第73話
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あの後、俺達は宿へと戻り、部屋でゴロゴロする。
うーん、俺って畳の部屋、結構好きなんだよね。
——ガラ。
部屋の戸が開き、杉山が入ってきた。
結局コイツ等もすぐ宿に戻ったんだな。
「よう、お帰り」
「……ていうかさ、お前等、なんで俺達を避けるの?」
杉山が恨みがましい目で俺達を見る。
まあ……俺や環奈は、杉山の班に優希がいるからなんだけど……そういえば、佐々木と長岡、山川に葉山は、なんで俺達に付き合ってまで杉山達を避けるんだ?
「ん? そりゃ決まってんだろ。お前の態度がおかしいからだよ」
「な……た、態度がおかしいって……!?」
佐々木が杉山にずばり、と言うと、杉山が少し狼狽えた。
「デュフフフ、まあ、今日の様子を見た限りですと、坂口殿がなかなかなびいてくれないので、拙者達を当て馬にしたい、というところですかな?」
「そ、そんなんじゃ……」
へえ、そういうことなのか。
つか、俺達を当て馬にって、ちょっとヒドクない?
「デュフフフフ、更に付け加えると、坂崎殿が坂口殿と旧知のようなので、そこから切り崩そう、とも考えているようですな。それに、坂口殿がダメでも、坂崎殿を保険にする意味合いもありそうですぞ?」
おおう……調子に乗った長岡がとんでもない名推理を発揮しやがった。
ていうか、環奈を保険、だって?
「おい杉山……今長岡が言った通り、環奈を“保険”だとか思ってるのか?」
「は、はあ!? そんなわけないだろう! 全く……もういい!」
逆ギレした杉山は、また部屋を出ていった。
「あの態度……そうだって言ってるようなモンじゃねえか……」
「アイツ、ちょっとモテるからって、調子に乗ってんじゃねーの?」
「デュフ、まあ堀口氏と坂崎殿の関係を見て、なおもそう思える杉山氏にはある意味感心しますがな」
「「「はあ……」」」
俺達三人は部屋の戸を見つめながら、盛大に溜息を吐いた。
◇
「デュフフフフ! 堀口氏! 佐々木氏! いよいよこの時がやってまいりましたぞ!」
大広間での食事を終えた俺達は、風呂に入る準備をしに部屋に戻ってきたんだけど……長岡のテンションが異様に高い。
「な、なあ……さすがに止めといたほうがいいんじゃないのか?」
「堀口氏! まさか日和ったのでござるか!?」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
「ならば! いざ行きましょうぞ! 『女風呂』という名の戦場に!」
「バカ! デカイ声出すな!」
「ムググ!?」
俺と佐々木は、長岡の口を慌てて塞ぐ。
万が一女子に聞かれたら、俺達の学校生活は終焉を迎えることになるからな。
し、しかし長岡の奴……本当にノゾキをするとは思いもよらなかった……。
や、最初のうちは俺達も調子に乗って長岡の提案に賛同してたものの、いざとなると……なあ。
チラリ、と佐々木を見ると、どうやら佐々木も同じ気持ちのようで、俺達は揃って肩を落とした。
「デュフフフ! 拙者は準備できたでござるぞ!」
「「おう……」」
仕方ない、親友のためだ……付き合ってやるか。
け、決してノゾキがしたいわけじゃないんだからねっ!?
ということで、俺達は風呂の支度をして大浴場に向かうと。
「あ、ハルさんに姉ちゃん! それに環奈と山川と葉山まで!」
「ふふ、正宗くん達もお風呂ですか?」
ヤ、ヤバイ!? もし俺達のノゾキがバレたら!?
『正宗くん……そんな人だったなんて……最低ですっ!』
『まーくんのバカ! 大っ嫌い!』
『正宗……私は姉として恥ずかしい……幻滅したぞ!』
う、うわああああああ!?
「? どうしました?」
「あ、ああああ! いい、いえ! 何にも! ありません! 佐々木、長岡、行くぞ!?」
「お、おい、チョット待てよ!」
「待つでござる~!」
「?」
俺はとにかくハルさん達から逃げるため、慌てて男湯の暖簾をくぐると、脱衣所の隅に二人を呼び込む。
「お、おい!? どうすんだよ! さすがにみんながいる中でアレは……!」
「お、おう……そ、そうだな……」
「何を言ってるでござるか! むしろこれは千載一遇のチャンスでござるぞ!」
「チャンスって……大ピンチの間違いだろ」
「堀口殿、では聞くでござるが、お三方の裸、見たくはないのでござるか?」
長岡の済んだ瞳で見つめられ、俺の心がざわつく。
長岡……エロに関しては真摯な男め……!
だが、三人の裸を見たくないかどうかと言われれば……見たいに決まってるだろ!!
だが、もし三人にバレたら……。
「デュフフ、堀口殿……バレなきゃあノゾキではないでござるよ!」
「っ!」
そ、そうだ! バレなければいいんだ!
そうすれば……!
「おーい、ちょっと来てみ」
「ど、どうした……?」
俺達を置いて既に浴室に向かっていた佐々木の手招きに、俺達も向かってみると……。
「コレ……ムリじゃね?」
女風呂とを隔てる壁と天井とはほんの十センチに満たないほどの隙間しかなく、かつ、一番上まで登るための突起もなにもない。
うん、無理ゲーだった。
「くそう……! 拙者、これを高校生活一番の楽しみとしてきたでござるのに……!」
床をバシバシと叩きながら、悔し涙を流す長岡。
長岡……お前の理想の高校生活って一体……。
『うわあ……羽弥さんの胸、おっきいですねー!』
『む、そうか? それを言うなら環奈も大きいではないか』
『二人とも、うらやましいです……』
『わあお……葉山っち、ひょっとしてこの中で一番大き……』
『ダ、ダメー!』
「「「………………………」」」
俺達三人は湯船につかりながら、しばらくそこから出られなくなったのはナイショだ。
◇
「ふう……」
俺はみんなより一足早く風呂を上がり、ロビーでみんなが出てくるのを待っていると。
——ちょうど風呂へと向かう優希に出遭った。
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次話は今日の夜投稿予定です!
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