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46、リボンを持って

誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。

誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。

今日はバレンシア商会にドレスの仮縫いに行く日だ。


朝、一緒に朝食をとったルーシーがリボンが出来上がったと教えてくれた。


「ありがとう。でも、すごく早く出来上がったね、ちゃんと休んでる?」


ノーモア、ブラック企業。


「うん、ちゃんと休んでるし、睡眠も食事も取ってるよ」


それなら本当に仕事が早いな。


「じゃあ朝食後に見せてもらっていいかな」


私が言うと、


「もちろん。早く見て欲しい」


とルーシーも自信ありげだ。


ブローチにする宝石も見つかったし、プレゼントは順調だ。


朝食後、ルーシーの部屋に出来上がったリボンを見に行った。


「どうかな?自分ではなかなか上手くできたと思うんだけど」


はにかみながらリボンを渡されたが、その刺繍は尋常じゃないほど精密だ。


向こうが見えるほど薄く透ける素材に、細かな花と葉が絡み合うようにデザインされた刺繍が一面に入っている。


リボンの縁取りも細かなデザインだ。


「すごい!なんて繊細で素敵なの。素晴らしいよ!」


こんなすごい刺繍を見たのは初めてだ。


クロエもびっくりするに違いない。


「気に入ってもらえたなら良かった」


「気に入ったなんてもんじゃないよ」


今まで見た刺繍の中で一番すごい。


「料金は後で払うとして、今から少し一緒に来て欲しいんだけどいいかな?」


「へ?別にいいけど、どこに」


私はルーシーの手を引っ張ってガブリエルとアヴァリスを呼んだ。


「2人とも準備はいい?今から行くよ」


ガブリエルとアヴァリスがドアから出てくる。


「予定時間より少し早いですがどうしました?」


「俺はいつでも行けるけど」


ルーシーの手を取ったままルーシーにも訊ねる。


「このまま出かけても大丈夫?」


「うん、別にいいけど…一体何処に?」


では出発だ。


「とりあえず行けばわかるから」


私ははやる気持ちを抑えきれず、そのままルーシーの手を引いて外に出て行った。


「ここは、もしかして」


ルーシーが立ち止まったそこは、ロイド商会の宿からも程近いバレンシア商会だ。


「ソフィア様、いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」


顔馴染みのスタッフが奥の待合室に案内してくれる。


「え?私も入っちゃっていいの?」


ルーシーは周りをキョロキョロしている。


すぐにウィルさんに連絡がいったのだろう。


私達が待合室に入るとすぐウィルさんがやって来た。


「ソフィアさん、いらっしゃいませ。約束のお時間には少し早いですが、準備はできてますのでどうぞ」


私はウィルさんに向かってルーシーの作ったリボンを見せた。


「ウィルさん!これ見てください。私の友達のこの子が刺繍したんです。2日で」


ウィルさんはリボンを一目見るなり、言った。


「このリボン少しお借りしていいでしょうか。すぐお返ししますので」


「はい、お願いします」


私が大きく頷くと、ウィルさんはリボン片手に部屋を出て行った。


「何がどうなってるの?ここはやっぱりバレンシア商会よね。私が来て良かったの?」


「待ってて、すぐくると思うから」


私が言うと、遠くからすごい速さでコツコツとヒールの音が近づいてくる。


「来た!」


「え?何が来たの?」


ルーシーが怯えるのをガブリエルが優しくなだめた。


「大丈夫ですよ。ソフィア様は悪いようには致しません」


バーンと扉が開いて、マーガレットさんが現れた。


「このリボンに刺繍をしたのはあなた?」


リボンを持った手でルーシーさんに近寄る。


「は、はい。そうです」


誰?と言うような少し怯えた目で私を見つめるルーシー。


「この人はバレンシア商会の会長、マーガレットさんだよ」


「この人があの…」


マーガレットさんはリボンを持ったままルーシーの両手を包み込んだ。


「あなた!何処の工房に所属しているの?」


ルーシーは驚きながら答えた。


「私は前の店では雑用しかしていなくて…それも一昨日辞めました。2日前からはソフィアのところでお世話になっています」


「なんてこと!」


マーガレットさんは大袈裟に仰け反った。


「ソフィアちゃんには悪いけど、うちで働いてもらえないかしら?優秀なお針子を探していたのよ」


「ルーシーさえ良ければ、私は全然いいよ。むしろマーガレットさんにルーシーの良い働き口を紹介してもらえないか相談するつもりだったし」


「なんて幸運なの!ルーシー!是非是非うちでお針子として働いてくれないかしら。給料もうちはこの街ではいい方なのよ」


「えっ?私がバレンシア商会でお針子として働かせてもらえるんですか?」


「もちろんよ。こちらからお願いしてるんだもの。そうと決まれば詳しい話はウィルにさせるわ」


良かった良かった。


「ルーシーさん、こちらで雇用条件について詳しくお話しします。どうぞ」


ルーシーは部屋を出る時、私の方を振り向いた。


「バレンシア商会は大丈夫。安心して働けるよ」


私が言うと。


「ソフィア、出会ってくれて本当にありがとう」


とお礼を言われてしまった。


本当にいい子だ。



読んでいただきましてありがとうございました。

引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。

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