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第67話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「まーくん、おはよ!」

「おう、じゃあ行こうか」

「うん!」


 文化祭の打ち上げが終わって次の月曜日、今日もいつものように環奈が迎えに来てくれた。


「よし、じゃあ行くか!」


 そして、なぜか姉ちゃんが張り切って一緒に家を出るのも、もはやテンプレだ。


「はあー、でも修学旅行、楽しみだなあ……」

「そうか? つっても定番の京都じゃん? 俺としてはできれば海外とは言わないけど、せめて沖縄とか北海道が……」

「もー、場所の問題じゃないの! ねね、それより……」


 そう言うと、環奈は上目遣いで俺を覗き見る。


「ん?」

「自由行動の時に、一緒に京都巡りしたいなあ……って」


 なんだ、そんなの決まってるのに。


「ああ、もちろん! 元々その、環奈を誘おうと思ってたし……」

「ホ、ホントに?」

「うん……」

「えへへ……やった」


 俺の答えを聞いた環奈は、嬉しそうに小さくガッツポーズする。


 なんだこの生き物は。超可愛いんだけど。


「むむ! くそ……! 私も修学旅行に行きたいぞ!」

「へへーん、羽弥さんはお留守番ですね! ちゃんとお土産買って来ますから、大人しく待っててくださいね!」

「むむむむむむむ!」


 環奈の煽りを受け、姉ちゃんが顔を真っ赤にする。


 全くもう……。


「ほら、姉ちゃん。修学旅行なんだから、今回ばかりは仕方ないって。それにさ、また冬休みにでもなったら、近くでもいいから、一緒に旅行行こうよ、ね?」

「っ! ああ! 行こう! 行くとも! ようし、そうと決まれば行先と宿の手配を……!」


 俺の提案に、すっかり気を良くした姉ちゃんは、一人盛り上がって興奮する……が。


「まーくんのバカ!」


 今度は環奈が拗ねてしまった……。


 すると。


「正宗くん、おはようございます!」

「ハルさん! おはようございます!」


 向こうから来たハルさんが、手を振りながらこちらへと駈け寄ってきた。


 はあ……ハルさん、綺麗だな……。


「ふふ、それで今日は三人で何を盛り上がっているんですか?」

「あ、はい、実は修学旅行の話をしてて」

「ああ、打ち上げの時にも話題になった……」

「! そうだ! ハル、今日はちょっと話があるから、昼休みにでも時間をくれ!」


 すると、何か思いついたのか、姉ちゃんがハルさんに詰め寄って声を掛ける。


「? い、いいですけど……」


 ハルさんはよく分からないといった表情で、おずおずと頷いた。


「ふふ……なんでこんな簡単なことに気づかなかったのだ! そうとなれば……さあ、ハル! 早く学校に行くぞ!」

「え? ええ!? ちょ、ちょっと!?」


 いつもは行きたくないとだだをこねる姉ちゃんが、珍しく自分からハルさんを催促するだなんて……良からぬこと考えてそう。


「そ、それじゃ正宗くん、環奈さん、失礼します!」

「「あ、はい……」」


 俺達は慌てて姉ちゃんを追いかけるハルさんを眺めながら、なぜか胸騒ぎを覚えた。


 ……絶対何かやらかす気だ。


 ◇


「よし、それじゃ班分けは以上だ」


 ホームルームで、修学旅行の班分けをしたんだけど、基本的には自由なので、俺達は予定通り同じ班になった。


 そして、杉山達の班には優希の名前があるんだけど……うん、やっぱり浮かない顔をしてるような……。


 ……まあ、気にしても仕方ないんだけど。


「ねえ、まーくん! 早速班行動の寺社巡りなんだけど……」


 環奈が地図を広げ、嬉しそうにお寺のマークのある場所に指を差す。


けど……アレ?


「なあなあ、これって京都にあるお寺とか全部入ってるの?」

「え? そんなことはないんじゃない? だって、京都だから小さいものとかも入れると、相当な数になるはずだし」


 はあ、なるほどねえ。


「ふーん……だったらさ、俺、『本能寺』に行ってみたい」

「『本能寺』って、織田信長の?」

「そう。ちょっと興味がある」

「へえー、いいよ。あ、だったらさ……そ、その……」


 なぜか環奈がもじもじしながら、上目遣いで俺を見る。なんで?


「す、『鈴虫寺』ってところに行ってみたい、なあ……」

「それって地図だとどの辺?」

「あ、地図には載ってないんだ……ちょっと遠いからだと思うんだけど……」


 うーん、遠いっつっても、大したことないだろ。

 さすがによっぽど遠かったら、環奈も行きたいなんて言わないだろうし。


「おう、もちろんいいぞ!」

「ホント! やった! 雫ー!」


 環奈は嬉しそうにしながら、なぜか山川のところに行って、二人でぴょんぴょんしてる……


「……なあ、俺達二人で勝手に決めてる感じになってるけど、オマエ等はいいの?」

「ん? 俺達も行きたい寺は決めてあるぞ? 俺は『清水寺』! 有名だから!」

「デュフフフ、拙者は『金閣寺』でござる」

「わわ、私は、その……『貴船神社』に……」

「あ、なんだ、みんなもう決めてあるのな」


 つまり、俺だけ決めてなかったってことか……。


「なあ堀口、お前達の班はどこ回るんだ?」

「んあ?」


 振り返って見ると、杉山が興味津々といった様子で聞いてきた。


「ええと、俺達は『清水寺』『金閣寺』『本能寺』『貴船神社』と、えーと……環奈ー、寺の名前なんだっけ?」

「『鈴虫寺』だよ」

「そう、それそれ」

「ということで、俺達はその五つの寺だな」

「ふーん……そっか」


 そう言うと、杉山はブツブツ言いながら、自分達の班に戻って行った。


 何だアイツ。


「……ま、いっか。それにしても、なんだって環奈と山川はその『鈴虫寺』ってところに行きたがるんだろうな」

「さあ……」

「デュフフ、そこは女心、というやつでござるよ」

「「はあ?」」


 長岡が意外なことを言ったので、俺と佐々木は思わずキョトンとしてしまった。


「それで、葉山はなんで『貴船神社』に?」

「よ、よくぞ聞いてくれました! 『貴船神社』は丑の刻参りの発祥の地という噂もあって、一度は行ってみたかったんです! そもそも、『貴船神社』は……!」


 おおう……どうやら葉山は大のオカルト好きのようだ。


「そ、そうなの? 私、オバケとかそういうの苦手なんだけど……」

「私も……」

「あ、で、ですが、むしろ『貴船神社』は縁結びの神社としてのほうが有名で……!」

「「なら行く!」」


 コイバナがオカルトに勝った瞬間だった。


 何はともあれ。


 来週は修学旅行だ!

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は今日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 本能寺と言えば本能寺会館 愛知の小学生は修学旅行で定番の宿でした 食事があんまりおいしくな……
[良い点] あれ、長岡は鈴虫寺のこと知ってたのかな…?つまり山川さんの気持ちをもう知って… うわぁこの感じ絶対優希さん修学旅行の班行動でばったり会っちゃうじゃん…
[一言] 鈴虫寺、ググっちゃったw もしや山川さん、いじめてるうちに?
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