だったからこそ、そのほんのわずかな差が勝敗を分けたのだ。


 続く訓練場と第四師団との戦いは総力戦となった。

 アイザックの采配もあり訓練場の面々も善戦したものの、やはり現役騎士、しかも師団長と副師団長という大将クラスが2人いるという力量差はひっくり返せなかったようだ。

 こうして、第四師団は決勝に駒を進めることとなった。


 そして第七師団を打ち破ってトーナメントを勝ち進んでいた第十一師団……もとい、仮面の男たちだったが、次に当たった第十三師団との戦いであっさりと敗北した。


 団体戦の大将扱いで十三の師団長と当たったヨウには、事情を知っている者は皆始まる前から合掌していた。

 むろん、同じ師団のペストマスク……フィッシャー先生も同様であっただろう。

 もはやこれを見越して大将をヨウに譲ったのではないかと疑うくらいだ。


 可哀想なほどあっという間にボコボコにされた狐面……ヨウは「ちゃんと人間以外は出禁にしてほしいデス……」と言い残して地面に倒れた。

 さすがに同情する。


 諸々の番狂せも予定調和もありつつ、決勝戦のカードが決定した。

 第四師団対、第十三師団。

 チキチキ(中略)天下一武道会の決着の時が、いよいよ近づいていた。


 大丈夫だろうか。

 こんなに大仰な大会を催しておいて……優勝者に与えられるのは別に金銀財宝でも勲章でもなく、私への優先交渉権だけなのだが。

 みんな大会が楽しくなってきて盛り上がってしまってそのあたり、忘れていないだろうか。最後に思い出してガッカリするのでは。


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