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異世界料理アカデミー ~掃除人の俺、謎スキル「異次元デパ地下」で料理革命~  作者: 武野あんず


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第08話 負けたほうは異世界的罰ゲーム!

俺はさっき()でたエビを持ち、シャリの上に乗せた!


観客がドヨッとざわめく。


「あいつ、何を握っているんだ?」

「み、見たことない動き! まるで流れるような指の動きだ」

()いた米という食材に、茹でた魚介類を合体? 常軌(じょうき)()っしてるぜ」


シャリとエビを握り、一つにまとめたら台形になるように形を整える。


ど、どうだ!


これがエビの寿司の完成形だ!


「き、綺麗(きれい)――こ、これは芸術よ!」


アイリーンが思わず声を上げた。


俺握った寿司の形は、「(おうぎ)」という形に似ているらしい。


ふう、これで寿司が一個、完成した!


「あ、あんなくだらん料理、認めるわけにはいかんぞ! 断じて!」


ボルダー教頭は苦虫を()(つぶ)したような顔で、審査員席を両手で叩きつけた。


すると……!


『さて諸君! ……この料理勝負が、ただの料理勝負ではつまらんだろう?』


ダニエル・グローバッハ校長が魔導(まどう)拡声器を使い、雑音を混じった声を反響させた。


ま、またあの校長かよ?


『私は審査には参加しない。だが、負けた者には罰ゲームを与える! そのほうが良い『スパイス』となるだろうが!』


な、なんだとっ?


観客が「おいおい……罰ゲームって……」とささやき合っている。


「こ、校長! 罰ゲームなど、何を言っとるんです! そんな勝手な!」


ラーパスの父親であるボルダー教頭があわてた。


しかし校長はニヤリと悪く笑って目を細めた。


『負けた者は地下にいるワシのペット、巨大ドラゴンの部屋に落とされる!』


は?


『そして、地下でドラゴンの食事を1週間作ってもらおうか!』


お、おい、死ぬだろ!


『極限の心理状態で料理を作ってもらおう!』


「あ……あのクソジジイめっ! 相変わらず勝手なこと言いやがる」


ラーパスはフライパンをガツガツと冷蔵庫に叩きつけた。


あの校長、敵なのか味方なのか――?


だが、早く調理しないと制限時間に間に合わない!


「つ、次はこいつだ!」


俺は魚の赤い切り身――「マグロの中トロ」とやらのパックを取り出し、スライスし始めた。


こ、こんな(あぶら)ののった魚の切り身は見たことないぞ。


す、すげぇ食材だ!


「ちょ、ちょっと待って」


すると――。


「まさかこの魚の切り身を、生で食べさせるの?」


アイリーンが驚いた顔で俺を制した。


「うん? いや、それは……」

「ランゼルフ王国国民に、生で魚を食べる習慣はないわ。私だって食べるのは無理よ」

「アイリーン、見てな! それも全部解決できるんだ!」


俺はマグロの中トロを先程のエビのように、シャリとともに握った。


そして――。


「これを見ろ!」


俺は「異世界デパ地下」から受け取った「魔導バーナー」を取り出した。


魔導バーナーの火で、マグロの中トロを上から(あぶ)る!


ジュウウウッ……ッ!


「えええっ? 肉じゃないのに、こんなに香ばしい匂いが!」


アイリーンが魔導バーナーから放出される火を見て、声を上げる。


マグロの表面の(あぶら)(はじ)け、香ばしい匂いが立ち昇った。


「でも、そうか! これなら魚の身が、牛肉ステーキのレアの状態になるわ!」


観客がまたもやざわめいた。


「ま、魔導バーナーかよ? あれ、鍛冶屋(かじや)が使う道具じゃねえのか?」

「魚と米を一緒に食べるって……。頭がおかしくなりそうだぜ」

「ラーパスに敵うわけねえだろ! リクトは勝負を捨ててるだけだ!」


『――あと5分で終了です!』


魔導拡声器で制限時間の告知がされた。


「ガハハハ! まーだ出来てねえのかよ?」


ラーパスは俺の厨房のほうに向かって声を上げた。


「俺は魚介類のミルクスープ、サラダを作り上げ、高級なパンも()えた! お前は?」


ラーパスは勝ち誇ったような顔で、俺のほうを見やった。


「その奇妙な『寿司』って(かたまり)が……一人前四つずつ? 何だよ、軽食か? そんな量で食事になるかよ!」


確かに俺が作ったのは現在、一人前がエビの寿司二(かん)、炙り中トロ寿司二貫だけ……。


寿司はもう二貫程度、必要だ!


だが、俺にはとっておきがあった。


「秘策があるんだよ、ラーパス。俺だけの特別な寿司がもう二貫あるんだぜ!」

「な、何だと?」


ラーパスは顔をひきつらせ、(ほお)をピクピク痙攣(けいれん)させた。


そして――。


『これにて試合終了! さあ、審査に移りましょう!』


調理時間の終わりが告げられた。


ラーパスとロブソンは胸を張り、審査員席のボルダー教頭、ピエール、グレゴリー夫人の前に料理を配膳(はいぜん)した。


「さあどうぞ、俺の魚介類のミルクスープ! 牛乳と魚のうまみ、味のタペストリーをお楽しみください!」


ラーパスが演説する。


すると――おや?


「ちょっと一言よろしいですか?」


グレゴリー夫人がにこやかに言った。


そして急に虎を狩るような顔つきになった!


「ラーパスは減点! 知識不足、伝統を重んじていない――よって、二点減点です!」

「な、何いいいいっ!」


ラーパスは顔を真っ青にして、冷蔵庫に背中をもたれかけた。


「こ、この(ばば)ぁ……い、いや、グレゴリー夫人! どういうつもりだ!」


俺もアイリーンと顔を見合わせたし、観客も呆然としていた。


料理を味わいもせず二点減点――、一体、何が起こったんだ?


もしかしたら、これは本当に勝利が近づいてきたのかもしれないぜ!

【作者・武野あんず からのお知らせ】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

もし少しでも「面白かったよ!」「この先が気になるな~」と感じていただけたら、☆や「ブックマークに追加」で応援していただけると、とても嬉しいです。それが作者の元気の源になります(笑)

次回もぜひお楽しみに♪

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