表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第6章 魔女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

420/598

43.用語チョイスが残念すぎる

「まぁお兄様の話では、初恋……っていうか、先生に憧れてたのは本当みたいだけどね」

「せんせい?」


 声がして振り向くと、図書室の入り口にロベルトが立っていた。

 どさ、とロベルトの手から鞄がこぼれ落ちる。

 学園長先生に呼び出されて、後から勉強会に合流する手筈になっていたのだ。


 さすがに第二王子が留年させられるようなことはないだろうが、身分による忖度を差し引くと私よりも卒業が危ぶまれるのは彼なのだから、もはや参加は必須である。

 ロベルトが勉強会に合流したのはいい。

 まずかったのは、そのタイミングだ。


「は、初恋??」


 またややこしくなりそうなやつに聞かれてしまった。


 恋だの愛だのに疎そうなロベルトである。

 元のゲームではツンデレ俺様系だったが、今ではすっかり元気いっぱい脳筋系だ。


 騎士道には一種の清廉さというものも含まれている。

 「騎士たるもの、女に現を抜かすなんて破廉恥な!」みたいなことを言われかねない。

 普段から軟派系を演じている私に今更そんなコメントをしても暖簾に腕押しだろうと思ってくれるといいのだが。


 ロベルトがつかつかと私の横まで歩み寄ってくる。

 乙女ゲームの立ち絵で見たような、不機嫌そうな、難しそうな顔をして見下ろされるが……物理的には見下ろされているはずなのに、何故か縋り付くような目をしている気がしてくるから、不思議である。


「せ、先生って、誰ですか」

「フィッシャー先生」

「隊長は、ああいう男が、お好きなのですか?」

「だから、小さい頃の話だって」


 やれやれと肩を竦める。

 何回も同じ話をさせるな。


 幼女時代のエリザベス・バートンはどうだか知らないが、……と、そこまで考えて思い至る。

 もしフィッシャー先生が正エリザベス・バートンの好みなのだとしたら、ロベルトは全くタイプではなかっただろう。婚約破棄されてよかったのかもしれない。


 いや、令嬢的には全くよくはないのだろうが。

 お互いに愛のない結婚にはなっただろう。

 ゲームから大幅なキャラ変をしたロベルトを見やりながら、ため息をつく。


「子どもって皆、そうじゃないか? 年上のお兄さんお姉さんに憧れたりするものだろう」

「で、ですが」


 しどろもどろになっていたロベルトが、ぎゅっと拳を握って呟く。


「バートン伯とフィッシャー先生は、全然似ていません」

「そりゃそうだろう」


 またため息をついた。

 私はいつまで「好みのタイプ=お兄様」ネタで弄られ続けるのだろうか。そろそろ勘弁してもらいたい。


 友の会会報にも「私のことを好きになってくれる人」と公式に回答を載せてもらったのだから、そちらに情報を更新してほしいものだ。

 なかなか更新されないウィキペ◯ィアか、お前は。


「エリ様、兄属性に弱すぎですよね」


 リリアがジト目で私を睨みながら呟く。

 弱いと言われると語弊がある。子どもは皆そうだと言っただけだ。


「大人っぽいのに、意外と下の子気質っていうか」

「まぁ、甘えても許してくれそうな相手を見分ける能力は人より優れていると思うよ」

「そんなことで胸を張らないでください」


 頬杖をついて頬を膨らませながら、「そのギャップも好きですけど」と付け加えられる。もう何でもいいんじゃないか?

 ヨウくらいに振り切った変態性を身につければ幻滅してもらえる気がするが……あそこまで他の全てを擲つ気にはなれなかった。

 少しの間口をつぐんでいたロベルトが、私からリリアに向き直った。


「リリア嬢」

「は、はい?」

「アニゾクセイとは、何だ?」

「え」


 リリアがぱちぱちと目を見開いた。

 おお、何だか「異世界転生」っぽいな、こういうやり取り。用語チョイスが残念すぎるが。

 本来文明の利器とか食べ物とかでやるのがセオリーだろうに。


 リリアは至極真剣な顔をしているロベルトを見上げて……そして、私の腕にしがみついてきた。


「え、エリ様!」

「いや君が言ったんだから君が説明しろよ」


 掴まれた手を振り解く。

 現代日本でだってしたくない用語解説を何故異世界でしなければならないのか。しかも私は言っていない。


 リリアは未練がましくこちらを見ていたが、私が無視を決め込んでいるのを悟り、ロベルトに向き直った。

 両手の指を胸の前でつんつんしたり顔を触ったり頭を掻いたりとへどもど忙しなく動きながらも、何とか言葉を発する。


「あの、え、えと、な、何ですかね、あの、ええと、ほら、お、お兄ちゃんっぽい、っていうか、め、面倒見がいい、みたいな、そういう感じ、ですか、ね???」

「隊長は、それに、弱いと?」

「あの、な、何か、そんな感じ? です」


 西の国でも思ったがこの聖女、何を教えているんだ。

 転生主人公が知識をチートではなく布教に使ってどうする。

 リリアの説明を真面目な顔で聞いていたロベルトが、「アニゾクセイ……お兄ちゃんっぽい……」と呟いた。

 そして、はっと何かに気付いたように顔を上げた。


「つまり……俺も兄になれば、隊長に勝てる……!?」

「???????」


 まったく「つまり」とかいう接続詞で繋ぐのに適切ではない理論を展開し始めたロベルト。


 私もリリアもアイザックも、ついていけずにぽかんとしてしまう。いきなりケイデンスを上げるな。

 どういう筋道を辿ったらそういう思考になるのか。

 まるで重大な事実に気付いてしまった!というような顔をしていたが、一生気づくな、そんなことに。


「俺、父上に掛け合ってきます!」

「待て待て待て」


 ロベルトの首根っこを掴んで引き止める。


 何をだ。

 絶対にやめろ。


 もう18になった息子に弟が欲しいと掛け合われる父親の気持ちになれ。

 いたたまれなさすぎる。


 その後何とかロベルトを丸め込んで勉強会を再開した。国王陛下にはぜひ感謝していただきたい。

 金一封とかくれてもいいくらいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍最新6巻はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生幼女(元師匠)と愛重めの弟子の契約婚ラブコメ↓
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜

社畜リーマンの異世界転生ファンタジー↓
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
[一言] 朝から変な声を出して笑っちゃいました笑笑 ロベルトの天才的発見最高です
[良い点] 更新感謝 [一言] 相変わらずロベルトの暴走特急笑笑
[一言] >甘えても許してくれそう アイザックですね! あ、エドワードもかな。きっとマーティンも。…結局みんな許してくれそうだけど。 >面倒見がいい アイザックですね!! マーティンもかな? 振り回…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ