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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第1章 幼少期編

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11.騎士、いいのでは? モテるのでは?

 謀らずしてライバル攻略対象の義姉になってしまった。

 しばらくどうしようか考えあぐねていたのだが、お兄様がクリストファーにめろめろになってしまったので、考えるのをやめた。


 確かに愛らしい。庇護欲をそそる見た目をしている。

 それは認めよう。決して負け惜しみではない。


 ゲームのクリストファーは、いたずらっこ系後輩キャラだった。

 主人公にいろいろないたずらを仕掛けてきて、困らせる。けれど可愛くて人懐っこいので、どこか憎めない。


 彼のルートに入ると、彼がいたずらをするようになった理由が明かされる。

 実の親に捨てられ、遠い親戚に引き取られたものの、その家に馴染めずに孤独を感じていた、というものだ。

 その遠い親戚というのが、我が家だったということである。


 お父様とお母様は、あえて彼をそっとしておいているようだった。

 無理もない。まだ幼い身で親に捨てられたのだ。急に新しい親に馴染めるはずがない。


 だがお兄様は、妹の私同様に……下手をすると私以上に、クリストファーを可愛がった。

 部屋に引きこもりがちの彼を連れ出して、庭や書庫を案内した。

 剣術の稽古にも連れてきた。おいしいお菓子を買ってきては、分け与えた。


 クリストファーも戸惑ってはいたが、本気で嫌がっている様子はなかった。

 お兄様はもっと仲良くなりたいとぼやいているが、時間の問題だろう。


 ゲームの彼が話す事情との矛盾に、私は首を捻る。

 今はお互いまだ戸惑いが大きいが、このままいけばいずれ、仲の良い家族になれるだろう。


 何といっても、お父様は人望の公爵、お兄様は次期人望の公爵だ。

 両親は嫌々子どもを引き取ったわけでもないだろうし、彼らが育んだ子どもがまっとうに育たないわけがないのである。


「一本!」

「あ」


 ばしん、と竹刀が額を打った。


「油断ですよ、エリザベス様」


 教官に言われて、私は苦笑いする。おっしゃるとおりである。


「すみません。ちょっと考え事を」

「試合中に他所事ですか? 感心しませんね」

「そうですね。これでは勝てるものも勝てない」

「いえ、それもありますが。騎士道精神に反するということですよ」

「騎士道」


 そう言われても、ピンとこない。私の前世には騎士はいなかったし、今世のエリザベスは騎士に守られる側であっても、騎士を目指すようなご令嬢ではなかったからだ。


「勝負は常に真剣に。それが相手への礼儀です。礼儀を重んじることも、民衆の模範となる騎士の務めです」


 何か琴線に触れてしまったらしく、教官殿が朗々と語りだす。

 しかも礼儀と来た。一番苦手なタイプの説教だ。

 礼儀作法の基礎は身体で覚えているので問題ないが、新しく覚える分については努力が必要だ。

 勉強ももともとの知識だけでは追いつかなくなってきて、最近は覚えることが多い。


「真剣勝負で常に武を競い、剣技を磨く。強くなることも、勝つこともまた、騎士道には違いありません。しかし、得た力を誤ったことに使ってはならない。力を正しく使うために、騎士道は欠かすことが出来ないものです。強きを挫き、弱きを助く。接する相手が誰であれ、敬意を持って接する。それが騎士道というものです」

「ふぅん」

「リジー」


 明らかに興味のなさそうな私の返事に、お兄様から注意が飛んできた。

 慌ててお兄様に話を振って、誤魔化しを図る。


「お兄様は、騎士道をご存知でしたか?」

「それはそうだよ。貴族に必要なことにも繋がるからね」


 持つ者の義務、というやつだろうか。

 それは私にも分かる。エリザベス・バートンの身体が知っているからだ。

 人望の公爵の娘でお兄様の妹なだけあって、エリザベス・バートンという少女は非常に優秀なご令嬢だったらしい。

 優秀なまま育った暁に、婚約者に捨てられるのだから浮かばれないが。


「それに、男の子は誰だって、騎士に憧れるものさ」

「そういうものですか?」

「そういうものなの。それに、女の子だって憧れるんじゃないかな? ほら、リジーがよく読んでいる物語にも出てくるだろう?」


 お兄様の指摘に、確かにと頷く。

 おとぎ話でも、恋愛小説でも、王子様の次くらいの頻度で「騎士様」は登場していた。

 身分の高い騎士が平民の娘と恋に落ちたり、身分の低い騎士と恋仲になったお姫様など、どちらかというと最後には結ばれない話が多かった気もするが。

 

 男の子の憧れというのも、野球選手や警察官を目指すみたいな感覚だと思えば、理解できる。

 近衛騎士は身分の高い貴族の中でも一握りしかなれないエリート集団と聞くし、平民の出でも武功を立てれば騎士爵をもらうことも出来る。

 身分を問わない憧れの職業なのだろう。


 ふむ。

 騎士、いいのでは? モテるのでは?


 幸い、剣術は得意だ。どちらかというと組み手の方が好みだったが、これからはもっと剣の方に力を入れることにしよう。


「教官。もう一戦お願いします」

「え? しかし、エリザベス様」

「騎士道、たいへん興味深いお話でした。次は騎士道精神に則って真剣に挑みます」


 私が笑いかけると、教官の頬がわずかに引き攣った気がした。

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― 新着の感想 ―
騎士道からかけ離れた不純な動機で草
動機が不純すぎる… あとこの世界には竹刀、竹が存在するのか でも竹刀だって直接体を打ったら打ち身や痣くらいにはなるぞ
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