表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第5章 西の国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

286/598

22.ぜひ迸る地雷臭を感じ取っていただきたい

モブどれとは関係がないですが、ファンタジーっぽい短編を書きました。

ページの下の方にリンクを貼っていますので、興味がおありの方はご覧いただけると嬉しいです!




「私のことはどうぞ、エリックと」

「エリック?」

「親しい者は皆そう呼びますので」


 ご令嬢に評判の良い微笑を浮かべ、ダイアナ殿下に話しかける。


 これは馬車でリリアたちに話してあった作戦の一つだった。というより、リリアのための作戦である。

 何度練習させても彼女は私を「フレデリック」と呼べなかったのだ。

 1回は頑張れても一瞬で化けの皮が剥がれて、2回目には「エリ様」に戻ってしまう。


 意外とそういうことをそつなくこなすクリストファーはちゃんと「兄上」と呼ぶことが出来ていたし、正直「兄上」と「姉上」なら万が一間違えても聞き間違いで流せる範囲だ。

 だが「エリ様」はさすがに誤魔化せない。


 前は「バートン様」と呼んでいたんだからそれに戻せと言ったのだが、「今さらそれは逆になんか恥ずかしいんで」と拒否された。

 何の逆だ。


 ではいっそのこと、名前の方を寄せてしまおうということで思いついたのがこの作戦だ。

 外国人のあだ名というのは、名前とかすりもしていないことが往々にしてある。

 リチャードをディックとか、ウィリアムをビルとか呼んだりするくらいだ。


 日本人にはとても理解しがたい変貌を遂げているのだから、フレデリックがエリックだってもういいだろう。言ったもの勝ちだ。

 いやどう考えてもフレディーとかだとは思うのだが。


 さて。「エリ様」対策もしたところで、次の作戦に移行する。


「ダイアナ殿下。こちらはリリア。私の学友です」


 ひらりと身を翻し、後ろにいたリリアの腰を抱いて引き寄せた。

 バランスを崩したリリアが、私の胸に体重を預ける。

 彼女は一瞬驚きに目を見開いたが、すぐに頬を赤くして、潤んだ瞳で私を見上げている。


 いいぞ、完璧な「ただならぬ関係のご学友」の演技だ。

 ……問題は、それが演技ではない可能性がある点だけだ。


「すぐ人恋しくなってしまう質でして。最近はどこに行くにも彼女と一緒なのです」


 甘やかな手つきでリリアの髪を撫でる。やわらかく細い髪から、ふわりと花のような香りがした。

 同じ宿に泊まっている以上、同じシャンプーを使って洗髪しているはずなのだが……乙女ゲームの主人公様はそのあたりの出来が違うらしい。


 リリアの髪に口づけるような仕草を取りながら、王女様の様子を盗み見る。


 どうだ。初対面からいきなり連れて来た女を可愛がる様を見せつけて来る男。嫌だろう。

 ぜひ迸る地雷臭を感じ取っていただきたい。


「まぁ、そうなのですね! 仲が良いのは素敵なことですわ!」


 にっこりと王女様が微笑んだ。

 好意的な反応に拍子抜けする。

 少しくらいは笑みが引き攣っているかと思いきや……左右対称に口角の上がった、お手本のような笑顔だ。


 ちらりと我が国の王族の様子を窺うと、彼もお手本のような笑顔を浮かべている。

 ……が、その裏からじわじわと怒気が滲んでいるのが感じ取れた。

 私とリリアが接触しているといつもこうである。


 心配しなくても私はリリアを奪うつもりはないし――いや、以前は確かに奪うつもりで、それが必要以上に成功してしまったきらいはあるが――、何だったら熨斗を付けてお返ししたいと思っているくらいだ。

 ヤキモチを妬くくらいなら、もっとガンガン攻めたらよいのではないか。知らんけど。


 殿下のお綺麗な作り笑いに慣れてしまってだんだんと感じ取れるようになってきたのか、王女様の方が上手なのか、それとも本当にまったく何も感じていないのか。

 微妙なところだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍最新6巻はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生幼女(元師匠)と愛重めの弟子の契約婚ラブコメ↓
元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜

社畜リーマンの異世界転生ファンタジー↓
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
[良い点] ダイアナ殿下はおおらかで懐がでかいのか、政略結婚的に考えててそもそも情を求めてないのか、なかなか読めなくて面白いですね。 [気になる点] 日本人のあだ名も人によっては元の名前の原型がないの…
[良い点] 更新感謝
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ