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門に着くと内側にいるリオと外側にいる男が何か言い合っているようだ。ただ外側の男は騎士に拘束されているが。それにだいぶ身なりが小汚ない。
「だから言っているだろう!ここは元は俺の物だ!ここを買うなら俺に金を寄越すのが道理だろ!」
「はぁ…。何回言えば分かるんだ?ここはすでに王家の管理下に入っている。だからお前に金を払う必要なんてないんだよ。ったくお前の頭は飾りなのか?」
「なっ、なんだと!?この平民風情がっ!」
「いや、それはお前のことだろう…」
「ねぇ一体どうしたの?」
「っ!ヴィー…」
「あまりにも遅いから来てみたけど…。この男は誰なの?」
「はっ!女連れだなんて生意気な…ってお前は…!」
どうやらこの男は私のことを知っているようだが私はこの男を知らない。一体誰なのだろうか。
「あら、私の知り合い?でもごめんなさい。私あなたのこと知らないの」
「なっ!お、俺はラシェル侯爵だぞ!お前は自分の夫も分からないのか!」
「え?」
そう言われて男の顔をまじまじと見てみる。確かに言われてみれば小汚なくはなっているが、あの頭空っぽ男の顔に似ている気がする。
「えっ、もしかしてモーリス様?」
「い、今さら気づいたのか!?」
「だって私あなたに興味なかったからあまり覚えてないんだもの。今思い出せただけでも奇跡よ、奇跡」
「なっ…」
「それで元侯爵様がここにわざわざ何の用なの?」
「ここは俺の物だから金を寄越せってしつこいんだよ。ちゃんと説明しても全然理解しなくてな…」
「まぁ頭が空っぽだから仕方ないわよ。…あら、そういえばあの女性は一緒ではないの?真実の愛のお相手のほら、えーっと…あっ、メリッサさん!」
「エリザだ!はっ、あの女なら侯爵家が潰れそうになった途端、服と宝石を持って逃げていったさ!あの金があれば俺はこんなことになっていなかったはずなのに!」
(いや、服と宝石だけで払える額ではなかったでしょうに。あの子は状況を判断する能力は高かったようだけど男を見る目は無かったわね)
エリザは侯爵家の資産である服や宝石を持って逃げたということだが、それが本当であれば今頃捕まって牢の中かもしれない。おそらく服も宝石も差し押さえの対象になっていただろう。選んだ相手がモーリスでなければそこそこ幸せに生きていけたかもしれないのに、と頭の片隅で思った。そう、頭の片隅で思っただけで興味は全くないのだが。
「はぁ、言いたいことはそれだけですか?私忙しいんですけど」
「なんだ夫に対してその口の利き方は!大体なぜここにお前がいるんだ!」
「なぜって、私がここを買ったからよ?」
「…は?」
「ここはもう私のものよ。きちんと王家と契約書を交わして手続きも済ませてあるもの」
「ど、どうしてお前なんかが!?」
「それは…ってわざわざ教える必要はないわね。あなたはこのまま騒ぎたいだけ騒いでいればいいわ」
「なっ!」
「さぁリオ行きましょう。このままこの男の相手をしても時間の無駄だわ。後の事は騎士たちに任せましょう」
「ああそうだな。じゃああとは頼んだぞ」
「「はっ!」」
「は、離せ!俺を誰だと思っているんだ!こんなことしてただじゃ済まないぞ!」
私とリオはその場を後にしたが後ろからあの男の騒ぎ声が聞こえる。わざわざ王家が絡んでいると言っているのにも関わらず、この状況をいまだに理解できないとは本当に残念な頭の持ち主である。
間違いなくあの男は危険人物として牢に入れられるだろう。そうしたら二度と外に出られないかもしれないというのに。相手が貴族ならまだしも、今回の相手は王家だ。王家に逆らっては生きていけないだろう。




