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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第3章 学園編 2年目

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33.懺悔室 その2

「それは恋ですね」


 リリアが声を発した。

 慌てて目を向けると、アッと小さく漏らして、口を覆う。どうやら思わず言ってしまったらしい。よくそこで口を挟めたな。

 この主人公ヒロイン、時々私でも予想できない豪胆さを見せるのでびっくりしてしまう。


 いや、言ってしまったものは仕方ない。どうにかリカバリしよう。

 壁に貼ってある紙の決まり文句を指さし、リリアに視線を送る。

 相談しに来た信者の方には申し訳ないが、さっさと最後のお決まりの言葉を言ってお帰りいただこう。


 彼女も私の意図を読み取ったらしく、こちらを見てうんうんと頷いた。


「恋? ……これが、恋……なのか……?」


 呆然としたような呟きが、壁の向こうから聞こえてくる。

 呟きには反応せず、リリアはごほんごほんと咳払いをした後で、カンペどおりの言葉を告げた。


「神はあなたを赦すでしょう。共に祈りましょう。礼拝堂へどうぞ」

「……失礼。私も、神に打ち明けたい罪があるんだ。このまま聞いていただいても良いだろうか」

「え?」


 壁の向こうから、先ほどとは違う男の声がする。おそらく一緒に入った兄の方だ。


 リリアが困った様子で私に視線を送ってきた。

 とりあえず、手で丸を作ってリリアに見せる。

 ここが教会であり懺悔室である以上、迷える信者に「ダメです」とは言わないはずだ。いや、知らんけど。


 リリアは私を見て頷くと、真面目くさった声で言う。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 リリアの許可を得て、2人目の男が話し始めた。


「神よ、どうかお許しください。私は……弟の婚約者を愛してしまいました」

「え」


 壁の向こうで聞こえた驚愕の声と、リリアの小さな声が重なった。

 いや、これはリリアが悪いとは言い難い。むしろ私はよく堪えた。

 

 しかも壁の向こうのもう一人の男も初耳だったらしい。急に話がドロドロしてきた。

 こんなところで修羅場はやめていただきたい。

 壁の紙にはさすがに修羅場の対応方法までは載っていなかった。

 

 2人目の男は、驚きの声を無視して懺悔を続ける。



 ◇ ◇ ◇



 最初は弟の婚約者であると、距離感を弁えて接していました。


 当時の私は今にして思えば、捻くれた子供でした。

 勝手に自分の将来を悲観して、世の中にはつまらないことばかりだと、何か悟ったような気になっていました。

 しかし彼女は私の悩みを取るに足らないものだと笑い飛ばし、私を広い世界へ連れ出してくれたのです。


 彼女が私に生きる意味を与えてくれました。

 世界がこんなにも美しく、明るく、尊いものだと、私は知ることが出来ました。

 そんな彼女に私が惹かれるまでに、時間はかかりませんでした。


 それでも、自分の気持ちに蓋をして過ごしました。これは恋などではないと自分に言い聞かせて過ごしました。

 ですが、諦められなかった。日に日に彼女の存在が自分の中で大きくなっていきました。

 そんな時、彼女が弟との婚約の解消を望んでいることを知ったのです。


 神よ、お許しください。私は邪な気持ちでもって、弟と彼女との婚約解消を父に進言しました。

 本人の望みとはいえ、私欲のために、私もそれに賛同しました。


 一時的に彼女と離れることになり、戻って来られるかも分からない旅に出ることになりましたが……それでも、いえ、会えないからこそ、より彼女への気持ちは募りました。

 そして戻って来たときに、彼女と弟が婚約を解消したことを知りました。天啓だと思いました。


 もう自分の気持ちに蓋をする必要はなくなりました。

 私と彼女の間を阻むものは何もありません。……仮にあったとしても、乗り越えてでも振り向かせると決めました。


 今日私は宣言します。これからは彼女の心を射止めるために、全力を尽くすと……神に誓います。


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― 新着の感想 ―
懺悔じゃなくて草wwww 弟もびっくりだよwwww
[一言] 何この展開www 先生天才ですね!! 面白すぎます!!
[良い点] やぁ、こじれにこじれて…… どーすんのサ…… 岡目してる身としては、もう哂うしかねーですけどね げらげらげら
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