41、お針子④
今日はいつもより早めの投稿です。
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
「着いたわ…ここよ」
思ったよりなかなか立派なお店じゃないか。
ショーウィンドウに飾られた洋服は派手なものが多くて全く好みではないが。
ここはお店の奥に工房があり、つながっているらしい。
「本当に辞めていいんだね?」
もう一度ルーシーの意思を確認する。
「ええ。ここにいたって家政婦がわりに使われるだけだもの」
「よく今まで我慢したね。偉かったね」
私の言葉にルーシーは一瞬でも目を潤ませた。
「もう我慢は終わりよ。これからは自分でお針子としての道を切り開いていくわ」
「そうそう!それがいい!」
「ソフィア様、そのくらいに…」
調子に乗ってガブリエルにたしなめられた。
「じゃあ、行ってくるね。少し待っててくれる?」
そう言うと、ルーシーは決意に満ちた目で工房兼店に入って行った。
そして数分。
「…気になる…」
「どうしたんだ?」
アヴァリスが私を覗き込んだ。
「待ってるだけじゃ、中でどうなってるのかわからないよ。でも最初から乗り込んでいくのも違う気がする」
「風魔法なら話は聞けますが、コッソリと言うわけにはいきませんね」
私やガブリエルの風魔法なら風に乗せて声を拾うことができるが、室内を結構な風がずっと吹いているのは不自然だろう。
「うーん、何かいい方法はないものか」
「だったら僕らが声を伝えようか?」
え?今誰の声?
「ここにいるよ、僕だよ」
「あ、風精霊」
いつのまにか私の肩のあたりに風精霊が居たらしい。
精霊わふわふわ飛んで私の目の前にやってきた。
「この中の声を伝えればいいんでしょ?中にいる僕の仲間にそのまま声を繋いでもらおうか?」
「ええ。お願いできる?」
「もちろん!祝福の子の頼みだもん。まかせて!」
そして急にスピーカーがオンになったように中の声が聞こえ出した。
「何ですって!辞める?」
「誰が今まで面倒見てやったと思ってんのよ!」
想像以上の厳しいやり取りにびっくりだ。
「何なの?騒々しいわね」
「あ!店長。コイツが生意気に辞めたいとか言い出して…」
どうやら店長がやってきたらしい。
上手くこの場を納めてくれればいいが。
「辞めるですって?ルーシー。アンタ本気で言ってんの?」
ルーシーは震えながらも大きな声で言った。
「はい。今日限りで辞めます。今までお世話になりました」
「はあ?何言ってんの?馬鹿なの?」
え?なんだコイツ…。
「アンタなんか辞めたってどこも雇ってくれるわけないでしょ。紹介状もなくここでお針子として雇ってくれるところなんてないわよ。わかったら早く夕食を作りなさい。お腹がすいたわ」
「でも…私辞めたいんです」
頑張れルーシー。
「聞こえなかったの?早く夕飯作れって言ってんだよ!」
もう我慢できない!
「行くよ」
ガブリエルとアヴァリスも同じ思いか、2人も頷いた。
風精霊にお礼を言って、私達は店の中の工房に乗り込んだ。
「ちょっと待った!」
バンッ!
ドアを開けて私達は中に入った。
「ソフィア…」
「何なのアンタ達?勝手に入ってきて」
店長が私達を見て驚く。
「ルーシーの友人のソフィアです。あなた方のルーシーの扱いは目に余るものがありますので、ルーシーは今日限りでここを辞めます」
「何でアンタにそんなことを言う権利があるのよ」
確かに最もだ。
「本人が辞めたいと言っているのに引き止める権利はないですよね?さあ、今日までのお給料を精算してください」
「はあ?見習いに給料なんて出さないわよ。逆に今まで養ってたんだから感謝して欲しいくらいだわ」
なに?今まで無給で1年もこき使ってたのか。
「それはひどいですね。ではルーシーは今から出ていきます。ルーシー、荷物をまとめてきて」
「うん、ソフィア。ありがとう」
ルーシーはバタバタと自室に向かった。
「言っとくけどあの子に紹介状なんて出さないから。お針子はこのバーリでは紹介状なしでは雇ってくれるところはないわよ」
「ご心配なく。紹介状なら私が出しますから」
「私ってアンタ何言って……。ま、まさか!そのハニーブロンドの髪とブルーの目、美形の従者ってもしかして…」
「私はロイド商会会長の娘、ソフィア=ロイドです」
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
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