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第89話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「正宗……入るぞ……」


 姉ちゃんが風呂のドアの前に立ち、ノックしてそんなことを言った……て、ええ!?


 や、姉ちゃん何考えてるの!?


 オマケに、風呂のドアのすりガラス越しに見える姉ちゃんの姿……アレって、ハ、ハダカあああああ!?


「ダ、ダメダメダメダメ! ダメだぞ姉ちゃん!」


 俺は姉ちゃんを止めるため、風呂から出てドアを押さえようと立ち上がった。


 その時。


 ——ガチャ。


「わあああああああ!?!?!?」


 タ、タイミング良すぎるだろおおおお!?


 俺は慌てて再度風呂に浸かり、背中を向けた。


「ふふふ……心配するな正宗。ちょっとこちらを見てみろ」


 イヤイヤイヤイヤ!? 見てみろって何考えてんの!?


「いいから」


 そう言って姉ちゃんは俺の頭をガシッとつかむと、無理やり振り向かせようと力を込めた。


 グ、グウウ……! これは振り向いた瞬間、破滅フラグが立つヤツだ!


 俺は首に全神経を集中させ必死で抵抗を試みるが……ダメだ、姉ちゃんの腕力、半端ねえ……!


 そして、抵抗むなしく姉ちゃんのほうへと顔を向けさせられ、俺の目に映ったのは…………………………水着?

 しかも、白のかなり際どいビキニ!?


「ふっふっふ……ひょっとして、私が素っ裸だとでも思ったか?」


 してやったりといった表情で口の端を吊り上げる姉ちゃん。


 だが、俺はあえて姉ちゃんに言おうと思う。


「いや! 水着でも……つかその水着、かなりヤバイからね!? 姉ちゃん自分の姿、鏡で見たことあるの!?」


 大体姉ちゃん、プロポーションが圧倒的な上に、そんな露出度の高いビキニ、ある意味素っ裸よりもヤバイんだけど!?


「それに白のビキニって何考えてるの!? というか、その……その水着、ちゃんとパット入ってる……?」


 俺はもの凄く嫌な予感がしたので、おずおずと姉ちゃんに尋ねてみる。


「? ああ、少し水着がきつかったので、パットは外した」


 はい、アウトオオオオオオ!


「マジで何考えてるの!? そんな状態でお湯に濡れたりしたら、その……」

「?」


 アアモウ! 何で気づかねえんだよ! 察しろよ!


 白のビキニが濡れたら、その……透けるんだよ!


「まあ、別に透けたところで、一向に構わんがな」

「や、コッチが構うんだよ! つか構えよ! しかも気づいてんじゃねえか!」


 わ、我が姉ながら……恐るべし……!


「んふふ……ひょっとして、私に欲情したか?」


 なんつーこと聞くんだよ!?


 俺が姉ちゃんに欲情したか、だって?


 したよ! おかげで風呂から出られねーよ!


「と、とにかく……姉ちゃんは早くここから……っ!?」


 すると突然、姉ちゃんが浴槽越しに俺に抱きついてきた!?


「ね、姉ちゃん……!?」

「す、すまん正宗……す、少しだけ……少しだけこのまま……!」


 そう言うと、姉ちゃんは苦しそうな表情で呟き、抱きしめる力が強くなった。


 そ、そして、その……む、胸が……!


「な、なあ、正宗……その、聞いて……いいか……?」

「え!? き、聞くって何を!?」


 ヤ、ヤバイ……こんな理性を保だけで必死な状況で、一体俺に何を聞くっていうんだ!?」


「そ、その……っ」


 俺を抱きしめる力がさらに強くなる。


「か……環奈と、何が……あった、んだ……?」

「っ!?」


 え? え? ど……どうして!?


 俺は何も言ってないし、環奈だって言ってないはず。


 俺は普段通りにしてたはずだし、悟られるような真似……!


「……駅で正宗を迎え、見た時から二人の様子がおかしいことには気づいていた……お互いが、どこか遠慮しているかのような……だけど、お互いを意識し合っているような、そんな……」

「ね、姉ちゃん……」

「な、なあ! 何かあったんだろ!? 環奈と……環奈と何か!」

「あ……」


 姉ちゃんは俺から身体を離すと、悲痛な表情で俺の両肩を揺する。


 そして俺は、そんな姉ちゃんの顔を見ることができなくて、そんな姉ちゃんの視線に耐えられなくて、顔を背けた。


 すると。


「正宗……!」

「え……ん……っ!?」


 突然俺は抱き寄せられ、そして……姉ちゃんに、キスされた。


「ん……んう……っ!」

「ん……むう……ぷは」


 強く唇を重ねた後、姉ちゃんは俺から勢いよく離れた。


「ね、姉ちゃん……!?」

「あ、い、いや、こ、これ、は……そ、その! スマンッ……!」


 そう言うと、姉ちゃんは俺の身体から手を離し、風呂場から逃げるように出ていった。


「姉ちゃん……」


 俺は自分の唇を手で押さえながら、しばらく身動きを取ることができなかった。



「姉ちゃん……」


 俺はようやく我に返ると、風呂から上がって着替え、リビングに顔を出す。


 すると、姉ちゃんはいつの間にか部屋着に着替え、キッチンで晩ご飯の支度をしていた。


「ね、姉ちゃん、その……「さ、さあて! 今日は腕によりをかけた、ビーフシチューだぞ!」」


 まるで俺の言葉を遮るように、叫ぶようにそう言うと、こちらへと振り向いてニコリ、と笑った。


 だけど、俺にはその顔がまるで、むせび泣いているように見えた。


「姉ちゃん、あ、あの……「正宗」」


 やはり姉ちゃんは、俺に話をさせてくれようとはしない。


「さっきのことは……忘れてくれ……」

「っ! だ、だけどっ!」

「お願いだ……だから、また、今まで通りに……っ!」


 そう言いながら、姉ちゃんは無理やり笑顔を作りながら、その瞳からぽろぽろと大粒の涙を零した。


 俺は……俺は……!


「…………………………(コクリ)」


 ただ、無言で頷いた。


「ありがとう……正宗……」


 そして、いつものように向かい合わせに座りながら、俺達はその日の夕食をただ無言のまま済ませた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は明日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり気付いていたか… しかも強烈な行動、実行力!さすが姉ちゃん、侮れんな…
[良い点] おんぎゃぁああ!!ww なんてドキドキするシチュエーションなんですか!笑 姉ちゃん頑張って勇気出したんだろうなぁ……ふぅ。 あれ?そういえば誰かを忘れているような…… 取り敢えず、まーく…
[良い点] 羽弥ちゃん、押し切れませんでしたか・・・ ひと押しすればノクターンの世界でしたのに(笑) 何かしらの理性(?)が働いてしまったんですかね? と、なると次はハルちゃん。 とりあえず、皆キ…
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