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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第6章 魔女編

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56.こっちこそ、死んでも御免だ。

エリザベス視点に戻ります。




 気づくと、ロベルトと戦っていた。


 頭がぼーっとする。自分が今まで何をしていたのか思い出せない。

 今も、分厚いガラスの向こうに自分の姿を見ているような気がする。

 まるで水の中にいるようだ。音がくぐもって、よく聞こえない。


 酸素が足りないような、うまく動かない脳の中に「早く行かなくては」という思いだけがこびりついていた。

 そうだ。早くロベルトを退けて、行かなくては。

 邪魔者は、排除しなくては。


 模擬戦だろうか? それにしては、ロベルトの表情が暗い。

 いつも私と戦る時は楽しそうにしているのに。


 ロベルトの肩の向こうに、リリアの姿が見えた。

 ぺたりと座り込んで、涙の滲んだ目でこちらを見ていた。何かを叫んでいるが、聞こえない。


 私の手にあるのは、私がロベルトにやったナイフだ。

 西の国の土産で、見た目よりもずっしりと手応えのある重さで、よく切れる……

 それを、逆手に構えて。

 彼の眼前に突きつけて、勝負あり、だ。


 いつもなら、模擬戦なら、そこで終わりだ。それなのに……何故か私の身体は、止まらなかった。

 勢い余って、というわけではない。

 明らかな意志を持って、それを振りかぶる。


 どうしてだ、勝負はもう決まったはずだ。

 もうこれ以上は、必要ない。


「隊長」


 ロベルトが私を呼ぶ。


 身体を止めようとするが、思うように動かない。

 何だ、これは。

 私の身体だろうが。

 何故言うことを聞かない。


 ロベルトの顔を見る。

 彼はこちらに向かって腕を伸ばし、瞳に涙を溜めながら……私を見て、泣き笑いのような顔で、微笑んだ。


「俺、貴女にだったら――殺されてもいい」


 ふざけるな。


 自分の腕を止めようとする。

 水の中でもがくような、分厚いガラスに阻まれているような感覚がするが……そんなもの、知ったことか。

 私の身体だ。

 私の言うことを聞け。


 頭の中で声がする。

 邪魔者は消してしまえと誰かが言う。


 うるさい、黙れ。

 誰が私の脳内に直接語りかけていいと言った。

 私の頭だ。

 他人の言うことではなく……私の言うことを聞け。


 リリアの悲鳴が聞こえる。

 ふっと、「何か」が緩んだ気がした。


 拳を握る。

 動いた。私の意志で……私の身体が、動いた。

 相変わらずまるで他人の体のようだが……それでも、動いた。


 ナイフを握る手に力を込める。

 動け。

 動け、動け!!


 目の前のロベルトを見る。

 何だその、泣きそうな顔。情けない顔をしやがって。

 何が殺されてもいい、だ。


 殺すこちらの身にもなれ。

 こんなことでお前が死んだら。

 私の寝覚が悪いじゃないか。

 私の飯がまずくなるじゃないか。


 そんなもの――こっちこそ、死んでも御免だ。

 

「ふ、ざけるな!!!!」


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[一言] エリザベスァァァアアアアアアアアアア‼︎‼︎
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