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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
第1部 第3章 学園編 2年目

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2.デフォルト名「リリア・ダグラス」

 新入生の集合場所へ向かうクリストファーと馬車の前で別れ、私は学内を歩いていく。

 すれ違うご令嬢からの「ごきげんよう」のシャワーに、笑顔で手を振りながら歩を進めていると、だんだんと人影がまばらになってきた。


 目的地である中庭に到着する。そこには、誰もいなかった。


 私には、主人公がここに現れるという確信があった。

 本来、この中庭で主人公――デフォルト名「リリア・ダグラス」と出会うのは、王太子殿下である。

 迷子になって中庭に迷いこんだ主人公が王太子殿下と出会う、通称出会いイベントだ。


 慌てた様子で「あの、わたし、猫を追いかけていたら、迷子になってしまって」と言う主人公に、クス、と笑った殿下は「きみ、面白いね」とか何とか言って、彼女を講堂へ案内する。


 面白いのハードルが低すぎないか? 箸が転んでもおかしいのか?

 あと優美な美形キャラの「クス……」って笑うあれ、何なのだろう。

 一応私も練習したが、どうにも気恥ずかしくて咄嗟に出来る気がしない。


 その後、講堂で在校生挨拶をする殿下を見て「せ、生徒会長!? それに、エドワードって、王太子殿下じゃない!」とびっくりする、というところまでがこのイベントだ。


 今、殿下はこの国にはいない。

 私が殿下に成り代わり、そのイベントを横取りするのは、赤子の手を捻るより簡単なことだ。ただ、この中庭で待っていればよいのだから。


 本来このイベントは、ロベルトの出会いイベントと対になっている。

 入学式の会場に向かう主人公のところに、子猫が現れる。

 「子猫を追いかける」を選ぶと王太子殿下のイベント、「子猫を呼んでみる」を選ぶとロベルトのイベントに分岐するのだ。


 ちなみに入学式後には、同じようにアイザックとクリストファーとの出会いイベントが控えている。

 ここで出会っておくと好感度の初期値が上がり、かつ、初日の自由行動の画面で出会ったキャラはマップに表示されるようになる。

 好感度管理の厳しい殿下を攻略したいのならば、外せないイベントだ。

 ……まぁ、この世界の主人公がそんなことを知る由もないのだが。


 王太子殿下と対になるはずのロベルトは、現在講堂の舞台裏で在校生挨拶の文面を頭にねじ込まれているところである。

 生徒会長が挨拶をするのが慣習なので、副会長が代役をするのが通常であるが……殿下が不在の今、身分の一番高い生徒はロベルトだ。

 さらに、昨年度末の試験の首席もロベルトだった。


 そういった忖度と、あと攻略キャラを差し置いてモブが代表の挨拶をするわけないだろうという乙女ゲームの世界機構的なものが働いた結果、彼が挨拶の大役を仰せつかったのだ。


 もともと挨拶をする予定だった殿下は直前に中庭を散歩する余裕もあったが、ロベルトにはそんなものはない。

 すっかり元気ながっかり第二王子に戻った彼が、今頃教員と生徒会役員に詰められてヒィヒィ言っているだろうことは想像に難くなかった。


 そう。王太子殿下が西の国に旅立ったおかげで、私は彼の出会いイベントを横取りできたばかりか、ロベルトが彼の代理になったことにより対の選択肢さえ消滅したのである。

 主人公はこの中庭に来て、私との出会いイベントをこなすしかない。


 ありがとう王太子殿下。元気になって帰って来いよ。……もうしばらくそっちにいた後で。


 西の空――まぁどっちが西か正直よく分かっていないのだが――に感謝の念を飛ばしていると、がさりと植木が揺れる音がした。

 植木の隙間から、子猫が飛び出してくる。

 私の前まで来ると、子猫は急ブレーキののちUターンして逃げていった。相変わらず、動物には嫌われている。


 子猫の来たほうへ視線を向ける。

 そこには、制服を着た少女が立っていた。


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