38.私の護衛なんだろう?
総合評価が35,000ptを突破しました!
ついこの前3万ptという話をしたばかりの気がするのに……感想・ブクマ・評価等々ありがとうございます!
お礼に活動報告に小話を置きました。
前に募集した小話リクエストからいろいろ詰め込んだドタバタギャグとなっています。
気が向かれましたらぜひどうぞ!
「エリザベス! ワタシは嫌デス!」
「おじさんの方が嫌なんだけど」
「捨てないでくだサイ!」
捨てるも何も、そもそも拾っていない。
縋りつこうとしてくるヨウを躱して、またヨウが飛びつこうとしてきて、というやりとりを繰り返すうちに、ぐるぐる同じところを回る羽目になる。
このまま回っていたらバターになりそうだ。
「ワタシはアナタの側にいると決めたのデス、エリザベス」
「勝手に決めるな」
話も同じところをぐるぐる回っている気がする。
会話というよりお互い壁打ちしているだけでキャッチボールになっていないのだから仕方がないが……これでは埒が開かない。
ため息をついて、ヨウに向き直る。
「お前何となく第一師団に向いてそうだし。やってみたら私にこだわるより楽しいことが見つかるかもしれないぞ」
「勝手に決めないでもらえる?」
「結構危険もあるらしいから死に場所探しにもちょうどいいだろ」
「勝手に決めないでくだサイ!」
先生にもヨウにも文句を言われた。
第一師団は新しい捨て駒が手に入って、ヨウは死に場所が見つかり、私はストーカーから解放される。全員幸せになっていいことずくめだと思うのだが。
「アナタの見ていないところで死んでも意味がありまセン! ワタシの気持ち、全く理解してまセンね!?」
きーきーと騒ぎ立てるヨウ。
他国に戦争を仕掛ける片棒を担ぐような人間の気持ちなど分かってたまるか。
その後もいかに自分が私を恨んでいるのかをつらつら言い募られるが、いくらお気持ち表明されたところで右から左だ。
何と言われようが、ヨウが私に危害を加えようとしたことは間違いない。
であれば、突き詰めたら私に関わったお前が悪い。自業自得だ。
文句を言われるうちに、段々と腹が立ってきた。
加害者・被害者で言えば私が被害者のはずなのに、何故こちらが悪いかのように言われなくてはならないのか。
攻略対象らしい重くて暗い過去と、リリアが私を選んだために彼が主人公に救われなかった点にはそれなりに同情するが、それはあくまで「大変だったね」という程度だ。
どんな理由があれ、最終的にその選択をしたのは彼自身のはずである。
現在こんなに人としての尊厳とかさまざまなものをかなぐり捨てて私に縋りついているのだから、もっと早くにその選択をすることだってできただろう。
もっと早く「すべてを放り出して逃げ出す」という選択をしなかったのは、彼自身だ。
こんなものほとんど責任転嫁だろう。自分の選択を人のせいにしてはいけない。
ぷちんと頭の中で何かが切れた。
ああもう、次から次に、ごちゃごちゃと。
「うるさい」
私は気が短い。ついでにすぐに手が出るタイプだ。
八つ当たりのような愚痴を長々と聞いてやる義理もない。
ヨウの両頬を鷲掴みにするようにして、物理的に黙らせた。
ギリギリと指に力を込めながら、ヨウの顔を引き寄せる。
彼の黒々とした瞳を睨みながら、冷たく言い放つ。
「私の護衛なんだろう? 口答えを許可した覚えはない」
「ふぁい」
ヨウが返事をした。なんだ、随分とあっさり頷いたな。
そう思って彼の顔をよく見ると……その瞳が何故か嬉しそうな色を含んでいるように感じて、ぞわりと背筋に悪寒が走る。
咄嗟に手を離して一歩後退するが、時すでに遅し。
恍惚とした表情のヨウが、うっとりと自分の頬に手を当ててため息をついていた。
「所有物扱い、想像よりずっとイイデスね……興奮しまシタ」
「こわい」
「そんな言い方をされたら頷くしかありまセン。ワタシはアナタの所有物デスから」
「寄るな」
にじり寄られて、また後退する。
冷たくしたり粗雑に扱えば扱うほど喜ばれるというのは、想像以上に厄介だと感じた。
某肉食聖女が可愛く思えてくる。リリアは一応塩対応すると怒る。「でもしゅき」とか言ってくるが。
じゃあ一緒か。





