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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第4章 長い長いエピローグ編

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42.無理でも無茶でも何でもないさ

 ヨウの顔の横に突き刺した剣を抜く。

 気絶した彼を見下ろして、ふぅとため息をついた。さすが攻略対象、気絶しても白目を剥いたりしないらしい。まるで眠っているかのような美しい様相だ。

 両手で顔を覆っていたリリアが指の隙間からこちらを見て、おずおずと問いかける。


「……こ、殺さない、んですね……?」

「私にだって相手を選ぶ権利があるよ」


 軽口で応じて、剣を払って鞘に仕舞う。


「CER○Bらしいしね」


 ヨウの身体を担ぎ上げる。意識がないようなので、お米様抱っこでよかろう。

 そのままリリアに近寄って、彼女を小脇に抱えようとした。


「あ、あの。エリ様」

「何? 運び方に文句でも?」

「大アリです。お姫様抱っことは言いませんが、せめておんぶになりません?」


 運ばれる側が文句を言い出した。今はそんな問答をしている時間はないのだが。


「背負うのは家族だけと決めているんだ」

「どうしてですか?」


 食い下がられて、私はリリアの瞳から視線を逸らす。


「……密着するのが恥ずかしいからだよ」

「恥ずかしいの線引きがおかしくないですか!?」

「分かった。間を取って人形抱きで行こう。君がしっかり掴まっていれば落ちないだろう」

「絶対そっちの方が恥ずかしいと思うんですけど!?」


 黙殺して、リリアを腕に座らせるようにして持ち上げる。リリアが慌てて私の首にかじりついてきた。


 だんだんと部屋の温度が上がってきた。立っているだけでも汗が出そうだ。

 ぶち破って来た壁の向こうで、ごうと炎が巻き上がっているのが見えた。


「やれやれ。こんなに危険だと分かっていたら、来なかったよ」

「……でも、エリ様は来てくれました」


 リリアがぽつりと呟いた。私の首にぎゅっとしがみついて、目を伏せている。瞳に涙が滲んでいた。


「わたしはそれが嬉しいんです」

「余程私を善人にしたいらしい」

「だってエリ様は、わたしの王子様ですから」

「攻略対象冥利に尽きるね、どうも」


 涙目で微笑むリリアに、私は苦笑いで応じた。嬉し泣きでも何でも、泣かれるとやりづらい。

 さっさと脱出しようと、窓を蹴破る。古びた屋敷の周囲にも燃え広がっているようで、辺り一面火の海だ。


「え、エリ様……」


 不安げな様子でリリアが身を寄せてきた。


「こ、これは、まずく、ないですか? さすがのエリ様でも、無理ですよ……」

「まったく、何を心配しているやら」


 彼女の琥珀色の瞳を見つめる。いつもよりずいぶん近くに顔があるのが、少しおかしかった。

 ふっと笑った私を、リリアが揺れる瞳で見つめ返した。

 自分が攻略した相手のことを信じないなんて……困った主人公だ。


「どれだけの無理を押して、私が今日まで生きてきたと思っているの?」


 こつん、とリリアの額に自分の額をぶつける。リリアの頬がぽっと赤く染まった。

 両手が塞がっているので、仕方ない。


「この程度、無理でも無茶でも何でもないさ」


 私はぽんと壊れた窓枠を蹴って、跳躍した。崩れかけた屋敷の柱に着地する。

 そこから、ぽんぽんと炎に巻かれない小高い場所を選んで飛び移っていく。


「ほらね」


 腕の中で呆然としているリリアに、私は笑いかけた。


「私が命の危険を感じていたら、君のことを助けるわけがないだろう。一人で逃げているよ」

「ソウ、デスネ」


 何故かリリアが片言になってしまった。ヨウと何か喋っていたようだったので、移ってしまったのだろうか。

 リリアよりもずいぶんと重たいヨウを抱え直して、私は再度跳躍した。


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[良い点] 最後、いいことを、いいことを言っているような雰囲気出してるくせにぃ!!(笑) [気になる点] 成人並みの重量二つを抱えて飛び跳ねてくって、女の子以前に人間認定していいのかな…さすが、羆とス…
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