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異世界料理アカデミー ~掃除人の俺、謎スキル「異次元デパ地下」で料理革命~  作者: 武野あんず


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第16話 天ぷらを魔物に食べさせる?

『……よろしい、全員、学ぶ覚悟があるということですね。では――試験開始!』


グレゴリー校長の掛け声でついに入学試験が始まった!


課題は揚げ物――材料は外から買ってこないとダメか?


俺が思案していると――。


「やあ、奴隷(どれい)のリクト君!」

「う、うあっ!」


フェリクスが後ろからわざと、おどかすように声を掛けてきた。


「君はどんなクソ不味(まず)い揚げ物料理を作るのかな?」

「お、お前かよ。……なるほど、お前とガーランドは隣の厨房(ちゅうぼう)なのか」


俺たちの左隣には、フェリクスとガーランドの札が置かれた厨房がある。


俺とレイチェルはこいつらと対戦中だ。


「そういうことだよ、リクト君。――で、君の料理は?」

「『天ぷら』だ」

「て……ん……何だ?」

「天ぷらという料理だ。聞こえなかったのか? フェリクス」


フェリクスは眉をひそめてガーランドに目配せした。


しかしガーランドは知らないという風に、首を横に振った。


「……ハハハッ! テンプラなどは知らんが、多分、田舎の揚げ物料理だろ? 僕ら貴族が絶対食べないような」

「お前っ!」


レイチェルがまたしてもフェリクスの胸ぐらを(つか)まえた。


「私の仲間を愚弄(ぐろう)する気か! それは私を愚弄するのと同じことだっ!」

「よせ!」


俺はあわててレイチェルを止めた。


「何度もいうが、変な行動を起こすと受験資格がなくなるぞ!」

「う……む、わ、わかった」


レイチェルは顔を真っ赤にしつつ、フェリクスを(にら)みつけた。


ん?


そのとき地面が()れたように思えた。


な、なんだ?


「おい、揺れてるぞ」

「違う! 試験会場が動いてるんだ」

「何をバカな。そんなことあるわけないだろ」


受験生たちが口々に騒ぐ。


ガクン!


「うおっ……」


一瞬、試験会場が大きく揺らいだ。


そして轟音(ごうおん)とともに、試験会場の天井がどんどん離れていく!


つまり、この会場が下に下がっているのか?


「へ、部屋全体が自動昇降機だったのか!」


レイチェルが叫んだ。


――やがてズウゥゥゥ……ンという胸に響く地響きとともに、着地した。


「……み、見ろ、リクト!」


周囲を見回すと、そこは薄明るい洞窟の大広間だった。


しかし、約五十台の厨房(ちゅうぼう)はそのままあるし、受験生たちも全員いる。


「今年の受験生はお前たちかあああ~!」


洞窟の奥から地響きのような声がして、でかい影がぬっと現れた。


う、うわっ!


あ、あれは――本の挿絵(さしえ)で見たことがあるぞ!


「ト、トロルだ!」


で、でかい!


身長は約3.5メートル、体重は400キロくらいありそうな、二足歩行の魔物だ!


腹はまるで月でも飲み込んだように丸く(ふく)れあがっている。


「俺様――グレゴリー校長の手下――トロルのドバニャ・ゴンボスがお前たちの料理を審査するぜ!」


マ、マジかよ……魔物が審査員だなんて前代未聞だぞ!


「料理を作ったら、俺様を起こせ! わかったな、ムニャ……」


トロルのゴンボスはその場に横になって眠り始めた。


「こ、これ、本当に受験なのか?」

「いいのかよ、このトロル……放っておいて」


受験生たちは顔を見合わせているが……。


周囲は洞窟――トロルのいびきが響いてるだけの大空洞だ。


「うむ……っ! 魔王の手先ならばこの包丁で切り裂いてやりたいところなのだが!」


レイチェルが包丁を手にかけようとしている。


「このトロル、グレゴリー校長の名を知っていたな? ということは本物の審査員である可能性は高いぞ」


レイチェルの言う通りだな……野生の魔物ならばグレゴリー校長の名前を知っているはずがない……多分。


トロルと審査員と信じ、すぐに調理に取り掛からなければ――!


俺は「異次元デパ地下」の「インフォメーション・ウィンドウ」を開いてみることにした。


【◇現在の商品の在庫◇】

【エビ 在庫3パック(6匹)】←NEW!

【米 在庫1袋(5kg)】

【マグロ(赤身)在庫1パック】

【米酢 在庫1瓶】

【ショウユ 在庫1瓶】

【マイタケ 在庫3個】←NEW!

【アワビ 在庫5個】←NEW!

【ナス 在庫5個】←NEW!

【薄力粉 在庫3袋】←NEW!

【卵 在庫3パック】←NEW!


えっ? ふ、増えてるぞ!


【隠しクエスト②:グレゴリー料理アカデミーを受験せよ!】

☆ ☆ ☆

【◇通知①:☆おめでとう☆隠しクエスト②をクリアしました!】

【◇通知②:クリア内容[受験会場に行った!]】

【◇報酬:異次元デパ地下の在庫品目が増える】


な、なるほど、【隠しクエスト②】のクリア報酬(ほうしゅう)か。


「レイチェル、これから『天ぷら』という揚げ物料理を作るんだ。手伝ってくれるな?」

「テン……プラ……? 君の故郷の伝統料理か何かか?」


すると……。


ドサッ……。


「な、何の音だ?」


レイチェルは驚いて周囲を見回した。


ん? これは異次元デパ地下から食材が降ってきた音だな!


――やはり! 新しい食材がいつの間にか魔導冷蔵庫と食材のストック庫に入っている!


「時間がない、レイチェル、エビの(から)をむいてくれ」

「エビ……? な、なるほど。知らん食材だがザリガニに似ているな」


レイチェルは俺が冷蔵庫から出したエビを見て、自分の包丁を取り出した。


「ザリガニスープの要領であれば――こうか?」


レイチェルは器用にエビの殻をむき――。


ザクリ


包丁で心地よい音を立てた。


「ザリガニと同類であれば、ここにワタがあるはず」


おおっ……包丁で切れ目を入れて背ワタを取っていく!


し、しかも素早い!


「み、見事だ、レイチェル」

「私は幼少の頃から父に厳しく、料理をさせられてきた! これくらいは朝飯前だ」


レイチェル……頼もしい味方だ!


俺はいびきをかいているトロルを見た。


「俺は――こいつをうならせる『天ぷら』を作ってみせる!」


そう決意した――!

【作者・武野あんず からのお知らせ】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

もし少しでも「面白かったよ!」「この先が気になるな~」と感じていただけたら、☆や「ブックマークに追加」で応援していただけると、とても嬉しいです。それが作者の元気の源になります(笑)

次回もぜひお楽しみに♪

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