30、ルチア
昨日は投稿できず、楽しみにしていた方すいませんでした。誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
その美しい少女の声が響き渡ると、黒い影達はかき消え、冒険者達は皆意識を失ってバタバタと倒れていった。
「え?皆大丈夫なの?」
「安心せえ。意識を失っておるだけじゃ」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「ソフィア!」
「ソフィア様!」
シエルとガブリエルは私を庇うように前に立った。
「何だ?何が起こってるんだ?」
さすがギルマス、冒険者で意識を保っていられたのはシエルの他には彼だけだ。
「どうなってんだ、一体…」
離れた所で待機していたシドさんが騒ぎを聞きつけてやってきた。
青白い顔の青年は人形のように動きを止めてしまった。
「ガリオスよ。お前がそこにいることを妾が気づかないとでも思っておるのか?さっさと姿を現せ」
「すると何も無いと思われた空間から黒のタキシードのような服を着た青年が現れた。
「ルチア様…何故こちらに…」
「貴様こそ妾の許可なく何故ここにいる」
ルチアと呼ばれた少女は空中からガリオスと言う男を見下ろした。
「私は、ルチア様の為に眷属を増やして勢力を拡大しようかと…」
ガリオスはモジモジと答えた。
「たわけっ!!妾はそんなもの望んだ覚えはないわ。現状が不満なら、さっさと妾の元を離れるがよい。こんな醜悪な物まで作りおって」
ルチアが指を鳴らすと、私に襲いかかった青白い顔の青年は青い炎に包まれて灰になった。
「そんなっ!そんなことあんまりです。どうかこれからもお側に置いてください」
ルチアは冷たい目でガリオスを見ると、言い放った。
「二度はないぞ。覚えておけ」
そして美しいルビーの瞳で私をみた。
「そなたか。なるほど、厄災がこれほど執着するのも頷ける…」
厄災?
「人の子よ。妾の眷属であるガリオスが迷惑をかけたようじゃな。これはせめてもの詫びじゃ」
そう言うとルチアは手のひらの上に赤い宝石を出した。
「え?私はそんな…何もなかったですし」
と、戸惑うと。
「受け取ってください。バンパイアクイーンの好意です」
とガブリエルが言ったので、ありがたく受け取った。
バンパイアクイーンという言葉は聞き流しておこう。
「妾の眷属はこれから二度とこの街に迷惑をかけぬと誓おう。厄災よ。これでいいのじゃろ?」
ルチアは今度は別の方に向かって話しかけた。
「ちょっと!俺に話しかけないでよ!自分のタイミングでいこうと思ってたのに!」
「うるさい!妾の用は済んだ。もう帰る」
ルチアとガイオスが消え、そこに現れたのは、忘れもしない幼い頃攫われた魔人だった。
「あ、あ、あの時の!」
私は魔人に向かって指を差した。
「やっほー、久しぶり!大きくなって美人になったね。元気?」
魔人は笑顔で片手をあげて軽いノリで挨拶をしてくる。
コイツ…私がどれだけあの時の恐怖を引きずってきたか。
なんかこの魔人の態度を見たら腹が立ってきた。
「やっほーじゃないでしょ。何しに来たの?また私を攫おうったって絶対思い通りになんてさせないんだから!」
シエルがすかさず私と魔人の間に入る。
すると魔人はチラチラとガブリエルを見て何か言いたげにした。
「何なの?ガブリエルがどうかした?」
「え?その大天使から聞いてない?今回の真犯人を見つけたら会わせてくれるって話」
「は?聞いてないけど」
「ちょっと〜話が違うじゃん」
魔人がガブリエルに向かって言う。
「私は承知した覚えはないですが」
ガブリエルと面識があるのか?
「ガブリエル?彼と話したの?」
「…はい。この前偶然見つけて」
「それで何を話したの?」
「真犯人を見つけたらソフィア様に会いたいと」
なるほど、そんなやりとりがあったのか。
「経緯はわかったわ。それで、私に何か話でもあるの?」
「そう。ずっとアンタのことが忘れられなくて。ソフィアって言うんだ」
「そうよ。それと私は今後もあなたに連れ去られる気は全くないわ」
二度と誘拐なんかされたくない。
「俺のものにはなれないってこと?」
「そうよ」
魔人は少し考える様子を見せてから口を開いた。
「俺、ずっと考えてたんだけど…俺の物になってくれないなら、俺がソフィアの物になればいいんじゃん」
ん?今なんて言った?
読んでいただきましてありがとうございました。
引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。
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