31.私の気がおさまらない
更新が遅くなってすみません!
活動報告にお詫び(?)の小話をUPしたのでお許しください。
その日の夜。
夕食後にサロンで寛ぎながら、私はまたリリアと作戦会議をしていた。
「というわけだから、従者のリチャードと王女様をくっつけるのが手っ取り早いと思うんだ」
「えーっ、もうそんなのいいから帰りましょうよぉ」
「まだ来たばかりだよ」
唇を尖らせるリリアに、私は苦笑いをする。
ダグラス男爵から西の国行きを許可する条件として、西の国で聖女としての奉仕活動――と言う名の布教活動――に励むように指示を受けているらしく、それが面倒で仕方ないようだ。
大聖女が聞いて呆れる。
「お兄様の評判を落とさないためにも、一通りは付き合ってやらなくちゃ」
「本音は?」
「待っているお兄様をもう少しやきもきさせないと私の気がおさまらない」
私の言葉に、リリアがはぁあと大きくため息を吐いた。
兄弟喧嘩に巻き込まれる方はたまったものではないだろうが、最終的についてくるという判断をしたのは彼女なのだから、私ではなく自分の判断を恨んで欲しい。
「噂をすればなんとやらだ」
「え?」
リリアがサロンの出入り口に視線を向ける。30秒もしないうちに、侍女に案内されたリチャードが入って来た。
リリアが小さく「エスパー……」とか呟いたが、何のことはない、気配を感じただけだ。
こちらに近寄ってくる彼に、リリアがびくりと身を竦める。相変わらず人見知りは直っていない。
リチャードが私の横まで来て、懐から取り出した何かを差し出す。大仰な封蝋が施された手紙だった。
「ウチの王女様からアンタに手紙」
「ありがとう」
「一人で読めってよ」
さっそく開けようとした私を制す。
なるほど、王女様と協力することになった件について書かれているのだろう。
じとりとこちらを睨むリリアにいたずらされないうちに、手紙をポケットにしまった。
「ウチの王女様」という言い方からにじみ出る刺々しさを聞くにつけ、やはりただの主従関係には収まらない「何か」があることは明白だろう。
そのあたり、もう少しつついてみてもいいかもしれない。
「なぁ、リチャード」
「…………」
「リチャード?」
返事がない。
さすがに無視される謂れはないぞと思って顔を上げると、彼は一点を見つめてあんぐりと口を開け放している。
その「一点」というのはリリアが座っている辺りで……そして彼の目は、見事にハートになっていた。
あーあ、と心の中で合掌する。
どうやらリリアの魅了が入ってしまったらしい。
リリアも彼の熱視線に気づいたようで、小さく「ヒェッ」と息を飲んでさらに縮こまった。
コミカライズの世界線でも「従者かなんか」程度の扱いだったようだし、私かそれ以上のモブだろう。
モブ特攻が効きやすいのも宜なるかな、というところだ。





