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異世界料理アカデミー ~掃除人の俺、謎スキル「異次元デパ地下」で料理革命~  作者: 武野あんず


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第17話 洞窟での試験は続く!

ここはグレゴリー料理学校地下の大空洞――!


目の前で大いびきをかいて寝ている巨大な魔物――トロルのゴンボスが審査員……らしい。


「よ、よし。次はマイタケというキノコの下ごしらえだが――」


俺はマイタケを厨房(ちゅうぼう)横の魔導(まどう)冷蔵庫から取り出した。


ふう、洞窟の中でも一応、魔導冷蔵庫は動いているようだな。


ん? ――な、何なんだ、このキノコは?


「リ、リクト! これ、キノコなのか? 野菜なのか? どっちなんだ?」


レイチェルもマイタケを見て驚いている。


まるでカリフラワー、博物館にあるサンゴのような形だぞ?


木や土が入り混じった森の香りがする――!


「た、食べられるのか? こんなキノコ……」


俺がそうつぶやいたそのとき――。


(おう、リクト! 俺の記憶をダウンロードしろ)


ジョ、ジョウイチの声が頭の中に響いた!


「ダ、ダウンロードって何だ?」


その瞬間、俺の頭の中に「天ぷら」の知識がなだれ込んできた!


「リクト!」


――また後ろから、嫌味な声が響いた。


「おい、何なんだよ、そのカリフラワーは? 課題は揚げ物料理だぞ」


またしてもフェリクスが茶化してきた。


「わけのわからん下賤(げせん)な食材だな!」

「お前っ……! 私たちの食材にまでケチをつける気か?」


レイチェルがフェリクスに殴りかかりそうだったので、俺は素早くレイチェルの前に立った。


「リクト、僕とガーランドの高貴なる料理を知りたいか?」

「いや、別に知りたくは……」

「僕たちが作るのは『鶏の揚げパイ』だ!」


聞いてないのに、フェリクスは勝手に胸を張って言った。


「これこそが貴族の食べ物だ! 貴様のようなゲテモノを簡単に揚げたものではないっ!」

「なるほど。だがフェリクス! これを見て、それが言えるか?」


俺は冷蔵庫からとあるものを取り出した。


灰色と緑色の小さな岩のような物体――!


それは「アワビ」という貝だった。


「なっ!」


フェリクスどころかレイチェルまで目を丸くしている。


「そ、その気色悪い生物はなんだ? 魔界の岩型の魔物か?」

「これが、俺たちの秘密兵器だ!」


俺はアワビを掲げて叫んだ――!


アワビの天ぷら――この世界の者たちが初めて味わう本物の高貴な味のはずだ!


「ウヒヒヒ」


お、おや?


そのとき、洞窟の奥から甲高い声がした。


よく見ると、小人のようなトロルが三匹、ぞろぞろと穴の奥から出てきた!


「料理を食わせてもらえるんだって? パパに聞いたぜ」


小さいトロルは、トロルのゴンボスの息子たちだった!


手には小さい木の棍棒(こんぼう)を持っている……!


ゴンボスといえば、洞窟の天井を響かせるように、大いびきをかいて寝ている。


「料理が不味まずかったら、棍棒でお前らの体を殴り倒しちゃうぞー」


子トロルの一人が棍棒を振り回し、恐ろしいことを言い始めた。


不味い料理を作ったら病院送り――下手したら、死ぬ!


「グレゴリー校長は悪魔……。本気でそう思えてきたぜ」


俺はひそかにつぶやいてから、レイチェルを見た。


「よ、よし。油を熱してくれ。使う油はゴマ油が良いだろう」

「分かった。ランゼルフ地方でよく食べる『フリット』の要領だな。となると、170℃から180℃が最適というところだろう。リクト、その温度でどうだ?」


フリットは鶏や豚の肉に分厚い衣をつけた大衆料理だが――。


……やはり! レイチェルはかなりの勉強家だ。


油の温度のこともしっかり理解しているようだ。


「中火で15分、熱するというところかな」


レイチェルはそう言いつつ、鍋にごま油を注いで魔導コンロで熱し始めた。


しかしレイチェルはその一方で、まな板のアワビを見て眉をしかめた。


「だがリクト――そのアワビという食材だけは得体が知れない。本当に食べ物なのか?」

「見てろ――これがアワビの下ごしらえだ!」


俺はアワビに大量の塩をかけた――。


これでアワビのぬめりと汚れとともに、人の心の警戒心を洗い落とすぜ!


「なっ……何だと!」


レイチェルが声を上げたと同時に、フェリクスが後ろからやってきた。


アワビは身をよじって塩に抵抗している!


塩が体に染みるのだろう――新鮮な証拠だ!


「き、貴様! リクト! その魔物は生きてるじゃないか!」


フェリクスが汚いものを見るように、アワビと俺を交互に(にら)みつけた。


「ま、魔物を食すのは禁忌(きんき)中の禁忌だぞ! お前! ランゼルフ料理の法律を知らんのか?」

「うーむ……。仲間にこんなことを言いたくはないが、確かに魔物を食べるのはいかがなものか……」


レイチェルまでそんなことを言いだした。


「大丈夫!」


だが俺は胸を張って答えた。


「これは貝だ! 海の王だぞ!」

「う、海の王? 貝だって? 信じられんな……。こんな無気味な生き物なぞ、審査に通らんぞ!」


フェリクスがそう言ったとき――。


「不味い! てめぇの料理は食えたもんじゃねえええ!」


そんな地響きのような声が響いた。


見ると、トロルがすでに他の受験生の料理を、でかい指でつまんで食べている。


子トロルたちも受験生の料理を放り投げた。


「不味い料理を作ったからおしおきだ!」

「ひ、ひい! 殺される!」


子トロルたち三匹が棍棒を振り回したため、受験生は逃げ出した。


も、もう、審査が始まっているのか――!


「ギャハハハ!」


トロルと子トロルたちは逃げまどっている受験生を指でさして大笑いしてる。


くそ――人間をなめやがって、あの魔物どもっ!


俺の「天ぷら」で、土下座させてやるぜ!

【作者・武野あんず からのお知らせ】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

もし少しでも「面白かったよ!」「この先が気になるな~」と感じていただけたら、☆や「ブックマークに追加」で応援していただけると、とても嬉しいです。それが作者の元気の源になります(笑)

次回もぜひお楽しみに♪

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