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38、お針子①

今日はいつもより気持ち早めの時間の投稿です。

誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。

誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。

一瞬踏みとどまったかに見えたが、私は見事に川に背中から落ちた。


「ソフィア様!今お助けします!」


「ソフィア!今行くぞ!」


私に続いてガブリエルとアヴァリスも川に飛び込んだ。


が、2人が飛び込んだと同時に私は川の中で立ち上がった。


「あれ?意外に浅い」


川は胸の下ほどあるものの流れも穏やかで溺れるほどでは無い。


続いて2人も立ち上がるが、背の高い2人には川は腰までの深さしか無い。


「…」


「浅いな」


川の中にいる私達3人に遠慮がちな声がかけられる。


「あのー、大丈夫ですか?」


そうだ!彼女は無事か?


「あなたこそ大丈夫ですか?命を粗末にしてはいけませんよって…浅いですね」


「えっ、私が川に飛び込むと思ってたんですか?そんなことするはず無いじゃないですか」


女性は慌てて否定した。


「じゃあ、なんで靴を揃えて、思い詰めた顔を…」


私が呟くが、彼女は川の中で立っている私に手を伸ばした。


「とにかく話は後です。そのままじゃ風邪をひいてしまいますよ。上がってください」


この丈夫な体は風邪を引くことはないだろうなあと思いながら彼女の手を借りて川べりに上がった。


「ありがとう」


男性2人はもちろん自力で上がっていた。


「びしょ濡れですね。良ければとりあえずウチにきてください。と、言っても仕事場の寮なのでお風呂とかないんですが…」


「ご心配には及びませんよ」


ガブリエルはそう言うと、自身と私を風魔法で乾かした。


アヴァリスは自分で出来るだろうと言うことだ。


もちろん彼も風魔法ですぐ乾く。


「えっ、今の魔法ですか。すごいですね。はあ、私も魔法が使えたらな」


川に飛び込まないにしても、何か理由があったのだろう。


「靴を脱いでたってことは、川に入るつもりだったの?」


私が聞くと、彼女は頷いた。


「ええ。実は川に落とし物というか…大事なものを落とされてしまって」


「何か理由がありそうね。良かったら力になれないかな?話してくれない?」


私が、話を促すと彼女は話し出した。


視界の端でガブリエルとアヴァリスがヒソヒソしてるのが見えた。


「これってしばらくメシ食えないってこと?」


「ソフィア様の優しさに水をさしてはいけません。あっちでおやつをあげますから静かにしててください」


そう、ちょっとあっちに行ってて。


「初めて会った人にする話ではないかもしれないけど、これも何かの縁ですかね…」


ルーシーと名乗った彼女によると、彼女の職場の先輩達によって、彼女の大切なブローチが川に捨てられてしまったということだ。


ルーシーが故郷の村を出てバーリに働きに行く時、母親が自分が嫁入りの時に持ってきた大切なブローチを彼女に付けてくれた物だ。


ルーシーは故郷の村では縫い物が上手だと評判で、母親が行商人に頼んでバーリの洋服店を働き口に探してくれた。


しかし張り切ってバーリに来たものの、1年も掃除や洗濯、料理などの雑用ばかりで一向に本来のお針子の仕事をさせてもらえず、ついに先輩お針子に訴えたところ大事なブローチを川に捨てられたそうだ。


「こんな時代遅れなブローチつけてるやつにお針子が務まるわけないでしょ」


「もう捨てちゃいなさいよ!できないなら私が代わりに捨ててあげる」


ボチャンと音がした時にはもう大切なブローチは川の中だった。


「ひどい!お母さんがくれた大切な物なのに!」


そう訴えたが、彼女達は反省する様子もない。


「これでちょっとはマシになったんじゃない?」


「あんたがお針子なんて10年早いのよ」


彼女達はキャハハと笑って帰っていったそうだ…。


じっとルーシーの目を見るが嘘は言っていない。


マジでひどいな!


どこの世界にもそんなやついるんだな!


許せん!



読んでいただきましてありがとうございました。

引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。

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