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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第6章 魔女編

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41.面白半分どころか面白全部

本日、モブどれの2巻が発売になりましたー!!

わー! やったー!!


表紙も口絵も挿絵も全部最高なので、ぜひご覧いただいて、また何かしらの形で感想いただけますと幸いです。




 学園での魔女騒ぎがあってから、騎士団の方は一層慌ただしくなってきていた。


 あの日以降は普通に夜警にも参加しているが、どういうルートで根回しされたのか、比較的人通りの多い区画を割り当てられることが多くなったように思う。

 それはそれで酔っ払いの小競り合いに遭遇する機会は増えているので、仕事としてはむしろすることが多いのだが。


 騎士団が忙しいからといって、私はバイトの身だ。平日は学園もある。

 多少シフトが増えたくらいで……そして出勤のたびに魔女の目撃情報や被害が増えているくらいで、さほど変化はない。

 普段通り警邏に参加したり、訓練場で汗を流したり、第一師団の詰所に出入りして騎士たちに手合わせをせがんだりと、比較的充実した、平穏な日々を送っている。


 だが一点、平和とは程遠い状況になっていることがあった。


 今日は放課後に、リリアとアイザックの3人で図書館の一角に陣取り勉強会を開いていた。

 勉強会といってもほぼ私を留年させないように他2人が頑張る会である。

 たしかに試験の結果如何では卒業が危ぶまれることもあるだろうが……平穏を遠ざけるほどの危機的状況ではない。


 問題は別にあった。


「なぁ、これどの公式使うんだっけ」

「…………」

「……アイザック?」

「……ああ、すまない。どれだ」


 アイザックがはっと我に返ったように返事をした。

 このとおり、ここ最近、アイザックの様子がおかしいのである。


 ゲームの親愛度が低い状態の彼を彷彿とさせる仏頂面でいるのはまだ序の口で、私が話しかけても反応が鈍い。何回か呼ぶまで無視されることもある。

 単に機嫌が悪いだけなら放っておくが、時折私の様子をちらちらと窺っているのだ。


 まるで私に原因があるとでも言いたげな態度だが、宿題もきちんとやっているし、授業中も割と起きている。

 そんな態度を取られる謂れはないはずだ。


 ちらりと眉間の皺がいつもに増して深い隣人の様子を盗み見る。

 一つ一つは特に大したことではないが、何度も繰り返しそんな対応をされると気になってくる。

 もう何度目かというタイミングだったので、気が長くない私は早々に直接確認することにした。


「アイザック」

「……どうかしたか」

「どうかしてるのは君だろ」


 私の言葉に、彼がふいと顔を背けた。

 先ほどから目が合わないし、これは完全に心当たりがある人間の取る態度だ。

 私に対する様子がおかしいことに自覚を持っていることは間違いない。


「何だかよそよそしいし、目が合わないし。何かあったのか?」

「……何もない」

「ふぅん」


 そう指摘してもなおこちらを見ようとしない彼に焦れて、その頬を掴んでこちらを向かせる。


「ふぎゅ」

「何もない奴がこんな顔するわけないだろ」

「は、はなせっ」


 つんつんと眉間をつついてやれば、彼が慌てた様子で私の手を振り解いた。

 そしてズレた眼鏡の位置を直しながら、吐き捨てるように言う。


「関係ないだろう、お前には」

「あるよ」


 私が即答すると、彼が目を見開いた。

 やっとこちらを見たな、まったく。


「親友だろ」

「…………」

「え、エリ様、エリ様」


 沈黙したアイザックが何を言うのかと待っていたところ、対面から机を回って寄ってきたリリアに腕を引かれる。


「リリア。今大事な話をしてるからあっちで遊んでいなさい」

「ちょっと! 何扱いですかそれは!?」


 話に割り込んできたリリアの首根っこを掴んで、元いた椅子に戻す。

 何扱いかと聞かれれば子ども扱いだ。それか小動物。

 ゴミ袋にするためにストックしようとスーパーのビニール袋を丸めていたら猫が寄ってきてしまった時のような気分である。お前と遊ぶために丸めていたわけではない。


 喚くリリアを眺めていたアイザックが、遠慮がちに私に視線を向ける。

 しばらくもごもごと口籠った後で、やっと切り出した。


「バートン。お前に、聞きたいことがあるんだ」

「ダメです」

「こら、何で意地悪言うんだ」


 割って入ったリリアの首根っこを猫のようにひっ掴んで、また元の位置に戻す。

 アイザックに向き直って続きを促すと、彼がおずおずと口を開く。


「お前の……その。初恋の話が、気になって」

「……は?」

「すまない、詮索するつもりはなかったんだが」


 アイザックが気まずそうに言う。

 何だ、そんなことか、と思った。

 何かもっと深刻な悩み事でもあるのかと構えていたのに、拍子抜けである。


 覚えていないくらい昔の話だし、面白い話でもないので聞いて彼が得をするとも思えないが……いや、面白いのか、友達のそういう話は。

 恋バナは高校生が盛り上がる話題の定番だ。


 たとえば今私がアイザックやロベルトに「好きな人が出来た」と相談されたら、どんな相手か嬉々として尋ねるだろう。面白半分どころか面白全部で。

 リリアに相談されたら面白半分本気半分で応援するだろう。いや、本気全部で応援するかもしれない。

 目下そんな日がなかなか来そうにないところだけが問題だ。


 夜の学園での魔女騒ぎの時、アイザックも意外そうな声を出していたし……興味本位で聞いてみたくなってもおかしくはないだろう。

 それはいい。別に隠すようなことでもない。


 問題はタイミングだった。

 二人のときならまだしも、よりによって……


「は つ こ い????????」


 一番ヤバいやつに聞かれてしまった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] エリザベスの、リリアちゃんの扱いが雑すぎるところですね! 微笑ましいです笑 そしてあとはなんと言ってもアイザックが存在していることですね素晴らしい。 [一言] アイザァァァァァァァアァァア…
[良い点] やべー奴に聞かれたwwwww 頑張れエリザベス!
[良い点] おぉ!! リリアの反応見れる!!やった! 2人きりならエリザベスちゃんの初恋だってすぐ説明出来るのに、 アイザックがいないので出来ないですね!!!ややこしい! 強火ガチ恋勢な反応楽しみ!!…
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