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異世界料理アカデミー ~掃除人の俺、謎スキル「異次元デパ地下」で料理革命~  作者: 武野あんず


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第14話 受験! グレゴリー料理アカデミー②

俺とアイリーンは、グレゴリー島周辺の地下街にいる。


筋肉質のおっさんが俺たちを呼び止めたので、俺はため息をつきながら言葉を放った。


「おっさん、困るぜ! 今は朝の9時45分だ」


俺は腕組みをしながら、おっさんを見た。


「早くしねぇと11時の入学試験に間に合わないんだよ! そこ、通してくれ。そもそもあんた誰だ?」

「俺は『闇の晩餐(ばんさん)』の地下民(ちかみん)総長――ラガル・ゲーリック!『グレゴリー料理アカデミー』なんかに入学しようとするヤツらを見ると、虫唾(むしず)が走る!」


ゲーリックのおっさんは鋭い目で俺とアイリーンを(にら)みつけた。


何なんだよ、「闇の晩餐」って……。


「少年、別に引き止めはしねぇよ! だが忠告――いや、これは警告だ! 『グレ校』は料理人の墓場だぜ!」

「な、何でそんなことが分かるんだよ?」

「行きゃ嫌でも分かるよ。あの学校の恐ろしさがな。――俺もあそこの生徒だった」

「な、何ですって? おじさんが?」


アイリーンが目を丸くすると、ゲーリックは巨体を丸めてうなずいた。


「グレゴリー校長は一見、上品そうに見える。しかし、恐ろしく冷酷で、使えない生徒は蹴落としていく」

「な、何……!」

「それを肝に(めい)じろ――料理人になるならな!」


ゲーリックはそう言って、(めん)屋の中に入ってしまった。


俺とアイリーンは顔を見合わせた。


◇ ◇ ◇


「すぐに乗り込むぜ!」


俺たちは近くの券売所で地下鉄道の切符を買い、ホームに出た。


ホームは薄汚く、湿気と鉄の匂いが入り混じっていた。


すでに木でできた古びた地下鉄道が停車している。


「信じられないわね。リクトや私に味方してくださった、あのグレゴリー夫人が冷酷な人だなんて」


アイリーンは首を傾げた。


俺がラーパスの料理勝負で勝てたのは、グレゴリー夫人が俺の料理に公正な評価をしてくれたからだ。


◇ ◇ ◇


「急げ、アイリーン!」


俺たちは地下鉄道に乗り込み、「アカデミー前駅」に到着するのを待った。


地下鉄道は地下をゆっくり走り始めた――。


「げげっ! の、のろいぞ! この地下鉄道!」


この地下鉄道、速度が馬車以下だ!


時刻は10時30分!


あと30分しかねえ! アカデミー前駅からグレ校までは走って何分だ?


「あっ……! す、すごいわ!」


鉄道内がパッと明るくなった。


地下鉄道が地下から出て、グレゴリー島に入ったのだ。


畑や田んぼの向こうに、ガラスでできた輝く大きな高層建築物が建ち並んでいるのが見える。


「あの畑の野菜や田んぼの麦も、全部、グレゴリー料理アカデミーに運搬されるらしいわ」


◇ ◇ ◇


――「アカデミー前」駅に着くと、俺たちは一目散に駆けだした。


時刻は10時45分だ!


「急げ急げ急げ!」

「走るの苦手なのよ~!」


俺たちはモルタルでできた白く美しい住宅地を走り、島中央の「グレ校」敷地内まで走った。


「あああ! 大変だわ!」


アカデミーの教師らしい角刈りの中年男が校門を閉める!


「くっ……! 急げぇえええ!」


果たして間に合うか?


――か、間一髪!


俺たちは閉められそうになった校門をすり抜け突っ切った……!


「てめぇら……」


角刈りの教師らしき男が、俺たちを(にら)みつけた。


「受験から遅刻してんじゃねえぞ! 時間を見てみろ。11時00分30秒だ!」


俺は「ヤバい」と思った。


「これはセーフとは言えねえ。グレゴリー校長は時間に厳しいからな。お前らはアウトだ!」

「そ、そんなぁ! 私たちの乗っていた魔導(まどう)バスが故障してしまったんですよ!」

「ウソつけ! この島にはバスがたくさん出入りするから、何とでも言える!」


男性教師は仁王立ちして俺たちを見ていたが、横で掃き掃除をしていた婆さんが近づいてきた。


「何です? 騒々しい――あら! リクト君にアイリーンさんじゃないの。待ってたわ!」


グレゴリー夫人……いや、グレゴリー校長だ!


「さあ、校庭に行きなさい。他の受験者たちがいるから」


ま、間に合ったぁああああ~……!


アイリーンは俺に目配せした。


…グレゴリー校長は「料理界の悪魔」……ゲーリックという男がそう言っていたっけ……?


「フン、お前がジョウイチのアレか。鍛えがいがありそうだ……受験に合格すればの話だが」


え?


角刈りの教師は舌打ちをして、そう言った。


俺は呆然として角刈りの教師を見た。


「さっさと校庭に行け! 駆け足!」

「リクト君、アイリーンさん、来てくれて嬉しいわ」


角刈りの教師とグレゴリー校長は、そのまま校庭の奥に行ってしまった。


一方、アイリーンといえばすでに校庭で、他の女子受験生と話をしている!


「な、なんちゅうコミュニケーション能力だよ、あいつ……」


……そのとき!


「リクト・ロジェだな?」


俺を二人の少年が取り囲んだ。


言葉を発したのは背が低いが、目つきが鋭く金髪の少年。


もう一人は背が高い。


「な、何だ? お前ら」


黒いハチマキに黒い服……こ、この服装……。


ちょっとゲーリックのおっさんの格好に似てないか?


「僕はフェリクス・ダンクセン!」


金髪の少年は口を開いた。


「リクト! やはりこの学校に受験に来たか! ――僕はピエール・ダンクセンの(おい)だ!」


な、何だとっ?


あ、あのキザ男、ランゼルフ王国副料理長の甥だと?


「リクト・ロジェ……! お前を潰す!」


背の高い少年が叫んだ。


な、何なんだ、こいつら!

【作者・武野あんず からのお知らせ】

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

もし少しでも「面白かったよ!」「この先が気になるな~」と感じていただけたら、☆や「ブックマークに追加」で応援していただけると、とても嬉しいです。それが作者の元気の源になります(笑)

次回もぜひお楽しみに♪

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