第48話
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「おおおおお……壮観だなあ……」
キャンプファイヤーに火が灯され、薪が赤々と燃え盛る。
つーか熱っつい!
「や、俺達が着火に立ち会う必要ってなくね?」
「あはは……一応生徒会の儀式みたいなものだから……」
隣にいる環奈が苦笑する。
だけど、どうせ火をつけたりするのも先生達だったり業者の人だったりで、俺達のすることなんて、ただボーッと眺めてるだけだからなあ。
「それより佐山は?」
「睦月ちゃんは本部テントで放送準備をしてるよ。だけど睦月ちゃん怒ってたなー…「私だけフォークダンスに参加できないじゃねーですか!」って」
「わはは、生徒会で一番下っ端だから仕方ない。で、環奈は大丈夫なのか?」
俺は環奈と一緒に踊る約束してるし、環奈も上手く調整するんだろうけど、一応、な。
「もちろん! 私が本部テントに入るのは後半部分になるように調整したから!」
「そっか」
うん。さすが環奈、根回し済みか。
こういうところ、佐山はあざといのにヘタクソなんだろうな。ご愁傷様。
「じゃあ始まるまで、このまま一緒にいるか」
「うん……えへへ」
そうして、俺達はキャンプファイヤーを眺めながら、時間が来るのを待っていた。
◇
『それでは只今から後夜祭を開催します。まず初めに、校長先生から……』
佐山の放送により、後夜祭は無事スタートし、最初のセレモニー的なものがつつがなく進行していく。
『……ありがとうございました。では生徒のみなさん、時間一杯までお楽しみください』
グラウンドに聞いたことのあるフォークダンスの定番の音楽が流れ始めると、カップルがいる生徒達がキャンプファイヤーを中心に、輪になって踊り始めた。
俺は隣にいる環奈にスッと手を差し出すと。
「お嬢様、では参りましょうか」
「えへへ……はい」
環奈が俺の手を取ると、俺達もキャンプファイヤーのほうへと歩いて行く。
そして。
「よ、は、ほ!」
「あはは! まーくん変な掛け声!」
「笑うな」
踊り方がどうにもよく分からない俺は、周りの生徒達を真似しながら踊っているんだけど……うーむ、上手く踊れん。
「あは、なら私がまーくんをリードしてあげる!」
「わわ!」
俺は環奈に少し強引に引っ張られると、お互いの身体が密着した。
環奈の顔が……ち、近い……。
「えへへ、さあついて来て!」
そう言って、環奈が曲に合わせて俺をリードする。
俺は環奈の動きに必死について行こうとするんだけど……。
キャンプファイヤーの炎に照らされる環奈の顔が、そのダンスの動きも相まってすごく情熱的で、眩しくて……。
気がつけば、踊りよりも環奈の顔に釘付けになっていた。
「あはは! 楽しいね、まーくん!」
「お、おう」
そうして環奈の顔から眼が離せないまま、一曲目が終了した。
「うん、最後のほうはなかなか良かったよ」
「うん……」
「? まーくんどうしたの?」
「あ、い、いや……」
くそう、まさか踊る環奈に見惚れてただなんて、恥ずかしくて言えねーぞ!?
その時。
「やあ坂崎さん。良かったら、俺も一緒に踊ってくれない?」
現れたのは、杉山だった。
「へ? 私?」
環奈がキョトンとした表情で聞き返す。
「うん。去年は坂崎さん、生徒会の仕事で全く誘えなかったけど、今年は堀口とも踊ってたし、誘っても大丈夫かなって」
「え、えーと……」
杉山からのお誘いに、環奈が戸惑いの表情を見せる。
そして、不安の色を湛えた瞳で俺を見る。
だから。
「杉山悪い。今日は俺のわがままで、環奈には無理やり踊ってもらっただけだから、これから生徒会に戻らなきゃいけないんだ」
「え? そうなの?」
杉山が俺と環奈を交互に見る。
「な、環奈?」
「あ……う、うん」
すると杉山は深く息を吐き、肩を竦めた。
「……そっか、じゃあしょうがない。今年は諦めるよ」
「ああ、悪いな」
「じゃ、坂崎さん生徒会がんばって」
「う、うん」
そう言って、杉山は別の場所へと歩いて行った。
「ま、まーくん……」
「あん? ああ、勝手なこと言って悪かったな」
俺は環奈の頭をくしゃ、と撫でる。
「そ、それはいいんだけど……どうして……?」
「どうしてって、そりゃあ……」
そんなの……決まってる。
「……俺が、環奈と杉山が……じゃないな。環奈が他の奴と踊ってるの、なんかイヤだって思ったから、かな」
「っ!」
「ハハ、ホントは環奈ともっと踊りたかったんだけど、杉山にああ言った手前、今日はもう無理かな。だけど、お前の仕事の出番があるまでは、本部席でダベってるくらいはできるだろ?」
「! う、うん!」
そう言うと、環奈が満面の笑みを浮かべた。
「じゃ、行こうか」
「うん……ね、ねえ、その、昔みたいに……」
「ん?」
「昔みたいに手……つないでもいい?」
俯きながらおねだりをする環奈の顔は赤く染まっていた。
炎の光なのか、照れているのか、それ以外の別の感情なのか、それは分からない。
けど。
俺はその環奈の顔を、とても綺麗だと思った。
「! まーくん……」
「い、行こうぜ……」
「……うん」
俺はそんな気持ちを環奈に悟られまいと、少し強引に環奈の手をつかみ、本部席へと向かった。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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