表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第6章 魔女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

422/598

45.一生知らないままでいたい。

 そこまで考えて、口では私のことを好きだなんだと言いながら歪んだ感情を向けてくる男の存在を思い出した。

 定型文に「心から」を付け加えておくべきかもしれない。


 ストーカー未遂のドM予備軍のことを思い出したついでに、気になっていたことをリリアに尋ねてみることにする。


「そういえば、ヨウのことだけど」

「エリ様」


 リリアがまた不機嫌そうに頬を膨らませた。


「ここで他の男の名前を出すのはさすがにデリカシーがなさすぎです」

「そう?」

「レッドカードです、一発退場です」

「じゃあ帰ろうかな」


 私が立ち上がろうとすると、リリアが腕を掴んできた。

 そして文句ありげに腕をぶんぶんと振る。そんな不満のぶつけ方をされても可愛らしいだけなのだが。

 流石に私も走っている馬車から飛び降りたりしない。ちょっとした冗談である。


 浮かせかけた腰を下ろして、話の続きを再開する。


「うちの訓練場の教官が引き取って性根を叩き直そうとしたらしいんだけど、なんの手違いかドMになっていて。まぁあの教官がドMなのは昔からだから仕方ないのかな」

「情報量」

「最近ちょっとストーカーじみてきて困ってたから、一度説得しようとしたんだ。最終的にはフィッシャー先生が引き取ってくれることになったけど」

「情報量が多い」


 枕の段階で、リリアがすでにお腹いっぱいの顔をしていた。

 私も正直ヨウの変態性には困惑している。ゲームではそんな素振りはなかったように思うのだが……いったいどこでどう足を踏み外したらああいう仕上がりになるのか。

 一生知らないままでいたい。


 話を本題に戻す。


「私に執着するなって趣旨のことを言ったらあいつ、『ワタシには何もない』って」

「『何もない』?」

「おかしな話じゃないか? ロイラバではヨウは病気の母親のために、スパイを買って出たっていう設定だったろ」


 私の言葉に、リリアは顎に手を当てて、少し考えるような仕草をする。


「わたし、不思議だったんですよね。ヨウは確かに東の国のスパイだったけど……一途な押しの強い外国人キャラっていうか。ゲームでは割と純粋な感じだったじゃないですか」

「まぁ、そうだね」

「でもこの世界のヨウは違いましたよね」


 リリアの言葉に頷く。

 表面上は、好意の矛先がリリアに向くか私に向くか、という違いだけのようにも見えるが……中身は全く違っていた。

 最初から彼の態度にはどことなく、悪意というか違和感があった。

 少なくとも、ゲームの印象とはずいぶん違ったことは確かだ。


「わたしにも愛人にしてやろう、とか言ってましたし」


 そんな話をしていたとは知らなかったが……リリアを誘拐した時だろうか。

 そういえば東の国には後宮があるという話だった。つまり、一夫多妻の制度があるということだろう。


 だが、リリアの言わんとしていることが読めてきた。彼女が何を、不思議に思ったのか。


「ゲームのヨウの設定から考えたら……愛人、なんて、絶対嫌なはずなんですよね」


 そう。ヨウの母親は後宮にいる、身分の低い側妃という設定だった。

 側妃と言えば聞こえはいいが、言ってしまえば愛人だ。ヨウの母親は身分が低いために軽んじられ、顧みられず、愛人という立場に甘んじることになってしまった。

 そしてあくまで愛人に過ぎないために、ヨウにも玉座は回ってこない。


 ヨウの母親が「愛人」という立場であったために、ヨウもその母親も苦労をしていたはずだ。手柄を上げれば重用されるという嘘くさい出世話に、乗ってしまうほどに。


 その境遇から抜け出すために敵国に潜入するスパイとなることを選んだ人間が……たとえいくら見た目が絶世の美少女が相手だからと言って……愛人に、などと言うだろうか。


「ヨウがゲームと違う理由って何だろうって考えて……思い当たったんです」


 ごとり、と馬車が揺れる。

 窓の外に視線を向けると、どこかの誰かの瞳のように、黒々とした夜の闇が広がっていた。


「この世界のヨウは、自分のお母さんがもう死んでいるって……知っているんじゃないかって」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍最新6巻はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生幼女(元師匠)と愛重めの弟子の契約婚ラブコメ↓
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜

社畜リーマンの異世界転生ファンタジー↓
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
[良い点] 更新感謝
[良い点] 深いですね。 [一言] ヨウ氏、ただの変態だと思っていてすみませんでした。 スライディング土下座する所存です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ