56、カルトス①
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「もちろん営業してますよ」
奥から食堂を切り盛りしている女将さんが出てきた。
「ソフィアちゃん、お久しぶり」
「お久しぶりです、女将さん。変な事言ってごめんなさい。いつもなら賑わってる時間なのに、お客さんがいないから心配になって」
一体この静けさはどういう事だ。
あ、よく見たら柱の影に一人だけお客さんいた。
「それがね…ついこのあいだ、魔物の森で魔物の大量の死骸が見つかったとかで。予約のお客さんがほとんどキャンセルになっちゃって」
やばい!こんなところにも影響が出るなんて。
「それは大変でしたね。魔物の森の事なら、すでにギルドが解決してくれたそうですよ」
私は冷や汗をかきながら女将さんに言った。
「え?そうなの?もう安全なのかしら」
「ええ、もう安全らしいですよ」
私がそういうと、女将さんは安心したようだ。
「良かった〜。この街にまで魔物が押し寄せたらどうしようかと思ってたの。それじゃあすぐにお客様も帰ってくるわね」
「ええ、もちろんです。また忙しくなりますよ」
ちょっと笑顔が引き攣るがしょうがない。
「良かった、良かった。それじゃあソフィアちゃん達はなにを食べる?腕によりをかけて作るわね。そういえば、今日はガブさんはいないの?」
なんとか乗り切ったか。
「ガブリエルは後からここに来ますよ」
そこでアヴァリスが待ちきれずオーダーした。
「俺は肉を食べるぞ!ステーキだ!」
「了解よ。そっちのイケメンさんはステーキね。ソフィアちゃんは?」
「私は鶏肉のシチューでお願いします」
ここの鶏肉のシチューは絶品で、この街にやってきたら必ず食べたい味だ。
「すぐ用意するわね。待っててね」
それにしてもここまで影響が出ているとは。
ガブリエルは父に怒られていないだろうか。
女将さんが厨房に入ってまもなく、ガブリエルがやってきた。
「ガブさん、いらっしゃい」
「お久しぶりです、女将。今日は営業じゃなかったのですか?」
ガブリエルも同じ疑問を抱いたようだ。
「ガブリエル!ちょっと!」
テーブルからガブリエルを呼ぶ。
「あ、ソフィア様、お待たせしました。もう注文は済まされましたか?」
「そんなことより。あ、注文は済ませたけど。さっき女将さんに聞いたんだけど、ここがこんなにガラガラなのは、魔物の森で死骸が大量に見つかった話が広がって、皆キャンセルになったんだって」
私はヒソヒソとガブリエルに、経緯をつたえた。
「なんと!我々のせいでロイド商会にご迷惑を」
そうだ、ここもロイド商会のやってる宿に食堂だ。
商会に損失を与えてしまった…。
商人としてあるまじき行為だ。
「せめて沢山注文しようか…」
「ええ、そうしましょう」
ガブリエルが女将さんを呼んだ。
「女将、ステーキ2皿と鶏肉のシチュー、ミートボールスパゲティにポテトフライお願いします」
「はいよ、沢山頼んでくれて嬉しいよ」
アヴァリスが負けじと頼み出す。
「俺も、ステーキ一枚追加。ポテトフライと鶏肉のシチューも」
そんなに食べられるんだろうな。
そして私もデザートを追加した。
「ふう、食った食った」
私達は夕飯を終えて、ガブリエルの話を聞くためと腹ごなしも兼ねて、街を散歩する事にした。
「で、皆は変わらない?」
「ええ、変わりありませんよ。ただ、魔の森の件は気をつけるようにと釘を刺されてしまいました」
はは、やっぱり知っていたか。
「魔物の素材はお金になるそうで、次からきっちり全部持ち帰るようにと」
え?そっち?
さすが我が父、ロイド商会の会長だ。
「そっか〜、持ち帰るんだったか。次はちゃんと持ち帰ろうぜ」
アヴァリスが言うけど次なんてないから。
「それにしても街も静かだね。こんなに静かな街っていうのもレアだね」
すると突然ガブリエルが私に近づいて耳元で話し出した。
「ソフィア様、宿の食堂にいた女がつけてきていますが、どうしますか?」
「アイツあれで尾行してるつもりかよ。どうする?殺す?」
アヴァリスも耳元で物騒なことを呟いてくる。
「殺しちゃダメだからね。次の角で待ち構えて何の用事か聞こう」
私達は次の角を曲がったところで気配を消した。
読んでいただきましてありがとうございました。
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