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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第4章 長い長いエピローグ編

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22.張り合わないでもらいたい

 耳ざとく私の言葉を聞きつけて、ヨウがまた私に近寄ってくる。


「エリザベス、どうしてワタシの気持ちを受け入れてくれないのデスか? ワタシのことが嫌い?」

「好きか嫌いかで言えば、まぁそうだな」

「どこが嫌なのデスか? ワタシ、直しマス!」

「ぐいぐい来るところ」

「グイグイ? 直せばワタシのこと、好きになってくれマスか?」

「そういうところだ、そういうところ!」


 超至近距離まで顔を近づけてくるヨウ。そのお綺麗な顔面を掴んで押し返し、適切な距離を確保する。

 これは暴力ではない。正当防衛だ。私にはパーソナルスペースというものを守る権利がある。


 最近は遠慮なく冷た――くあしらっているつもりなのだが、それでもなかなか諦める様子がないので困っていた。

 演技であると頭では理解しているのだが、こうぐいぐい来られると最近肉食系に進化してきた某聖女の所業を思い出し、どうしても身構えてしまう。


 この前など、ヨウの対処に困っているところを見られ、友の会のご令嬢から「たじたじになっているバートン様、可愛らしいですわ」とか言われてしまった。

 そのギャップは求めてない。

 本当に求めてない。


「だいたい、私より顔のいい男も女もいくらでもいるだろう。周りを見てみろ」

「ノー! ワタシはアナタがいいのデス!」


 ヨウはまた跪いて、私の手を取る。

 そして縋るような視線を向けてきた。

 彼の顔が、甘く、やさしく。愛おしいものに向けるような表情を形作る。


「最初は一目惚れでしタ。デスが、アナタと一緒にいるうちに、確信しまシタ。この愛は間違いなく、運命であると」


 あまりに恥ずかしげもなく、仰々しく芝居がかった様子で言われて絶句した。

 いや、実際芝居なのだろうが、それにしたってよくやる。

 砂を吐きそうだ。


「ワタシに案内役を紹介してくれるやさしさ、友達とふざけて笑う仕草。剣術に対する真摯な態度。そのどれもがアナタにしかないものデス。アナタのことを知るたび、ワタシはますますアナタのことが愛おしくなりマス」


 やさしい声音だ。

 囁くような、少し掠れた心地よい声だ。蕩けてしまいそうな声だ。

 うっかりすると、騙されてしまいそうなくらい。

 だが。


「罪な人デス、エリザベス。こんなにもワタシを夢中にさせて……どうかその心のひとかけらでも、ワタシに向けてくださったなら。ワタシは一生、アナタだけを見つめると誓うのに」


 その言葉はやはり、耳を滑っていく。

 一時しのぎの嘘を重ねてきた私には、非常に馴染みのあるものだったからだ。


 こちらを見つめる目の奥が笑っていない。

 黒々と鈍く輝くその目は、嘘吐きの目だ。


 彼の真意を探ろうと、彼の瞳を見据えて沈黙していると――


「ちぇ――――いっ!」


 リリアが手刀でヨウの手を振り払った。

 おお、聖女チョップだ。

 リリアは私に向き直ると、足音も荒く距離を詰めながら叫ぶように言う。


「わ、わた、わた、わたしのほうが、エリ様のこと好きなんですけど!?」

「え」

「ひとかけらどころかわたしはぜんぶ欲しいんですけど!? 身も心もぜんぶ欲しいんですけど!?」

「ちょっと」

「こんなに袖にされててもまだ全然好きなんですけど!? 何だったら日々ラブが募ってますけど!?」

「ねぇ、圧が強い」


 張り合わないでもらいたい。

 きゃんきゃん噛みつかんばかりのリリアの肩を掴んで、くるりと反転させてヨウの方を向かせる。

 彼女はふーふーと息を荒くして、ヨウを睨んでいた。彼女がやっても小動物じみていて可愛らしいだけなので、その威嚇にたいして効果はない気がする。


 そもそも何で私に詰め寄るんだ。最初からヨウに詰め寄って欲しい。


「リジー」

「先輩」


 両側から、声をかけられた。

 左右に首を巡らせると、なんとも真面目な顔の殿下と義弟と目が合った。

 殿下は私の肩に手を置き、クリストファーは私の腕を引いている。


 え? 何?

 これ、また私が怒られるのか? この騒ぎ、私のせいという扱いになるのか?

 それは理不尽すぎやしないだろうか。


 頼むからお兄様には言いつけないでくれと懇願すべきか思案して目を泳がせたところで、呆れ顔で突っ立っている担任教師と目が合った。


「おーい、いつまで騒いでるんだ。授業始まってるぞ」


 教師に背中を押されて、一同がそれぞれの教室へと向かう。

 その一番後ろを歩きながら、私はそっと気配を消した。

 一瞬担任教師がこちらに視線を向けた気がしたが、気のせいと断じたのかそのまま前を向いて歩いていった。


 何だかどっと疲れた。ほとぼりが冷めるまで、サボタージュと洒落込もう。


なな、なんと! レビューをいただきました!

ありがとうございます!

読んでくださる方、応援してくださる方、皆様に感謝感謝です。


総合評価も8500ポイントを超えました!

その感謝と、(作者はまだ仕事ですが)年末年始ということもあわせまして、明日からまた1日2回更新を行いたいと思います!


年内完結はたぶん無理そうですが、できたら1月初旬には……という気持ちで頑張って参りますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

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