第69話
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「よし、忘れ物はない……よな?」
俺はスーツケースを開き、忘れ物がないか再度チェックする。
うん、見た限り忘れ物はないみたいだ。
「正宗ー、ご飯だぞー!」
「今行くー!」
姉ちゃんの呼ぶ声が聞こえたので、俺はリビングへと向かう。
しかし姉ちゃん、別にいいって言ったのに、俺に合わせて朝早くに起きてくれたんだよな。
全く、姉ちゃんには頭が上がらないな。
「ねえ、姉ちゃん……今日の朝ご飯、なんだか少し豪勢じゃない?」
「む、そうか? まあ今日は正宗が修学旅行に行く日だからな。それなりに縁起は担いだが」
縁起、ねえ。
テーブルに並べられているのは、いつものご飯と味噌汁のほかに、ブリの照り焼き、明太子、あげくにはとんかつまで。
そして、横に添えられているのは……キット〇ット?
「ええと、俺、受験じゃなくて修学旅行に行くんだけど……」
「そうだな」
「ブリと明太子はよく分からないけど、とんかつとキッ〇カットって、俺は何と戦うんだよ」
「む、ブリは出世魚なのだぞ? 明太子は子孫繁栄、そして、修学旅行では環奈に負けるわけにはいかないからな」
「なんで俺が環奈と戦うことになってんの!?」
おまけに子孫繁栄って……妙に生々しいな。
「ま、まあいいや……とりあえず早く食べないと……いただきます」
「うむ、いただきます」
俺は朝ご飯を急いでかきこむと。
——ピンポーン。
お、環奈だな。
俺は食事を中断し、玄関へと急ぐ。
「まーくん、おはよ!」
「おう、おはよ。すぐにメシ食っちまうから、中でちょっと待ってて」
「うん!」
俺と環奈はリビングに向かうと、姉ちゃんが既にご飯を食べ終えていた。早っ!
「む。環奈、おはよう」
「羽弥さんおはよ!」
朝の挨拶をした後、環奈がテーブルの朝ご飯をしげしげと眺めると。
「……まーくん、この朝ご飯のラインナップ、なんなの……?」
「……聞くな」
さすがにとんかつとキ〇トカ〇トが環奈に勝つためなんて理由、説明できないし、明太子に至ってはセクハラ案件だ。
俺は環奈には絶対に嫌われたくないのだ。
「うむ、ブリは出世魚だからな。そして明太子は子孫繁栄、とんかつと〇ットカットは修学旅行で環奈に負けないためだ!」
おいい!? 俺が気を遣って言わないようにしたのに!
「ね、ねえ、まーくん……そ、その、子孫繁栄って……」
環奈が顔を真っ赤にして、モジモジしながら尋ねてくる。
や、そ、そんな風にされると……恥ずかしい……。
「む、何を勘違いしているのだ? 子孫繁栄は私に決まっているだろ」
「「ホント何言ってるの!?」」
俺と環奈は思わず叫んだ。
あ、朝から頭痛い……。
「ま、まあすぐ食べちまうよ……」
「うん、待ってる……」
俺は急いで朝ご飯を食べ終え、姉ちゃんに見送られて家を出るんだけど。
「それじゃ、行ってくるよ」
「行ってきまーす!」
「ああ。二人とも、またな」
「「?」」
姉ちゃん何を言ってるんだ?
俺は隣の環奈と目を見合わせて、お互い首を傾げた。
うーん、ちゃんと無事家に帰るんだぞって意味なのかなあ。
ま、いいか。
◇
「よーし、全員いるな!」
駅に集合した俺達は、早速桐山センセの点呼を受ける。
「それじゃ、修学旅行の注意事項を説明するから、ちゃんと聞いておくんだぞ!」
学年主任が注意事項を長々と説明する中、俺は隣の佐々木と長岡に確認する。
「なあなあ、お前達は小遣いいくら持ってきた?」
「俺は五万だな」
「デュフフ、拙者は十万でござるよ」
「「多っ!」」
や、そんなに持ってきて、途中で財布落としたりしても知らねーぞ!?
「そういう堀口はどうなんだよ?」
「俺? 俺は三万」
「ふーん、思ったより少ないな」
「まあ、必要だったらATMで降ろせばいいしな」
「ま、そうか」
などとくだらない話をしていると。
「ねえねえ、今日の寺社巡り、どこから回る?」
環奈と山川がそっと近寄ってきて、今日の行程の確認に来た。
「うーん、そうだなあ……「おーい、新幹線に乗るから全員移動するぞ!」って、もう新幹線に乗るみたいだし、その話は新幹線の中でな」
「うん!」
ということで、俺達はホームへと移動し、新幹線に乗り込む。
席は、俺、佐々木、長岡でその前の列に環奈と山川、そして葉山が座る。
「そうそう、それでどこから回るかって話だけど」
「えーとね、もしよかったら、私達の『鈴虫寺』を最初にお願いしたいんだけど」
「いいけど、なんで?」
「その、住職さんのお話を聞かないといけないらしくて……」
「ふーん」
住職の話をってのがよく分からんけど、ま、いいか。
「じゃあその次は……」
「はい! はい! 『貴船神社』をお願いします!」
「お、おおう……いいよ……」
普段あんまりしゃべらないのに、オカルト絡みになるとグイグイくるな!?
「『貴船神社』、楽しそうじゃん」
「さ、佐々木くん! 分かってくれますか!」
「も、もちろん!」
同士を見つけて嬉しいのか、葉山さんが佐々木をターゲットにしたようだ。
だけど佐々木って、別にオカルト趣味じゃないよな? ハテ?
「まあ後は近いところばっかりだし、適当でいいか」
「デュフフ、そうでござるな。まずは女子優先は基本ですぞ!」
その通りなんだけど、長岡に言われると何だか腹立つな。
そんな感じで今日の予定や雑談をしながら、俺達は新幹線の中で楽しく会話をした。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は今日の夜投稿予定です!
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