49、旅立ちの前に②
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「申し訳ござませんが、このレストランでは貴族の優遇制度はありません。お食事でしたら、列の最後尾に並んでいただくか、貴族の優遇制度がある別のお店に行っていただけませんか?」
この国にそんな制度がある店があるか知らないが。
私はレミーさんの前に出て言った。
「ん?何だお前は?」
子爵の馬鹿息子は私を見て眉をひそめた。
「私がこの店のオーナーです」
「何だと?こんな娘がオーナーだと!話にならんな。貴族を怒らせるとどうなるか知っているのか」
「ねーえ、ご飯まだ?お腹すいた〜」
連れの女性もゴネ始めた。
ウチの店で揉め事にしたくないが、貴族だからといって優先したくない。
うーん、早く帰ってくれないかな。
シエルが私の前に出る。
「何だ、お前は?」
「シエル、揉め事を大きくしたくないから」
私が言うとシエルは無言で馬鹿息子を睨みつける。
あ!そうだ。
アヴァリスならガブリエルが使った精神魔法を使えるかも。
「アヴァリス!」
私が短く呼ぶと、
「なーに?呼んだ?」
とすぐにアヴァリスが私の後ろに現れた。
シエルと馬鹿息子が睨み合ってる間に少し距離を取り、説明する。
「こんなやつ殺しちゃえば手っ取り早いのに。まあ、ガブリエルにできるんだから俺にもできるけど」
「やった!ありがとうアヴァリス!さすが頼りになる」
「ふふ。そうでしょ。じゃあやろうかな」
ガッ!
アヴァリスは馬鹿息子と連れの女性の頭をそれぞれ片手ずつ鷲掴みにすると魔法を発動し始めた。
「よし、完了」
アヴァリスが2人から手を離す。
「あれ?俺はここで何を…」
馬鹿息子がキョロキョロしている。
「あれ?ご飯食べに行くって言ってて、それからどうしたっけ?」
連れの女性もあたりを見回している。
そして馬鹿息子は私を見た。
「ヒッ!」
え?何?
急に馬鹿息子の顔が青ざめて、震え出した。
「行くぞ!とりあえず、ここを離れよう」
馬鹿息子は連れの女性の手を引いて、早足で去っていった。
何か腑に落ちないが、とりあえず良かった。
「皆様お騒がせしました。ただいま開店いたします」
レミーさんが他のお客さんを誘導する。
「ねえ、アヴァリス。アイツ、なんかちょっと様子が変だったけど何したの?」
「忘れさせるついでに、ソフィアを見ると恐怖を覚えるようにしてやった。これで、もしまた会っても面倒にならないだろ」
それであの怯えた表情か。
ありがたいけど、他の人に見られたらまるで私が馬鹿息子に何か恐ろしいことをしたみたいにみえるな。
まあ、2度と会うこともないだろうが。
「シエル、お待たせ〜。さあ、入ろうか」
そしてシエルに向かって声をかけると、シエルは店の脇にしゃがみ込んで、見るからに落ち込んでいた。
「俺は…役立たずだ」
「まあ、そうだな」
空気の読めないアヴァリスに膝を食らわせる。
「あー、シエル。今回は相手が悪かったけど、シエルはいつも頼りになってるよ」
「でも、ソフィアを守れなかった…」
「まあ、俺が居るしいいんじゃない?」
アヴァリスがまた余計な事を言う。
「大丈夫、シエルには、シエルにしかできない事があるよ」
シエルがチラッと私を見た。
「例えば?」
ちょっと、めんどくさいな。
「あ?ほら、いつも私の話を聞いてくれるし。魔物の素材も入手してくれるし」
シエルが立ち上がった。
「そんな事くらい。いつでもするよ」
よし、復活してきた。
「それがすごく嬉しいんだよ」
「そうか…。それならいいんだ。これからも俺にできる事があれば何でも言ってくれ」
「うん、その時は頼らせてもらうね」
ふーう、何とかなった。
「じゃあ、店に入ろうか?アヴァリスも何か食べてく?」
アヴァリスに聞くと、
「俺、女待たせてるんだよね。だから行くわ。でもまた何かあったらすぐ来るから、呼べよな」
デート!!
「え?デートの途中だったのにごめん」
「デートじゃないけど。それにソフィアより大事なもんなんてないし。まあ、いいや。じゃ」
と転移して行った。
読んでいただきましてありがとうございました。
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