86、それから
次が最終話となります。
ラストに向けて連投中です。
いつも読んでくださる皆様本当にありがとうございます。
最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
「それで、お前は結婚したばかりでまた何を始めようっていうんだ?」
オベリオンが新婚の我が家のダイニングで天丼を食べながら聞いた。
「しかしこれ、サクサクして美味しいな。このエビの天ぷらも身がプリプリで最高だ」
今朝、わざわざガブリエルに港町のトリスタンにいって仕入れてもらった魚介類を天丼にしたのだ。
なぜならオベリオンにお願いしたいことがあるからだ。
それはともかく。
そう、私は結婚したのだ。
相手はもちろんシエルしかいない。
あれから半年、なぜか気がついたら結婚の承諾をしていた。
恋愛初心者の私は、外堀を埋められたら即落ちだった。
もちろん、無理に結婚を承諾させられたわけではない。
私がそう望んだんだが。
なんか悔しい気持ちも少しあるような。
結婚を承諾してからの周りの行動は早かった。
まずバレンシア商会のマーガレットさんが、誰から連絡を受けたのかルーシーと共にドレスの打ち合わせにやってきた。
ドレスが出来上がる3ヶ月後には、モルドールの神殿が押さえられ、オベリオンが新居の設計図を持ってやってきた。
皆の気持ちは嬉しい。
私達の結婚を楽しみにしてくれていたと言われればどんどん準備が進んでいくのもありがたいことだ。
結婚式にはランベールからクロエも参列してくれた。
「ソフィア!おめでとう。本当に綺麗だわ」
そう言ってとても喜んでくれた。
いつも飄々としている父はバージンロードを歩き始める前に私に言った。
「結婚しても、ソフィアは大切な私達の娘であることは変わらない。何が困ったことがあればいつでも私達を頼るんだよ」
それを聞いて、うっかり入場前に泣きそうになってしまった。
大聖堂に入ると女神様が大泣きで喜んでいた。
すでに手に持っているハンカチはビショビショだ。
「ソフィア!おめでとう!本当におめでとう」
威厳のかけらもないその姿を、ほとんどの人が見えていないのが幸いだ。
ガブリエルとアヴァリスももちろん最前列で家族と一緒に参列してくれている。
妖精達が喜び花びらが舞う中、式は滞りなく終わった。
それがついこの間のこと。
今は妖精達に頼んで、ウチに来てもらったオベリオンに天丼を振る舞っている。
「はい、お茶どうぞ」
天丼には日本茶でしょ。
コーラルで作ってもらっているお茶は抹茶のスイーツにも使っている。
「実は今度ドーナツのお店をやろうと思って」
コトリとドーナツが2つ乗った皿をオベリオンの前に出す。
プレーンのドーナツを蜂蜜たっぷりのグレーズでコーティングしたドーナツと、シナモンシュガーをまぶしたドーナツだ。
「なんだこれ?食べていいのか?」
「もちろんだよ。食べて感想を聞かせて」
ドーナツは発酵した生地を使ったふわふわタイプだ。
「なんだこれ?ふわふわのもちもちで初めての食感だ。うまい!」
あっという間にオベリオンはドーナツを完食した。
「もうない…」
オベリオンが空の皿を見て悲しそうに言った。
読んでいただきましてありがとうございました。
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