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第107話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「それでは皆さん、ただいまから投票用紙をお配りしますので、出口の投票箱に投票の上、教室にお戻りください!」

 

 環奈と杉山の演説が終わり、いよいよ投票。

 選挙管理委員会の委員が、各クラスごとに投票用紙を配り始め……「ちょ、ちょっと待て!?」……ようとしたところで、慌てた様子の杉山が思わず叫んだ。

 

「な、なんですか?」

「い、いや、投票に関しては、毎年出口付近にあらかじめ投票用紙を置いておいて、そこで記入して投票するやり方じゃないのか!?」

「ああ……今年に関しては、生徒達の投票の傾向を把握するとのことで、先生達から各学年ごとに(・・・・・・)色の違う投票用紙を使うことになったんですよ……」

 

 杉山の問い掛けに対し、選挙管理委員は気まずそうに答え、目を逸らした。

 多分、あの選挙管理委員が杉山の息がかかった奴なんだろう。

 

 だけど……残念だったな。

 オマエは入口にあらかじめ配布した投票用紙の色で、各部活の忠誠をはかろうとしたんだろうが、やり方を間違えたな。

 

「デュフフフ、上手くいったでござるな」

 

 俺の後ろにいる長岡が、ニヤリ、と口の端を持ち上げる。

 というか、意外とアッサリ対処できるもんだなあ……。

 

 今回の杉山の部活動の買収の話を聞いた時、長岡が提案した対策はこうだ。

 

 投票用紙の色分け自体は選挙管理委員会で認められてしまっているので、今さら変更できないのなら、それを逆手に取ればいい……つまり、投票用紙の色分けに、別の意味を(・・・・・)持たせる(・・・・)のだと。

 

 で、その色分けに関して、俺達は姉ちゃんを通じて教頭先生に提案を持ちかけた。

 今回の選挙に関して、どの学年の生徒が誰に投票するかという傾向を見れば、生徒達の学校に対して求めている者が何なのか、リサーチできるんじゃないか、と。

 

 元々、教頭先生は姉ちゃんの恩師で、この学校を良くしたいと考えている数少ない先生の一人。すぐに賛成してもらえたよ。

 で、教頭先生は他の先生達の意見も集約(というか根回し)をした上で、選挙管理委員会にこの話を持ちかけた。

 

 選挙管理委員会も、当初の提案のように何種類も投票用紙を用意するなんて面倒なことよりも、学年ごと……つまり三種類の用意だけで済むとなれば、そちらを選ぶに決まっている。

 

 ということで、杉山の息がかかった委員が反対しても、所詮は二人しかいないわけだから、先生……俺達の提案が、アッサリ了承されたというわけだ。

 

「デュフフ……まあ杉山氏は、もう少し知恵を働かせるべきでござったな。例えば、各部活ごとにそれが分かるマークを用意して、投票用紙の端に書かせる、とか」

「おお……た、確かに……」

「といっても、そんなことをしたらそんなことをしたで、『投票に不正がある』とイチャモンをつけるだけでござるが。なにせ、マークごとにどの部活に所属しているか確認させれば、不正は明らかでござるからな。あとは、SNSで拡散すれば……デュフフフフフフフ!」

 

 な、長岡恐るべし……!

 で、山川、なんでお前がそんなにドヤ顔なんだよ。気持ちは分かるけど。

 

 そして、企みを潰された杉山はというと。

 

「こ、こんなのおかしいだろ! これじゃ話が違う(・・・・)じゃないか!」

 

 あーあ……そんなことをデカイ声で話してたら、オマエ自身が不正してましたって言ってるようなモンなんだけどなあ……。

 

「ほう……その話、詳しく聞かせてもらいたいな」

「へ……?」

 

 はは、早速教頭先生に捕まってやんの。

 

「さあて……んじゃ、俺達も投票しに行こうぜ!」

「「「「「おー!」」」」」

 

 教頭先生に詰められて焦る杉山を尻目に、俺は相変わらずノリのいいクラスメイト達と一緒に投票に向かった。

 

 ◇

 

 ――キーンコーン。

 

 四時間目の授業が終わって昼休み。

 いよいよ、開票結果が発表される。

 

「環奈! 行こうぜ!」

「う、うん!」

 

 俺は環奈と一緒に教室を飛び出し、結果発表の場となる生徒会室の前へと急ぐ。

 

「わ、私、大丈夫かな……」

「はは! 何言ってんだ! 環奈が生徒会長にならなかったら、これから一年、会長不在になっちまうだろ!」

「あ……えへへ……」

 

 俺は環奈の背中をバシン、と叩いて励ますと、環奈が嬉しそうにはにかんだ。

 というか、俺は環奈以外の生徒会長なんか認める気はないし、そもそも環奈の勝ちをこれっぽっちも疑ってないからな。

 

「あ! ちょうど貼り出すところみたいだぞ!」

「うん」

 

 階段を上がって生徒会室のある廊下へと出ると、選挙管理委員達が発表の準備に取り掛かっていた。

 

「アレ? そういや杉山の奴は?」

 

 俺と環奈の後に続いてやって来た佐々木が、キョロキョロしながら周りを見回す。

 

「落ちるのが分かっていますから、恥ずかしくて来られないんじゃないでしょうか」

 

 おおう……葉山、意外と毒を吐くんだなあ……まあ、その通りだけど。

 

「ホラ! 早く!」

「デュ、デュフフ……山川氏、早いでござるよ……!」

 

 山川に急かされ、息も絶え絶えの長岡が遅れてやって来た。というか長岡……顔がすごいことになってる。

 

 すると……お、準備が整ったみたいだな。

 

「まーくん……いよいよ、だね……」

「ああ……」

 

 緊張しながら貼り出された、選挙結果の部分だけ目隠しされた模造紙を見つめる環奈。

 

 そして。

 

「あ……」

 

 伏せられていた部分が剥がされ、現れたのは。

 

 ――坂崎環奈 七百五十一票、杉山亮一 五十二票

 

 環奈の圧勝だった。

 

「まーくん!」

 

 瞳を潤ませて飛び込んできた環奈を抱きしめ、俺はその場で抱え上げると。

 

「おめでとう、環奈……いや、生徒会長!」

お読みいただき、ありがとうございました!


すいません!体調を崩して投稿が一日遅れてしまいました……。


次回の更新は、日曜日です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「入口に」は、いらないか入口で、あたりでしょうか。 [一言] 思惑が崩れた段階で、部活連はみんな離反したのかな。 そちらは証拠ないからお咎めなしになりそうなのも、なんか不公平かもしれな…
[一言] 不正を働こうとした杉山もだけど、それに加担した部活や委員は学校に居られなくなりそう
[良い点] 圧勝・・・これで一区切り。 よかった。次話から、いよいよイチャイチャ!?
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