第101話
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――キーンコーン。
放課後になり、クラスのみんなが帰り支度を始める……って、おっと忘れるところだった。
「オーイ、長岡ー」
「? なんでござるか?」
山川に絡まれながら帰り支度をしていた長岡に声をかけると……うおお、山川がメッチャ睨んでやがる……。
「え、えーと……実はちょっと頼みたいことがあるんだけど……」
「ふむ……頼み事とは?」
「ああ……ホラ、選挙管理委員会ってあるだろ? あれのメンバーについて、その交友関係を洗ってほしいんだ」
これは、昼休みに佐山から聞いた話を踏まえてなんだけど、やっぱり俺は、どこかで杉山と繋がってるんじゃないかって思ってる。
そうじゃないと、そんなアッサリと投票用紙の色分けなんてメンドクサイこと、選挙管理委員会が決めようだなんて思わないからな。
「も、もちろん、こんな大変なことは長岡一人じゃ厳しいだろうから、その……できれば山川には、長岡のサポートをしてやってほしいんだけど……」
長岡の背中越しに、射殺すような視線を送ってくる山川におずおずと提案してみる。
「! も、もちろん! だってコイツ、アタシが見張ってないと何しでかすか分かんないし!」
「山川氏、それはヒドイでござる!」
フフフ……あえて山川を長岡と二人で共同作業状態にすることで、キッチリフォローを入れたおかげで、山川の奴もアッサリ受け入れやがった。作戦通り。
「んじゃ、そういうことで。それで、どれくらいで分かりそうだ?」
「そうでござるな……多分、早ければ明日の放課後には堀口氏に報告できるでござるよ」
「おお! ソイツは助かる!」
というか長岡、マジで優秀だよな。
これで変態じゃなかったら、それなりに女子にモテそうでは……うん、その前に山川が近づく女子を蹴散らすか……。
「それじゃ、俺はもう行くから」
「デュフフ……任せるでござるよ!」
胸をドン、と叩く長岡に頼もしさを感じながら、俺はカバンを持って教室を出た。
だけど。
「うう……校舎裏に行きたくない……」
そうは言っても、これは佐山と約束したことだ。
『あ、そ、その……今日の放課後! 私にセンパイのお時間をください!』
……あんなに真剣な表情の佐山は初めてだった。
そして、あんな泣きそうな表情の佐山も。
だから。
「……ちゃんと佐山に、向き合わないと、な」
ポツリ、とそう呟くと、俺は佐山の待つ校舎裏へと向かった。
◇
「あ……センパイ……」
校舎裏に着くと、既に佐山は俺を待っていた。
鼻の頭が少し赤いところをみると、結構早くからここに来ていたんだろうか……。
「悪い、遅くなった」
「そ、そんなことないですよー……私も今来たばっかり……「嘘吐くなよ」」
俺は佐山の言葉を遮り、そう言って苦笑した。
「あ、あははー……やっぱりセンパイにはお見通しでしたかー……」
佐山も佐山で、苦笑しながら頭を掻く。
でも、その一つ一つの動作がぎこちなく、緊張からか表情にも硬さが窺えた。
「…………………………」
「…………………………」
そんな中、ふいに訪れる沈黙。
だけど。
「セ、センパイッ!」
それを破ったのは、佐山だった。
「お、おう……」
「わ、私……いつも環奈さんと一緒に気安く話をしていたセンパイが嫌いでした」
「おうふ……」
「その後も、何かにつけて環奈さんと一緒にいて、生徒会の仕事を押し付けようと画策する私の邪魔をするセンパイが、本当に嫌いでした」
お、俺は一体、何の告白をされてるんだ……?
「ホ、ホラ、私って可愛くて要領がいいから、昔からいつもチヤホヤされてたんです……」
おおう……それを自分で言うか? 普通……。
「だからあのクズ……元生徒会長の船田も、私には甘かったですし……ま、まあ、アイツの下心を利用したんですけどね……」
ええと……これは、佐山の懺悔を聞く感じでいいのかな……?
「でも」
佐山の表情が真剣なものに変わる。
「環奈さんと……センパイが、そんなダメな私を変えてくれました」
「…………………………」
「文化祭の準備で船田が逃げ出して、松木が見捨てる中、助けを求めた私に、二人が手を差し伸べてくれました」
はは……確かに、そんなことあったなあ……。
まだほんの二か月くらい前の出来事なのに、随分前のように感じる。
「私はバカだから、下心を利用して人を動かすような、そんなやり方ばっかりしてきました。でも、センパイはその行動で、思いやりの積み重ねで、人を動かしました。それって、誰にもできることじゃないです」
「はは……あれは俺じゃなくて、環奈の人徳ってヤツだよ」
佐山に手放しで褒められ、気恥ずかしくなった俺は、頬を掻きながらそう返した。
「そんなことありません。あの時、環奈さんが動いてくれたのだって、センパイが支えてくれるって……助けてくれるって分かってたからです。他のみなさんも、そんなセンパイのお節介を……優しさを知ってるから、助けてくれたんです」
「…………………………」
「そんなセンパイを見て、私は打ちのめされました。それと同時に、憧れてしまいました……私も、センパイみたいな人になりたいって」
「そっか……」
俺としては、あの三人に不誠実な真似をしてる自分を、最低野郎だと思ってるけどな……。
「それからです。私は、いつもセンパイを追うようになってました。いつもセンパイを考えるようになってました」
そう言うと、佐山はすう、と息を吸った。
そして。
「センパイ……私は、センパイのことが好きです」
お読みいただき、ありがとうございました!
いや、まさかHJ小説大賞2021前期で二次選考を通過したこともあり、嬉しくなって更新してしまいました!
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