表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界料理アカデミー ~掃除人の俺、謎スキル「異次元デパ地下」で料理革命~  作者: 武野あんず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/45

第15話 受験開始!

「リクト! やはりこのアカデミーに受験に来たか! ――僕はピエール・ダンクセンの(おい)だ!」


金髪の黒服の少年――フェリクス・ダンクセンは俺にそう告げた。


そのとき……!


「受験者どもぉ! こっちに集まれ。俺は試験監督のトラオ・ボウハラだ!」


角刈りの教師が怒鳴った。


さっき、門を閉めようとした教師だが……。


トラオ……ボウハラ? 不思議な名前だな、ランゼルフ王国外の人間か?


「これより『グレゴリー料理アカデミー』今季の入学試験を行う! 試験内容は……」


ボウハラ先生は俺たち約五十名の受験生を見回した。


「蹴落とし合いだ! 受験生同士で料理勝負を行う! 一人選べ。そいつが相手だ!」


な、何だと?


俺たちは顔を見合わせた。


「リクト君! 僕と戦ってくれ」


フェリクス・ダンクセンは半ば強引に俺の手を(つか)んで握手してきた。


「僕はお前を超える……! ゾクゾクするよ……フフフッ」


気持ち悪い野郎だな……俺の相手はこのフェリクスか。


ボウハラ先生はまた叫んだ。


「さて、もう一人選べ! そいつがお前の受験の協力者(パートナー)だ。すなわち、二対二の料理バトルだ!」

「くっ……私を愚弄(ぐろう)するか! 私には協力者(パートナー)などいらんというのに!」


俺の左横で、(りん)としたそれでいて不満げな少女の声がした。


「し、しかしそれがルールというのなら、仕方ないが」


髪の毛の短い、(きら)めくような美少女が立っている……。


皆、この子の美貌(びぼう)に、こっちを振り返ってるぞ。


そのかわり、目つきが鋭いな……。


「君! そこの君! 私の協力者(パートナー)になってくれないか?」


美少女は(せき)払いをしつつ、俺に言った。


「あー……協力者(パートナー)というのはだな、男女関係ではなく、そのような……」

「分かってるって。俺と試験を受けたいんだろ。協力しようぜ、俺はリクト・ロジェだ」


俺は快諾(かいだく)したが、美少女は顔を赤らめている。


「う、うむ? わ、分かってるじゃないか、リクト。私はレイチェル・レイクバーグだ」


この受験のルールは、協力者(パートナー)を作らないといけないらしい。


アイリーンは向こうのほうで眼鏡の女子の協力者(パートナー)を作っているな。


「おい! そこの女子。誰かと思えば、レイクバーグ家の出来損ないかぁ?」


フェリクスはレイチェルに向かってニヤけながら言葉を放った。


「レイクバーグっていやぁ、落ちぶれたレストランチェーンだったな」

「き、貴様っ! 私や私の家族を侮辱(ぶじょく)するか!」


レイチェルはあろうことかフェリクスの胸ぐらをつかんだ!


俺はそれをあわてて止めた。


「レイチェル、やめろ! 受験をする前に落とされるぞ!」


フェリクスの協力者(パートナー)はやはりというべきか、彼の横にいた背の高い少年だ。


そいつは何だか知らんが手が痙攣(けいれん)している。


「フェリクス、いつ包丁を握らせてくれるんだ……いつ食材を切り刻めるんだ……」

「ガーランド、待て待て。後で好きなだけ切り刻める」


あ、あのフェリクスの仲間、背の高いガーランドって野郎もヤベぇヤツだった……。


対戦相手はフェリクスとガーランドに決まった!


さて、試験の課題は?


「試験の課題は、『揚げ物料理』だ! 試験時間は二時間――!」


ボウハラ先生は受験生の疑問を察したように、声を上げた。


「今から受験生は、料理勝負スタジアム第二試験会場に集合だ! 食材は魔導(まどう)冷蔵庫に入っているが、時間内なら何でも買い足して良いぞ!」


◇ ◇ ◇


受験生たちは感嘆の声を上げながら、校舎の前を歩き出した。


「すげぇ校舎だなあ……」

「でけぇ」

「全部ガラス張りなのか? そんな建物、この世にあるんだな」


俺とレイチェルも他の受験生と一緒に歩いた。


校舎は芸術作品のような全面ガラス張りの建物で、太陽の光を反射し輝いている。


六階建てだから、三階建てのランゼルフ料理アカデミーより二倍でかいわけか。


「リクト、君はランゼルフ料理アカデミーにいたのか? え? 奴隷(どれい)出身? そ、それは本当なのか?」


レイチェルは歩きながら俺に質問してきた。


「ああ、俺は奴隷出身だ。レイチェル、お前は?」

「わ、私か? せ、先祖は貴族だったが、今のレイチェル家は胸を張って『貴族だ』とは言えない……」


レイチェルはさみしそうに言った。


「だが、父親は貴族を相手に、立派な料理人をしている!」


レイチェルは貴族と平民の中間といった立ち位置か……。


「おい、あれを見よ。あんなにでかい料理勝負スタジアム、見たことがないぞ! こ、ここが私たちの試合会場ってわけか?」

「え? うわっ……でかすぎる!」


校舎の隣には宝石のムーンストーンのような白色の超巨大な建物があった。


まるで月のような曲線を描くドーム型の建造物だ。


しかもこのドーム型建造物一つで、ちょっとした国立公園くらいの広さがあるらしい!


◇ ◇ ◇


「すごい……。驚いてばかりだ、リクト」


俺とレイチェルがドーム型料理勝負スタジアムの第二試験会場の中に入ると、たくさんの厨房(ちゅうぼう)が俺たちを出迎えた。


受験生全員分――約五十の厨房が、一つの部屋にひしめきあっている!


金属の匂いと熱気が、戦いの予感をひしひしと感じさせた。


「リクト! こっちに私たちの厨房があるぞ」


レイチェルが声を上げた。


右壁寄りの厨房には、俺とレイチェルの名前がすでに貼りつけられている。


――そのとき!


『グレゴリー料理アカデミーの受験生諸君――よく来てくださいましたね』


周囲に女性の声が響き渡った。


グレゴリー校長の顔が、正面の巨大魔導モニターに映し出された。


しかし彼女の声は突然、豹変(ひょうへん)し厳しいものになった。


『ここは甘い場所ではない! 学ぶ覚悟のない者に料理を作る資格はありません。すべてをかけて料理を学ばぬ者は即刻、ここから立ち去りなさい!』


グレゴリー校長はまるで(たか)のような目をして、俺たちを見回した。


俺たち受験生は、その迫力に一歩たじろいだ。


『……よろしい、全員、学ぶ覚悟があるということですね。では――試験開始!』


は、始まったぞ!


とにかく「揚げ物料理」を作ればいいのか?


それならば俺が作る料理は――ジョウイチの国の国民食――「天ぷら」だ!


だが、この試験は――俺たちの想像を(はる)かに超える試験だったのだ――!

【作者・武野あんず からのお知らせ】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

もし少しでも「面白かったよ!」「この先が気になるな~」と感じていただけたら、☆や「ブックマークに追加」で応援していただけると、とても嬉しいです。それが作者の元気の源になります(笑)

次回もぜひお楽しみに♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ