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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
Bonus Stage 番外編

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1年目のダンスパーティー 前日譚(1)

活動報告にあった小話を引っ越しました。

本編で言うと第2章 学園編1年目の「26.1年目のダンスパーティー」の前日譚です。

その1はアイザック編です。

「ミケーレ」

「……何ですの、ギルフォード様」


 イザベラ・ミケーレ侯爵令嬢は、クラスメイトであるアイザック・ギルフォードに声をかけられ、眉間に皺を寄せた。


 彼の新興伯爵家の三男坊は、気難しく愛想が悪いことで有名だった。

 近頃はその雰囲気も多少和らいでいるが、彼から女子生徒に話しかけることなど滅多になく、苦手な相手であることに変わりはなかった。


「ドレスの流行を教えてほしい。出来れば、僕に似合いそうなものを」

「……はい?」


 思わず聞き返してしまった。


「バートンと踊る約束をしているんだ」

「まぁ!」


 彼の言葉に、思わず口元を手で覆う。

 クラスでも仲が良さそうな様子だったが、そのような仲にまでになっているとは知らなかったのだ。


 婚約者のいる麗しの男装令嬢と、怜悧な伯爵家三男の身分違いの恋。

 年頃のご令嬢の食指を動かすにはうってつけの展開だ。


「だからドレスが必要なんだ」

「えーと……?」

「バートンがドレスを着てくると思うか?」


 そう言われて、件の人物を思い浮かべる。

 何度想像してもドレス姿が浮かばず、彼女は首を横に振った。


「僕の予想では、騎士団の制服で現れると踏んでいる」

「騎士団の?」


 こちらは即座に思い浮かんだ。

 一般の騎士が着ている濃紺も瞳の色と合いそうだし、近衛騎士の臙脂もシックでたおやかな印象が良い。

 国境警備の騎士が身に付けるベージュも微笑みの印象をさらに柔らかくするだろう。


「そんなもの、お似合いになるに決まっているじゃありませんの……!」

「ああ。だから、その隣に並ぶのに相応しいドレスがほしいんだ」


 思わず赤面して身震いしたイザベラに、アイザックは深く頷いた。


「けれど、どうして私に……?」

「お前が一番流行に詳しくてセンスがいいと、バートンが褒めていたからだ」

「バートン様が?」


 麗しの男装令嬢の微笑みと、自分の名前を呼ぶ甘い声を思い出し、イザベラの頬がぽっと赤く染まった。


「そ、そういうことでしたら、手伝ってあげてもよろしくてよ!」

「ありがとう、恩に着る」

「エミリア様、キャサリン様!」

「はい!」


 イザベラの呼びかけに、近くで聞き耳を立てていた2人の令嬢が近づいてきた。


「エミリア様のお家は質のいい装飾品のお店を営んでおられますし、キャサリン様の2番目のお兄様は王都で一番の仕立て屋を経営していますの」

「わたくしたち、ずっと思っていましたのよ!」

「アイザック様がドレスを着たらとても素敵なのではないかって!」


 勢い込んで話す令嬢に囲まれ、アイザックはたじたじと後ずさる。


「え? は?」

「さ、行きますわよアイザック様!」



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