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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第2部 第5章 西の国編

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4.これほどまでに友情に厚い方だとは

「殿下」


 馬車に戻る殿下を呼び止め、駆け寄った。


 馬車の入り口に控えた彼の護衛が、迷惑そうに僅かに眉をひそめる。

 先日殿下の呼び出しを断るのに少々手荒な真似をしたので、その恨みがこもっているのかもしれない。


「ありがとうございました」

「いや、私は……」

「貴方が我が国の王太子で、本当に良かった」

「え」


 跪いて、彼の手を取る。指先にそっと口付けを落とした。


 本当に、彼が王太子でなければハグどころか胴上げしているところだ。

 殿下の機転のおかげで事を荒立てず、西の国行きの許可を得ることが出来た。

 しかも私がお兄様に成りすますという都合のいいオマケつきで、だ。


 最悪の場合は実力行使も視野に入れてお父様を説得し、単身西の国に乗り込んで――場合によってはこちらも実力行使を含めて――交渉するつもりだったが、それよりもずいぶんと良い状況になったことは間違いない。


 恩を売っておいた甲斐があるというものだ。

 ……まぁ、彼は私への恩義で行動したわけでもなければ、私のためだというつもりもないだろうが。


 お兄様を西の国にやらないために私を利用してやった、ぐらいの認識だろう。

 私としても今回は、利用されてやってもいい、と思っていた。

 

 どういうつもりであれ、彼の行動が私にとって僥倖であったことは事実である。

 先日の卒業式の件も、水に流してやってもいい。


 何か言いたげな顔で口をぱくぱくしている殿下に、私はにこりと機嫌よく笑う。


 言われずとも、殿下の思惑は理解している。しかし少々、意外ではあった。

 「誰も特別扱いしませんよ」という顔をしている殿下すら動かす力を持っているとは、さすが人望の公爵はスケールが違う。


「まさか殿下がお兄様のために、ここまでしてくださるとは」

「え? いや、」

「もちろんお兄様はこの国にとって必要な人材でしょう。殿下の補佐としても有用であることは間違いありません。ですが、殿下がこれほどまでに友情に厚い方だとは、寡聞にして存じ上げませんでした。認識を改めなくてはなりませんね」

「…………」


 殿下は黙ってこちらを見ていた。

 じとりとどこか睨むような目つきになっているのが気になるが、照れ隠しとして受け取っておこう。


 笑顔をキープしたまま、私は続ける。


「今私と貴方様は、お兄様を西の国に渡さないという同じ目的を持つもの。言わば共犯者です。何かあればおっしゃってください。力になります」

「力に? きみが?」


 意外そうな声を出されてしまった。意外を通り越して、何か裏があるのではと疑っているような声音ですらある。

 人がせっかく親切で言っているというのに、失礼なことだ。


 嫌々お使いを請け負うことはあれど、私から進んで「力になる」などと申し出ることはほとんどなかったので、当然かもしれないが。


「……ちょうどよかった。なら、頼まれて欲しいのだけど」

「は。何なりと」


 わざと恭しく返事をすると、殿下はいつもの余裕ぶった王太子スマイルでもって、命じる。


「私に嫁いできたいと言っている向こうの第2王女、ついでにどうにかしてもらえないかな?」


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[良い点] やっぱりリジーはパワーで解決するつもりだったんですね。よくわからんけどエドワードよくやってくれた。危うくリジーが暴走機関車の如く隣国に攻め込むところだった。ありがとうエドワード。隣国に行っ…
[良い点] 更新感謝
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