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俺が彼女を取られたら、それを手ぐすね引いて待っていた奴らがいた件  作者: 無味あり


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4

冬美は現在、ムスッとしていた。


黙っていれば、凛々しくもあり、可愛いらしくもある顔だち。その頬を膨らませて、可愛らしさに全振りしている。


その頰が膨らんでいる理由、それは…。


「冬美ちゃんはなに歌う?冬美ちゃんからでいいよ。」


…長谷川亜実。せっかくのデートだというのに、彼女が冬美たちに付いてきたからだ。


それもスイーツ店に行く予定がなぜかカラオケ。


なんでも亜美がモデルの友人に聞いたところ、目的の達成というやつをすぐにするのは、恋では愚策なんだとか…。


そんな理由でここに来たというが、本当にそれが冬美はそのことを疑っている。


なにせ亜美がやけに楽しそうなのだ。その様子はとても恋愛術で信也とどうこうなろうとしているとは思えず、単に信也とカラオケがしたかっただけにしか見えなかった。


…まあ、冬美も信也の歌声が生で、それもこんな近くで聴けるのは嬉しくもあるのだが…って、ああ…。


…だからか…。そういえば、雑誌で亜美先輩も【SHINYA】のファンだと言っていたものな…。。



…まあ、それはそれとして…。



初デートにお邪魔虫。



そんなことをされれば、世の乙女たちもカンカンだろう。


だから私もそれに漏れず、怒っている。


冬美のプンプンと膨らませた頰。それは怒っていることの印と言えるだろう。


しかし、なんというか、膨らんだ頰というものは見ている者からすれば、なんとも魅力的なものなのだ。割れ物を包装する際に使う、あのプチプチのような魅力。


それに惹きつけられ、冬美の頰に亜美の指が…。


「ぷす〜〜〜っ……。」


「……ぷっ!あははは♪」


亜美としては思わず、本当に思わずそうしてしまった。悪気?そんなものまったく微塵もない。


純粋な子供のような行動。


しかし、冬美からすればたまったものではない。好きな男の前でこんな妙な音を口から出されたのだ。冬美はニッコリ笑うと、静かに怒りを滲ませた声を出す。


「なあ、亜美先輩?覚悟はよろしいか?」


「あははは…ごめんごめんって。」


冬美が見る限り、亜美が真剣に謝っている様子はなかった。しかし、それには妙に愛嬌があり、それは冬美が矛を収めるには十分だった。


「…まったく…まさかこんな人だったとは…。」


モデルの写真で見る彼女。彼女は一切笑顔を見せなかった。いや、確かに口元や目元が緩んでいるものはあったのだが、それは全て美しく、顔立ちのように作りもののようだった。


今の彼女は美しいというよりも可愛らしく…触れ合ってみてとの印象の違いたるや…もう…。


「あははは、ごめんごめん。私もちょっと浮かれているところがあって…。なにせ信也くんとの初デートだし…。」


「……。」


なにがデートだ。本当に殴ってやろうかと冬美が思っていると、不意に亜美の表情が真剣なものとなった。


「…それにたぶんだけど…物凄く焦ってるからかもしれない。」


「へ?」


亜美はそっと信也の方に指を差す。すると、信也は誰かと電話していて…。


冬美はなるべく聞かないように……いや、正直怒っていて、それどころではなく、信也がそんなことをしていることにまったく気が付かなかったのだが…。


気にしてみると、聞かないようにとは思うものの、信也たちの電話の声が聞こえてきてしまった。


「…今日の夜?いや、家で食べると思うが…。」


『そうなんだ〜。お姉ちゃんも一緒でいい?昔も今もよくご飯一緒するでしょ?』


「?カナ姉も?というか、今も昔もってなんだ?……まあ、別にいいが…じゃあ初音さんに連絡しとけばいいか?」


『うん♪あ〜…でも、私が一緒するって知られると、ミイちゃんとメイちゃんが怒るかもね?』


「…それなら2人の分も頼んどくか?ダメなら早めに初音さんに伝えれば、あの人のことだから、食材の転用くらい簡単だろうし…。」


『うん、そうね♪あっ、2人には私から連絡取っておくから。それにそれならご飯の後に練習もできるもんね♪』


「ああ、新曲が特にしっくりこないからな。」


『ところで、信也くん、今なにしてるの?』


「ん?友達とカラオケ。」


『……へえ…そうなの…(やっぱり…)。じゃあまた今度、お姉ちゃんともカラオケ行こうね♪それじゃあまたね、信也くん、愛してる♪』


「はいはい。俺も愛してるよ、カナ姉。」


これで通話は終わり。


それを聞いた冬美は青い顔をしていると、亜美がその肩をポンと叩く。


「…私が焦る理由…わかったでしょ?」


コクコク。


「冬美ちゃん、真面目な話、私たち協力しない?」


「へ?」


「だって、相手は同じバンドメンバーで、信也くんから自然と『愛してる。』なんて引き出してくる化け物だよ。しかも、たぶんだけど、こっちに女の子がいるとわかって聞かせに掛かっているんじゃないかな?冬美ちゃん、そんな相手を一人で相手取れる?」


本当のところ、冬美は一人ではない。秋穂がいるから。


しかし、相手はおそらく【シグマド】のキーボードの【カナリア】。彼女だ。


【カナリア】は亜美とは違ったタイプの、男性好きする胸の大きなタイプのスタイル抜群の美女である。


しかも、信也の幼馴染で、同じバンドメンバー。


さらに、家に連れ込むではなく、上がり込むことが許されているというアドバンテージを覆すには、こちらもなりふり構ってはいられなかった。


…それに…もしかしたら、あの双子…ミイとメイまでもライバルかもしれない。これもなんとなく【カナリア】に匂わされた気がする。


……というか、電話で相手にこれだけの情報を聞かせる【カナリア】って怖すぎるんだが…。


そう、冬美が恐怖に軽く震えていると、亜美がしれっと曲を入れて、マイクを2本持っていて…。


「はい、信也くん。」


と、片方のマイクを渡した。


「?」と信也は疑問符を浮かべていたが、冬美はそれを見てまさかと思う。すると…


「早速だけど、デュエットしよ♪」


「…仕方がない。」


………なっ…やっぱり!!おのれ…舌の根も乾かぬうちに…。


怒りに震える冬美。すると、亜美の口元が小さく動いたのだ。


『ごめんね…でも、これからがんばろうね。』


亜美の表情は優しく、本当に悪意を持って出し抜いてやろうというそれには見えず、『協力はするけど、抜け駆けしないとは言ってない。でも一緒に頑張ろう。』そんなふうなメッセージのような気がした。


なんとなく釈然とはしないが、それを受け入れ、亜美の様子から攻めの姿勢を学んだ冬美。


……よし!私もやるか!!


冬美もパネルを手に取ると、信也とデュエットできそうな曲()()を吟味し始めた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、歌い手の推しとのカラオケとかファンとしては夢だろうから亜美さんの気持ちは分かる でも思いの外、バンドメンバーの牽制も早いな 主人公が普段行きそうにないカラオケに行ってるって事で、…
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