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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第6章 魔女編

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53.私の知るエリ様は(リリア視点)

「シリアスでしんどい」という理由で突発毎日更新が始まっております。

昨日も更新しておりますので、まだの方は1話前からどうぞ。


引き続きリリア視点です。




 ヨウはフィッシャー先生の指示で……ロベルト殿下の手前若干ぼかしていましたが、エリ様からだいたいの事情を聞いているわたしには筒抜けです……エリ様の護衛に当たろうとしたようです。

 自分が怪我をしたことで、エリ様が魔女により一層興味を持つのではないかと危惧したから、ということでした。


 ふ、ふ――――――ん????


 それはあれですか? エリ様は昔先生のことが好きだったから、先生がやられたと知ったら、怒って魔女に挑みに行くんじゃないかってことですか??

 それとも、自分がエリ様と仲良く手合わせしたりしてるから、そんな自分がやられたら「先生を倒すなんておもしれー女」って魔女に興味を持っちゃうんじゃないかってことですか??


 ふ――――――ん????

 どっちも嫌なんですけど????


 ヨウがエリ様の後をつけていたところ、運悪く魔女に行き合ったそうです。

 魔女に会った男は皆使い物にならなくなる、とか聞きましたけど。エリ様もどこかぼんやりした様子で、魔女についていこうとしたそうです。


 それを止めようとしたところ……ボコボコに伸されてしまったとのことでした。

 その怪我、魔女じゃなくてエリ様にやられたんですね。


 ドMになったと聞いていましたが、エリ様にボコボコにしてもらえたにも関わらず、ヨウはまったく嬉しそうではありませんでした。


「あれはいつものエリザベスではありまセン。意識があるのかないのか……阿片窟にいる人間の目と似ていマス」


 阿片って、あれですよね。非合法な危険薬物的なやつですよね。

 ぼーっとしていることはあれど、そんな不健康そうな目をしたエリ様というのは、あまり想像できませんでした。


「普段のエリザベスになら、踏まれても蹴られてもいいのデスが」

「踏……?」


 よく見ればヨウの背中には靴跡が残っていました。

 ガチで踏まれたっぽいです。


「死ぬかと思いまシタ」

「お前、隊長に殺されたがっていたくせに」

「ンー?」


 ロベルト殿下の言葉に、ヨウが一瞬目を見開きました。

 でもそれはほんとうに一瞬のことで……すぐに彼は、ふっと小さくため息をつきます。


「そうデスね。あのまま戦っていたら、きっと殺してもらえまシタ。でも……今のエリザベスに殺されても、面白くありまセン」


 ヨウが芝居がかった様子で肩を竦めて、首を横に振ります。


 それはやっぱり、エリ様が異常な状態であることを示していました。

 だってエリ様は……いくら嫌いでも、ヨウを殺したりしない人だから。

 そんなことをするくらいなら、爆発が起きた廃屋に置いて逃げたはずです。


 エリ様に言ったら「私を勝手に善人にするな」って言われそうですけど……私の知るエリ様は、人の心はないし、性格も悪いけど……でも決して、極悪人というわけではないのです。


「エリザベス、プライドが高いデス。誰かに助けを求めるとか、嫌がりそうでショウ?」


 ヨウがクツクツと喉の奥で笑います。

 細められたその奥の瞳は、相変わらず暗く澱んでいて……エリ様のいわく「他人を騙すことをなんとも思っていない目」でしたけど……

 それでも、あの廃屋で対峙したヨウよりも、意志のこもった目をしているように、見えました。


「勝手に生きろと言われまシタから。エリザベスが嫌がりそうなことをして、ニヤニヤ眺めて生きていくことにしまシタ」

「お前……」

「それでも、ワタシでは勝てまセンから」


 ヨウがふざけた言葉とは裏腹に、真っ直ぐロベルト殿下を、そしてわたしを見つめます。


「このまま魔女に連れて行かれたら……二度と戻って来ないかも。そうでなくても……ワタシ以外にも誰か、傷つけてしまうかも」


 ヨウの言葉に、ロベルト殿下が息を呑みます。

 そしてこれでロベルト殿下も分かったのでしょう。

 口ではいろいろ言っていますけど……ヨウもエリ様を、助けようとしているのだと。


「第一師団で聞きまシタ。聖女なら、魔女の力に対抗できる可能性がある、と」


 視線を受けて、わたしは小さく頷きます。

 聖女の魅了については、一般的には知られていませんが、資料を探れば乙女ゲームの知識がなくても、十分想像が出来る範囲のものです。

 この国の研究者や、教会の偉い人なんかは、ある程度理解していても不思議ではありません。


 その偉い人たちの推測と、わたしの推測が重なっている。つまりきっと――この推測は、正しい。


「デスから、お願いしマス」


 ヨウがずるずると壁を伝って、地べたに倒れ込みます。

 土下座なのか、単に体力の限界なのか分かりませんが……聖女の祈りをかけようと近づいたわたしに、彼は譫言のように、こう呟きました。


「あいつを、止めてくれ」


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― 新着の感想 ―
ヨウの消化しきれないクソでか感情、大好物です。ご馳走様です。
[一言] ヨーウ!!!ヨォォォォオオウ!!!ドゥエッヘッヘェイ‼︎‼︎ って変な声が出ました。なんかヨウって……もしかするともしかするとかっこいい??んでしょうか??? ただのドMだと思っていただけ…
[気になる点] 前回の終わりの台詞で、「まさかエリザベスがバーサーカー状態に?!?!」と、驚きましたが、 今回で違うと分かり、魔女にボコボコにされたかと思ったら、結局やっぱりエリザベスの仕業でしたね。…
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