第75話
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「デュフフフ! さあ、いよいよクライマックス! 女子の部屋に侵入するでござるよ!」
「「お、おー……」」
風呂から上がって部屋に戻った俺達は、無事桐山センセの点呼を済ませ、あとは寝るだけとなったんだけど……長岡の奴、今日は絶好調だな。
それに、侵入と言っても、遊びに行くってあらかじめ約束してるから、全然侵入でも何でもないんだけど。
「では堀口氏、佐々木氏、レーションはちゃんと持ったでござるか?」
「「お、おー……」」
レーションって……ただのおやつだろ。
「よし、ではフタヒトマルマル、状況を開始するでござる!」
「「お、おー……」」
コレ、いつまで続けんだよ……。
などと佐々木と顔を見合わせながら肩を竦めると、張り切る長岡を尻目にチラリ、と部屋の隅を見る。
「……なあ杉山、お前は……や、やっぱいいわ……」
俺は部屋の隅で体育座りしてる杉山に声をかけようとして、やっぱりやめた。
や、だって、何があったか知らないけど落ち込んでて可哀想だな、ってほんのちょっとだけ思ったけど、関わると面倒くさそうなんだもん。
ということで、張り切る長岡の後ろをついて行き、環奈達の待つ部屋へと向かう。
——コン、コン。
「(合言葉を言え。『ステラのケーキは』)」
「(デュフフ……『超サイコー!』)」
「(ブッブー! 頭に“デュフフ”がついたからダメー!)」
「(ヒ、ヒドイでござる!)」
何このくだらないやり取り。
「(仕方ないから今回だけだかんね)」
「(か、かたじけない!)」
はあ、やっと入れる。
「「「「「いらっしゃーい!」」」」」
「来たぞー!」
「ちっす!」
「デュフフフ! 無事作戦成功でござる!」
俺達は環奈達三人とハルさん、姉ちゃんの歓迎を受け、思い思いに座る。
「ところでさ、あの合言葉って誰が言い出したの?」
佐々木がそう尋ねると、女子三人が一斉に長岡を見る……だと思ったよ!
「はい、まーくん!」
「あ、どもども」
環奈に紙コップを差し出され、俺はそれを受け取ると、コーラをなみなみと注いでくれた。
「それじゃ修学旅行一日目、お疲れ様でしたー!」
「「「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」」」
環奈の音頭で乾杯すると、持って来たお菓子の袋を開け、畳の上に広げる。
あとは、ただ雑談を繰り広げるって感じかな。
「そうだ、明日の自由行動はどうする?」
「あー、俺と葉山はその……」
お、なんだよ佐々木、早速うまいことやりやがって。
と思ったら。
「フフフ……明日は佐々木くんと、色んな心霊スポットを巡るんです!」
そう言って、葉山が嬉しそうにはしゃぐ。
うん、佐々木よ、大変だな……。
「で、長岡は?」
「デュフフフ、拙者は聖地巡礼の旅に出ますぞ!」
「聖地?」
「そうでござる! あの有名なアニメの舞台となった、数々の橋を回るのでござる!」
「へえー」
俺、そのアニメ観てないからよく分かんないけど。
「わ、私もたまたまその橋がある場所に有名なお茶屋さんがあるから、そこに……」
山川が恥ずかしそうに手を挙げて、一緒に行きますアピールをしてる。
なんだよ長岡、学年一の変態のくせにキッチリとアオハルしやがって。他の不遇なラノベの友人キャラ達に謝れ。
「つか、そういう堀口はどこ行くんだよ?」
「俺? 俺は……」
ヤベ、そういやどこ行きたいか考えてなかったわ。
うーん……どこに行こうか……。
「ハイ! ハイ! まーくんは私と一緒にお土産買ったりあんみつ食べたり、鴨川に並んで座ったりするの!」
すると、環奈がすかさず明日の行程について説明してくれた。
まあ、一緒に行動するって約束してたし、俺も特に目的があったりする訳じゃないから、環奈の希望を叶えよう。
「待て環奈、それは聞き捨てならんな……」
ここで姉ちゃんから待ったがかかる。
「鴨川には、私が正宗と一緒に座る予定をしていたのだ。環奈は指をくわえて眺めているだけにしておけ」
「はあ!? 羽弥さん何言ってるんですか!?」
や、環奈の言う通り、ホント何言ってるの!?
「ふふ、まあ二人は放っておいて、せっかくですから鴨川の川床で一緒にランチでもどうですか? ……その、二人きりで……」
「「はあ!?」」
耳聡く聞いていた姉ちゃんと環奈が、今度はハルさんに詰め寄る。
「いえ、二人は並んで鴨川に座るということでしたので、私は正宗くんと、と思いまして」
「「誰がだ(誰がよ)!」」
おおう、ハルさんがニコニコとしながら、うまく二人を手玉に取っている……いや、揶揄ってる?
「とにかく! 正宗は私と……!」
「何言ってるの! まーくんは私と約束したんだから!」
「ふふ……私も譲る気はありませんよ?」
や、もう三人とも何言ってんの!? ……って、はっ!?
見ると、三人が言い争っている中、他の四人がジト目で俺を眺めていた。
や、俺、悪くない……よね?
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次話は明日の夜投稿予定です!
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