第108話
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「おはよ! まーくん!」
「おう! おはよう!」
生徒会長選挙から一夜明け、今日も環奈が元気に俺を迎えにやって来た。
というか……昨日は大変だったなあ……。
あの後、杉山が『こんな選挙は不正だ! 無効だ!』とか騒ぎだして、慌てて先生に取り押さえられ、教頭先生と生徒指導室で長い長い話し合いが行われていたな。
んで、教室に戻ってきた時には、泣きそうな表情をしながら無言で席で突っ伏していたっけ。知らんけど。
そして俺達は、生徒会の新体制作りということでクラスみんなで環奈を手伝って、その後は祝勝会という名の打ち上げをステラで行ったわけだ。
いやあ、祝勝会での店長のムダなはしゃぎっぷりは目に余るものがあったなあ……。
特に店長は佐々木にやたらと絡んできて、葉山とまさかのバトル勃発になるっていう……まあ、佐々木的には葉山にヤキモチを焼いてもらえたんだから、店長の熱い抱擁くらいは許してやってほしい。
「ふふ……環奈、昨日も言ったが、あらためておめでとう!」
「あ! 羽弥さん! ありがとうございます!」
リビングから顔を覗かせた姉ちゃんが、環奈にお祝いの言葉を告げると、環奈も嬉しそうに頭を下げた。
「まあ、環奈も生徒会長になって、これからますます大変になるなあ」
「あはは! まーくんも、何を他人事みたいに言ってるの!」
肩を竦めた俺に、環奈が腹を抱えて笑いながら指摘する。
そう……結局俺は、生徒会の書記に任命されてしまったのだ。
いや、俺も生徒会役員になんてなる気はこれっぽっちもなかったんだけど、環奈と同じく副会長に任命された佐山から懇願され、しかもクラスのみんなからは『今さらだろ』なんてありがたくもない後押しもあったせいで、渋々引き受けることにしたのだ。
「えへへー、だけどみんなの言う通り、まーくんは結局私のことを手助けしてくれるから、一緒なんだよねー」
「うっさい! 甘えんな!」
などと悪態を吐いてみるけど……うん、確かに俺は、環奈が困っているところを見たら助けずにはいられない。
ただでさえ何でも頑張ってしまって、色々と抱え込みやすい環奈だ。そんなの、助けずにはいられないだろ?
「むむむ……! ま、正宗は、私が困った時も助けてくれるのだから、別に特別などではないのだからな! 勘違いするんじゃないぞ!」
はは、姉ちゃんがヤキモチ焼いてそんなこと言い出した……って。
「おっと、そろそろ行かないと遅れちまうぞ?」
「あ、ホントだ! 行こ! まーくん!」
「お、おい!?」
環奈が俺の腕を引っ張り、俺を家の外へと連れ出す。
「むむ! わ、私も一緒に行くぞ!」
ということで、今日も俺達は三人で学校と大学に一緒に登校する。
すると。
「ふふ……おはようございます!」
「ハルさん! おはようございます!」
ハルさんが、向こうからやって来て笑顔で手を振ってくれたので、俺も駆け寄って挨拶をした。
はあ……ハルさんの笑顔、メッチャ癒される……。
「む! まーくん鼻の下伸びてるよ!」
「むむ! そうだぞ!」
「ええー……」
俺を追いかけてやって来た環奈と姉ちゃんが、揃って頬をパンパンに膨らませております……。
「ふふ、それでお二人は、今日からお店には出られるんですか?」
「ええと、俺は行けるんですけど……」
「え、えへへ……生徒会長になったばかりで、まだ少しやることがあるんです……」
そう言って、環奈は指で頬を掻きながら苦笑する。
「え? ですが正宗くんも生徒会の役員になられたんですよね? それだったら正宗くんもバイトに出られないんじゃ……?」
「あー……実は、それが条件だったので……」
そう……俺は生徒会の書記を引き受ける条件として、ステラのバイトを最優先にさせてもらった。
もちろん生徒会が忙しくて、環奈が大変なことになるような場合には生徒会を最優先にはするけれど、それ以外の時はステラを選ぶ。
だって、ステラは……いや、違う。ハルさんのいるステラは、もう俺にとって大切な居場所なんだから。
「ふふ! でしたら、今日は本当に久しぶりに一緒にバイトができますね!」
そう言うと、ハルさんは嬉しそうに太陽のような笑顔を見せてくれた。
◇
「はよーす」
「おはよー!」
学校に着いた俺と環奈は、教室に入ると。
「デュ、デュフフフ……堀口氏、ちょっとよいでござるか?」
何故か長岡が駆け寄ってきて、俺に手招きをした。
「? どうした?」
「……実は、杉山氏が停学になったでござる」
「停学!?」
長岡の言葉に、俺は思わず驚きの声を上げる。
いや、確かに今回の生徒会長選挙で不正を働いたけど、俺達が先回りして投票用紙も学年ごとの色分けにしたから、うやむやになったモンだと思ってた。
「デュフフ……そこは教頭先生、初めから杉山氏の不正のことはお見通しだったようでござる」
長岡の話によると、俺達が投票用紙の件について提案しなかったら、いつでも杉山の企みを叩き潰す段取りをしていたらしい。
でも、俺達自身で企みを阻止するように動いていたから、陰から見守ることにしたとのことだ。
「……それで、最初から部活動のキャプテン達には顧問を通じて話をしており、仮に杉山氏の用意した投票用紙だったとしても、杉山氏が望む結果にはなっていないのでござるよ」
「そうかー……」
いやあ……さすがは姉ちゃんの恩師、抜かりないというかなんというか……。
「ただ」
「ん? ただ?」
「どうやら今回の件は、教頭先生にどこからか情報をリークした人物がいるようでござるぞ?」
そう言うと、長岡がニヤリ、と口の端を持ち上げた。
つか、その話を聞いて誰がリークしたのか、一発で分かった。
「はは……全く、過保護なんだからなあ……」
俺は、今頃大学で授業を受けているであろう、お節介で優しい姉ちゃんを思い浮かべ、口元を緩めた。
お読みいただき、ありがとうございました!
これにて生徒会長選挙編、無事終了でございます!
次回から、いよいよ最終章へと突入するのですが、その前にTwitterにてアンケートを実施します!
本作は三人のヒロインによるマルチエンド形式を採用することとしておりますが、それに当たり、どのヒロインのハピエンから読みたいか、お読みいただいている読者の皆様のご意見を採用させていただければと思います!
アンケートは本日12時頃から一週間開催いたしますので、ぜひぜひご協力の程、よろしくお願いいたします。
Twitterアカウント → @sammbon_narou
※最終章の開始につきましては、アンケート結果を踏まえてとなりますのでご了承くださいませ。
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