73、夜会②
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「ソフィア、君は踊れるのかい?」
王様への挨拶が終わるとラリーさんが私に訊ねた。
「はい、一応は」
自慢じゃないが、父からどこに行っても不自由しない程度には色々教育されている。
父曰く、どこに商売のチャンスが転がっているかわからないからいつでも対応できるようにしておくとのことだ。
「では、よければ踊らないか」
「ええ、喜んで」
私はラリーさんの手をとってダンスに向かった。
「驚いたな!ダンスも上手いとは」
私を上手にリードしながらラリーさんが微笑んだ。
「ラリーさんのリードがお上手なんですよ。ダンスなんてそんなにする機会もありませんし」
「とてもそんなふうには見えないな。とても慣れているように見える」
こう見えて、運動神経はなかなかいい方だ。
体も丈夫で疲れないし。
「あ、クロエも侯爵様と踊っていますね。とってもお似合いです」
クロエはとっても幸せそうに踊っている。
「ああ、マンセル侯爵との縁組がまとまって本当に良かった。しつこい男がいたんだが、諦めてくれたようだ」
クロエが言ってた小太りの女癖が悪いというやつか。
「少しクロエから聞きました。良くない噂の方から申し込みがあったと」
「あんな奴に大事な妹をやる気は全くないがな」
妹想いのいいお兄さんだ。
「あ、クロエが休憩するみたいですね。行きましょうか」
いつまでもラリーさんを独占するのも申し訳ない。
クロエのところに向かうと、何やら小柄な男性と言い合ってるようだ。
「ちっ、アイツまた性懲りも無くクロエに絡んで」
ラリーさんは私にここにいるように言うと、急ぎ足でクロエのところに向かった。
「モリーノ伯爵。妹に何か御用ですか?」
ラリーさんの声に、男は彼の方を振り向いた。
なるほど、あの男がクロエが言ってたモリーノ伯爵か。
「これはこれは。次期伯爵様じゃありませんか?怖い顔をしてどうかしたのですか?」
うーん、見るからに嫌なタイプ。
あんな奴と結婚するなんて絶対にムリだ。
「もう妹に関わらないでくださるようお願いしたはずですが」
相手はラリーさんの迫力ある顔にも怯む様子なく飄々とした様子で言った。
「そんなに怖い顔しないでくださいよ。私はただ婚約のお祝いを言っただけですよ」
「それはありがとうございます。ではもう2度と妹に話しかけないでいただきたい」
毅然とした態度だ。
「ええ、わかってますよ。それではお幸せに」
そう言って小太りのモリーノ伯爵は一人で会場を出て行った。
途中、私の近くを通る時に彼の呟きが聞こえて来た。
「はっ、幸せそうにしてられるのも今のうちだ」
なんだ?嫌な予感がする。
「クロエ、少し休むかい?」
「ええ、少しレストルームに行って来ますね」
少しふらつくクロエが心配だ。
「私が一緒に行きます」
クロエに駆け寄って私はそう言った。
「ありがとう。そうしてくれるかい」
「ソフィア頼む」
私はこくりと頷くと、クロエの方を支えてレストルームに向かった。
「大丈夫?クロエ?」
「ええ、少し休めば平気」
トイレの奥の、パウダールームのような部屋でクロエを座らせると私は心配になって訊ねた。
「アイツが例の伯爵?」
「そうなの。もう絡んでこないと思ったのに、ほんと嫌になっちゃう」
「しつこそうな奴だね」
クロエをこんなに悩ませるなんて、いっそ私がコテンパンにしてやろうか。
でもクロエの立場が悪くなると困るしな。
「気にしててもしょうがないわね。もう話しかけないって言ってたのを信じるしかないわ」
「そうそう、アイツと結婚しなくて良かったと思おうよ。何かやってくるようなら、私やガブリエルやアヴァリスが2度と話しかけられないようにしちゃうかも」
クロエはクスっと笑った。
「ソフィアなら本当にやりそうだわ」
結構本気です。
「なんか元気でてきたわ。侯爵様とお兄様が心配しているだろうし、そろそろ戻りましょうか」
「うん、でも無理しちゃダメだよ」
「ええ、ありがとう」
クロエが立ち上がったその時、ぐにゃりと空間がゆがんで、この前雑貨屋で会った美少女と彼女にそっくりな少年が現れた。
読んでいただきましてありがとうございました。
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