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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第3章 学園編 2年目

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54.この程度で挫けてなるものか

「た……バートン卿? どうかされましたか?」

「いや、大捕り物だったんだろう? 怪我人は出なかったのかなと思って」


 うっかり一時停止してしまい、ロベルトに気遣わしげに声を掛けられてしまった。

 何でもないようなフリをして、それらしいことを言っておく。


「は! それは問題ありません。街の方々にも、騎士団にも怪我人は出ておりません。……ああ、スリの一味は打撲程度の怪我はしたかもしれませんが」

「そうか、よかった。やはり騎士団は頼りになるね。憧れてしまうよ」

「ば、バートン様なら」

「隊長は立派な騎士です! 俺の知る、誰よりも、最高の!」


 リリアの言葉に被せるように、ロベルトが大きな声を出した。

 女性の言葉を遮るとは、紳士の風上にも置けない振る舞いである。

 あまりに勢いがよかったので、私だけでなくリリアも彼を見た。

 視線が集まったことでさすがに彼もまずいと思ったのか、ロベルトは声のトーンを一段下げ、慌てた様子で取り繕う。


「あ。ええと、だから……俺は、隊長は騎士になるべきお人だと」

「え――と……ありがとう、ロベルト。じゃあ、私とリリアはこれで」

「あ、お、俺も! お供します!」


 さらっと別れようとしたところで、空気の読めない奴が空気の読めないことを言い出した。

 何故気遣いが出来て空気が読めない。


 リリアから死角になる角度で彼を睨み、視線で「邪魔すんな」を訴えにかかる。


「……君、警邏の途中なんじゃなかったのか?」

「連行に付き添って戻ってきただけなので、この後は五月雨解散でよいと」

「……行くのは女の子が好きそうなお店だからなぁ。君が来ても楽しくないかもしれないよ」

「か弱い女性をエスコートするのも騎士の務めです! 教えてくれたのはたい、……バートン卿ではないですか!」


 胸を張るロベルト。確かにか弱い女性と一緒だが、お前より力強い私が一緒の時点で護衛もエスコートも必要ない。

 どう考えてもお邪魔虫である。


「国の第二王子に護衛をさせるというのは、どうかな」

「将来俺が騎士になれば普通のことです」

「君の練習に付き合えと」

「最近、訓練場に顔を出してくださらないので」


 捨てられた子犬のような目で見られた。何とも情けない顔である。

 確かに言われてみれば、リリアと会ったり殿下に付き合わされたりで何かと忙しく、訓練場にはあまり行っていないかもしれないが……そんな顔をしなくても良いだろう。


 私よりガタイが良いくせに、うるうるした目で見つめてくるのはやめていただきたい。

 リリアがいなかったら、肩を掴んでその顔をやめろと揺さぶっている。


「……わかったよ」


 結局私は折れた。


 あまり邪険にするのもリリアの手前印象が悪そうだし、仕方がない。

 邪魔が入るのは想定内だ。この程度で挫けてなるものか。


「店の前までだぞ」

「はい!」


 私の言葉に、ロベルトは嬉しそうに返事をした。

アンケートに回答いただいた方、ありがとうございます!

お話の結末は決まっているので、アンケートの結果でそれが変わるわけではないのですが、番外編とかIF的な小話の参考に……と思って作ってみた次第です。

1週間くらいは置いておくので、まだの方は活動報告からお気軽にどうぞ。

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