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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第3章 学園編 2年目

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50.怒られるようなことをした覚えはない

活動報告に、ロベルト視点の小話を書きました。

例によって本編を読む上では必要ない単なるオマケです。……が、今回は読んでおくと、ちょっと本編の面白さが増すかもしれないお話です。

恋愛要素強めですが、それでもいいよという方は、ぜひ覗いてみて下さい。


あと、ロベルト関連の没ネタも置いてあるので、気になる方はそちらもどうぞ。


(R3.6.8追記)活動報告にあった小話は本編中の「閑話」、または「番外編 BonusStage」に引越し済みです。


「……殿下?」


 思わず呼びかけると、殿下はすっかり濡れて額に張り付いている髪をかき上げて……噴水に落ちているというのに、いつもどおり余裕たっぷりに微笑んだ。


 療養から帰ってきてからこっち、殿下からは儚げな雰囲気が失われたと思っていたが、透明感のある白い肌に水滴を纏わせていると妙な色気がある。


「やぁ、偶然だね」

「やぁではなく」

「うっかり足を滑らせてしまったよ」

「うっかり?」

「何か?」


 あまりに似合わない副詞だったので、思わず聞き返してしまった。

 殿下が貼り付けた笑顔で私に圧力を掛ける。


「イエ」

「それで? 私の騎士は主をいつまで噴水に浸しておくつもり?」

「貴方を主に定めた覚えはありませんが」

「王族を主にしない騎士はいないだろう?」


 自分で立ち上がるつもりのなさそうな殿下に、やれやれとため息をついて歩み寄る。

 噴水のへりに足をかけて、殿下に手を差し伸べた。


 さすが貴族子息だけが通う学園だけあって、噴水の水も大変綺麗だ。

 びしょ濡れの殿下の手を掴んだ、その瞬間。


「あ」

「え」


 頭上から大量の水が降り注いだ。

 ここの噴水は時限性で、普段は大した量の水が出ているわけではないのだが、特定の時間になるとショーのように大量の水が噴き出すのだ。

 結果として、私までずぶ濡れである。


「濡れちゃったね」


 すっかり濡れ鼠になった私に、殿下が小首を傾げて微笑んだ。

 表向きは良い笑顔だが、その目の奥が笑っていなかった。

 

 何が「濡れちゃったね」だ。

 これは絶対に、確信犯である。

 はて。殿下に怒られるようなことをした覚えはないのだが。

 

 結局、殿下と私という誰も得をしない組み合わせでびしょ濡れになったのだが、リリアに「髪下ろしたバートン様、SSレア……」と拝まれたのでもう気にしないことにした。

 いつかは髪を下ろした姿もどこかで見せたいと思っていたし良しとしよう。


 とはいえ、濡れたままで授業を受けるわけにも行かない。

 クリストファーに剣術の授業用の運動着でも借りに行こうとリリアと別れたのだが、何故か殿下がついてきた。


「リジー。きみ、着替えを持っていないだろう? 私の運動着を貸してあげるよ」

「いや、殿下も濡れていますよね? 私は義弟にでも借りますので」

「予備があるから問題ないよ」


 殿下がぱちんと指を鳴らすと、近衛騎士が走ってきて私にタオルと体操着を一式手渡した。

 いつも私を呼びに来る彼とは違う近衛騎士だ。

 予備があるとは、準備が良い。王族ともなるとそういうものなのだろうか?


 というか、私は上着とシャツ――贅沢を言うなら靴下も――を替えれば十分だろうが、殿下は確実にパンツまで濡れているはずだ。

 もしかして、下着も予備があるのだろうか。


 この世界の下着事情、女性物は乙女ゲームの世界だけあって現代日本と割合近かったのだが、男性物はどうなのだろう。

 さすがに褌と言うことはないはずだが……高貴なボクサーパンツとかあまり想像がつかない。

 一瞬、履いていない可能性が脳裏を過ぎったが、無理矢理過ぎらなかったことにした。


 まぁ、貸してくれるというのなら断る理由もないだろう。


「はぁ。では、遠慮なく」

「ああ。週末に執務室に返しに来るように」

「……」


 何だろう。これは、うまく嵌められたというか。呼び出される口実を作ってしまった気がする。

 してやられたのが悔しかったので、渡されたタオルを殿下に被せてわしゃわしゃと拭いてやった。


「殿下の方がびしょ濡れですよ」

「私は後で自分で……」

「お風邪を召されます」

「こら、乱暴にするな。髪が絡まる」


 銀糸の髪をぼさぼさにしたところで満足した。恨みがましそうに見上げられたので、ふふんと勝ち誇ったように鼻で笑っておく。


「では、ありがたくお借りします」


 結果として何も変わっていないのだが、こうして捨て台詞を吐いて余裕たっぷりの様子を装うと、それだけで変わるものである。私の気分が。


 たとえその後教室に戻ったとき、「何故王太子殿下の運動着を?」と口々に聞かれまくって辟易したとしても、だ。

 普段学園指定の運動着を着ることがない私は、名前が刺繍されているなどと知らなかったのである。


なんと! レビューを書いていただきました!

この場を借りてお礼申し上げます、ありがとうございます!

文字数制限がある中でたくさんの愛を詰め込んでいただいて、とってもとっても嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王太子殿下の所業の数々を見て、思わず「正妻にしたい…ッ」と呟いてしまったんですが心からの叫びです。殿下…リジーの正妻になって! 今のところ、唯一エリザベスの手綱を引いてくれそうな気がするし…
[一言] 王太子に負けないでバートン卿…!という気持ちになりました。 外堀埋めたと思いきや軽々と抜け出していってほしいぞバートン卿。がんばってくれバートン卿! (超個人的には攻略対象達より近衛騎士さん…
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