57.芋けんぴでも食べるかもしれない
昨日告知し忘れましたが、総合7000ポイント突破のお礼に、今週は1日2回更新週間を実施します!
というわけで今週もどうぞよろしくお願いいたします!
「おいしい~」
ケーキを一口食べた瞬間瞳を輝かせ、その後幸せそうに頬を綻ばせるリリア。
可愛い女の子とおしゃれで可愛らしいケーキ、非常に絵になる。映えである。
やはりこうして無意識で、飾らない表情の方が可愛らしさが強調されて見える気がする。
常に寝ているか物を食べているかすれば、無理に主人公らしさを取り繕わなくても誰だって落ちそうなものだが……これがあれか。「黙っていれば可愛いのに」というやつか。
ご機嫌でケーキを口に運ぶリリアの顔を見て、私は驚愕する。なんと頬にクリームがついているのである。
もはや感動すら覚えた。まだ2口しか食べていないのに、そして食べ方も特に汚いとか下品ではなかったはずなのに、何をどうやったら頬にクリームをつけられるのだ。
手品かと疑いたくなるレベルである。
これが主人公力というものだろうか。
こういう場合の乙女ゲーム的な正解は何なのだろう。
恋仲ならこう、ちゅっとして取ってやるのが正解なのだろうが、友達以上恋人未満の関係性においてはそれはやりすぎの気がする。
しかも第三者がいる場面だ。
しかし、指で取るまでは良いとして……ご飯粒ならまだしも、生クリームはどうなのだろう。
舐めるべきか? ハンカチで拭っていいものか?
そもそも指を舐めるというのは行儀がいいとは言いがたい。
自分がやられたらと考えてみても、嬉しいか、それ? と首を捻るばかりである。
ご飯粒だったら食べるだろう。芋けんぴでも食べるかもしれない。
生クリームの正解を探して脳内の引き出しを開けまくったが、乙女ゲーム界隈でも半々というところだろうか。
指で掬ってリリアに舐めさせる? いや、それはさすがに、どうだろうか。
ハンカチで拭ってやる? 一番スマートではあるが、果たしてドキドキするだろうか。
そこまでコンマ2秒で考え、私は結局一番王道らしい行動を選択した。
「ふふ、ついてるよ」
身を乗り出して、指で彼女の頬のクリームを拭い、掬ったクリームを自分の口に運んだ。
リリアは「も、もう、バートン様! 教えて下さいよ~」とか拗ねたように頬を膨らませながらもどこか嬉しそうだったので、まぁ、正解と言わずとも不正解ではなかったのだろう。
いきなり制限時間付きの選択肢を突きつけられると、つい考えすぎてしまう。今後の課題だ。





