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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第3章 学園編 2年目

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51.沈黙は金、雄弁は銀

活動報告に、ロベルト視点の小話を書きました。

例によって本編を読む上では必要ない単なるオマケです。

恋愛要素強めですが、それでもいいよという方は、ぜひ覗いてみて下さい。


ロベルト関連の没ネタも置いてあるので、気になる方はそちらもどうぞ。


(R3.6.8追記)活動報告にあった小話は本編中の「閑話」、または「番外編 BonusStage」に引越し済みです。


「君に聞きたいことがあったんだ。どこかの誰かさんに預けた大切な物を、あろうことか私の愚弟が持っていたんだけど」

「…………」


 私は黙秘権を行使した。

 沈黙は金、雄弁は銀である。


 殿下に運動着を返しに行ってみれば、飛んできたのがこの質問――いや、詰問であった。

 殿下の前にある机には、ハンカチに包まれた殿下の御髪があった。


 私は得心する。

 なるほど。噴水の一件は、この仕返しだったのか。


「私の預かり物を包んでいたこのハンカチ……どこかで見た家紋が刺繍されているんだ。さぁ、誰の家だったかな?」

「…………私の家の紋ですね」


 しっかり物証が残っていた。まぁ預けられたのが私である以上犯人は私なのだが。

 観念して答えると、殿下はまたにっこりと笑みを深くして問いかけて来る。


「で? どうしてこれを、我が愚弟が持っていたのかな?」

「……殿下が西の国に行かれて、弟君がたいそう落ち込んでそれはそれは酷い有様でしたので。殿下の覚悟を知って少しでも、託されたものの重さと責任に向き合っていただきたく……」

「咄嗟に考えたにしては出来の良い言い訳だ」

「お褒めに与り光栄です」

「褒めていないよ」

「分かっております」


 もう開き直り始めた私を前に、殿下はこれ見よがしに大きなため息をつく。


「分かってない」

「は?」

「きみは本当に、分かってない。それともわざとやっているの?」

「……時と場合によりますが」


 正直に答えておいた。分かったフリをしていて分かっていない時などザラだし、都合が悪い時にはわざと気づかないフリをしている時もある。

 後者は主にリリア関連だが。


「もういい」


 また殿下が大きなため息をつく。

 わざわざ「私に」と預けたものを他の者に渡していたのだから当然かもしれない。又貸しはよくないというのは幼稚園でも習うことだ。

 手元から離れたことで解放されその後思い出しもしなかったのだが、失策であった。

 殿下が帰ってきたときすぐ回収して、殿下に突き返しておくべきだった。


 過ぎたことを悔やんでも仕方あるまい。また噴水に引っ張り込まれてもかなわないので、ご機嫌取りを開始する。


「ああ、そういえば殿下。先日の剣術大会では素晴らしい腕前でしたね。お強くなられた」

「話題の変え方が下手なところ、兄妹で似ているね」


 何となくお兄様と仲が良いマウントを取られた気がする。

 どう考えても私の方がお兄様と仲が良いので、意味のないマウントはやめていただきたいところだ。

 あとそんなところが似ていても嬉しくない。


「とても良い試合でした。以前試合を拝見した時もテクニックが素晴らしかったですが、今回は押し引きのタイミングが良かったですね。スタミナ面も改善されていたように思います」

「……きみに褒められると妙な気分だ」

「あとはもう少し筋肉をつければ」

「汗臭いのは苦手なんだ」


 そういえば、前もそんなことを言っていたかもしれない。あれは負け惜しみではなかったのか。


「ですが、学園の授業以上に鍛錬していないとこれほどの成長はないでしょう。まだ訓練場に通い続けていらっしゃるんですか?」

「いや、訓練場は学園に入るときに辞めてしまった」


 殿下の言葉に、私は首を捻る。確かにそういう候補生は多いと聞く。

 ここ数年の我が訓練場は、異例の人数が学園入学後も通い続けているらしいが。


 殿下はちらりと私の表情を窺うと、何となく妙に勿体ぶった様子で話し始める。


「……実は、西の国にいる間、向こうの第二王女に付き纏われていたんだ」

「なんと」


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