26.雑な風呂敷の畳み方だなぁ
「途中でコミカライズオリジナルのキャラが出てきたんですよ。女の子のライバルキャラで、他国の王女の姉妹」
「ふぅん。私、最初の3話くらいしか読んでないなぁ」
「あんなに胸部が豊かではなかった気がしますけども」
それはそうだろう。少女漫画であの胸部装甲はいただけない。
ただでさえ、漫画やアニメで原作にない「オリジナルキャラクター」が出て来ると論争が起こるというのに、あの装甲の厚さでは炎上不可避だ。
何らかの忖度があったに違いない。
こんなに炎上しても世の中からオリジナルキャラクターやオリジナル展開というものがなくならないのは何故なのだろう。
何か理由があるのだろうが、わざわざ炎上のリスクを冒してまでやらなければならないものなのだろうか。
よくあるのは「漫画にアニメが追い付いてしまったので、オリジナル展開を挟んで引き伸ばさざるを得なくなった」というパターンだろうが……いや、むしろその負のイメージが強いせいで、特に炎上要素がなくとも受け入れがたいものとして扱われてしまっているのかもしれないな。
「妹の方が王太子に惚れてるって設定でぐいぐい行ってたの、覚えてます」
「特徴は合致してるね」
妹の方とはまだ会っていないが、殿下から「グイグイ来て困っている(要約)」と聞いている。
おそらくその漫画版に出て来た姉妹と言うのが、ダイアナ殿下とその妹で間違いないだろう。
「漫画だと、王女様はどうなるの?」
「姉の方も、王太子に気がありそうな素振りをしてましたね。コミカライズは王太子ルート準拠だったので」
リリアの言葉を聞いて、頷く。
乙女ゲームが漫画やアニメになる場合、序盤はしばらく複数のキャラクターのルートを混ぜたような展開だが、中盤からは誰か1人のルートをメインに据え、他は添え物程度にするのが一般的だ。
ロイラバの場合、選ばれたのが王太子殿下だったということだろう。
何故多くのプレイヤーが望むと望まざるとにかかわらず、最も多くの数プレイした――正しくは『させられた』――だろうロベルトルートでないのかは……言わぬが花というやつかもしれない。
「ロベルトと違って、エドワードにはお邪魔キャラみたいなの、いなかったじゃないですか。梃子入れでそう言うキャラクターが欲しくなったんじゃないですか?」
ありそうな話だな、と思った。
ちなみにロベルトルートのお邪魔キャラとは、もちろん私ことエリザベス・バートンのことである。
そういう意味では、ゲームの展開に良いスパイスとして作用するモブキャラとして、もっと良い扱いをしてもらいたいぐらいだ。
「まぁエドワードはもちろんヒロインとくっつくので、王女姉妹はフラれるわけですが」
ふむ。
ダイアナ殿下の様子を思い出す。面識があるだけあって幾分親しげな様子だったが……そこにもやはり、「熱」のようなものはなかったように思われた。
「姉の方は仄かな恋ごころ、ってくらいの描写しかなくて。結局最後は従者か何かの手近な男と急にいい感じになって終わるんですよ」
「雑な風呂敷の畳み方だなぁ」
少年漫画でも少女漫画でもよくある展開だ。
最終回間際にやたらカップルが出来上がる。しかも、残り物同士のあり合わせ感が否めない場合も多い。
登場人物を全員カップルにしないと気が済まないのだろうか。
そんな狭い世界で生きなくてもいいのではないか。ほかに人間は山ほどいるはずだ。
別に恋愛などしなくても幸せな人間だっているし、無理にくっつけなくても良いように思う。
誰得なんだ? その展開。マッチングアプリじゃないんだぞ。
「ハピエン感出るからじゃないですか? やっぱり」
「ハピエン感の演出のためだけに雑にくっつけられる側は間違いなくハッピーじゃない気がする」
私は思考する。
王太子に仄かな恋心を抱くはずの王女様が、何故お兄様との結婚を望んだのか。
そのあたりの真意を聞き出すのが、明日の私のタスクになりそうだ。
何やら「いいね機能」が追加されたらしいので、気が向かれたら好きな話数にぽちっとしてくださるとうれしいです!
また別件ですが、短編を書きました。シリアス風味ホラー風味が大丈夫な方は下の方にリンクが貼ってありますのでぜひご覧ください。





