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29、囮

誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。

誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。

「昨日冒険者ギルドの前をうろついてたバンパイアもどきなら見たよ」


「もどき?一体何ですか?」


ガブリエルが聞くと、魔人は慌ててこたえた。


「バンパイアじゃないけど、眷族みたいな…。よくわからないけど、バンパイアなら心当たりがあるから今から行ってくるよ。だからあの子に会わせてくれる?」


「ハッ、そんな作り話を私が信じるとでも?」


「本当だって。多分いるところもわかるから。今から絶対連れてくるから!」


そういうと、魔人は人間に化けるのをやめて本来の姿に戻り、黒い羽を広げた。


「そいつが犯人なら俺は違うって信じてくれる?」


「魔人の言うことなど信じられるわけないでしょう。まあ真犯人が見つかれば話は別ですが」


「よし!絶対俺じゃないって証明してみせる」


そう言うと魔人はどこかに飛んでいってしまった。


「これはどうしたものか…。ソフィア様には余計な心配はかけたくないのですが」


そうしてガブリエルは、敬愛するソフィアの元へ戻った。


そして…一向に事件の進展がないまま数日が経った。


冒険者ギルドが夜の飲食店の営業を禁止した為、モルドールの夜は閑散として、街の賑わいは見る影もない。


女性が出歩かなくなったので事件は起こっていないが、何の進展もないままの冒険者ギルドに街の人々は苛立ちを募らせ始めた。


「これは…困ったね」


父が過剰な在庫になった食材を見て呟く。


飲食店だけでなく、そこに品物を卸す業者も大打撃だ。


ロイド商会も例外ではない。


「やっぱり私が囮になるよ。ガブリエルもシエルもいるし、何とかなるでしょう。とりあえず、ギルドマスターに相談してみよう」


私が言うと、ガブリエルも渋々頷き冒険者ギルドについてきた。


ギルマスはかなり悩んでいたが、他に打開策がないからと承認してくれた。


「しかしソフィアに何かあってはシエルに殺されかねん。俺も出て行って全力で守ろう」


ギルマス、熱いな。


「そう決まったら作戦を立てよう。シエルにも連絡だ」


その夜…。


「どうしてソフィアが囮なんかやんなきゃ行けないんだ。俺はまだ納得してないからね」


シエルはかなり不機嫌だ。


「ソフィア様、絶対に無理だけはしないでくださいね」


ガブリエルもしつこく念を押してくる。


「分かってるって。そもそも今日襲ってくるかもわからないし。危なくなったらちゃんと呼ぶから大丈夫だよ」


何とか2人を宥めて距離をとらせた。


ギルマスと冒険者達もいざという時の為に離れて待機してくれている。


静かになったところで、ひとり大通りを歩いていく。


コツコツコツ。


自分の足音だけが響き渡る。


誰もいない街ってこんなに怖いんだ。


しかし、自分からやると言ったからにはしっかりしなければ。


コツコツコツ、ヒタヒタヒタ。


あれ?


何か聞こえたと振り向くが、そこにはただ暗闇が広がっているだけだ。


急に霧も出てきた。


ぶるりと身震いをしてまた歩き出す。


コツコツコツ。


ヒタヒタ、今度はもっとちゃんと聞こえた。


もう一度振り向くとはっきりと耳元で声が聞こえた。


「こんばんは」


声の方を見ると、血の気がない20代くらいの痩せた青年が微笑んでいた。


「ガブリエル!シエル!出たよ!」


シエルとガブリエルが私に駆け寄ろうとすると、2人の前に人型の黒いものが地面から湧いて出た。


「邪魔をするとは不愉快ですね」


青年は影を操って2人に向かわせるが、彼らの相手ではない。


あっと言う間に影を蹴散らしていく。


「ではこれならどうでしょう」


隠れていたはずの冒険者達が出てきて2人に襲いかかる。


「クソッ、操られているのか?」


冒険者を気絶させようとシエルが殴ってもすぐ起き上がってくる。


まるでゾンビだ。


ガブリエルは苛立ち光の剣を作り出した。


「ガブリエル!冒険者さん達を殺さないで!できれば怪我もさせないで」


操られているだけの冒険者達に危害を加えたくない。


「そうです、おとなしくしてくれれば血をもらうだけですみますよ」


青年が私の首筋に噛みついた。


バキッ!


「ふぁ、わふぁしの歯が!」


…どうやら私の皮膚は、バンパイアも噛めないほど硬いらしい。


歯が折れたバンパイアは口元を押さえてうずくまっている。


「そこまでじゃ!」


その時、凛とした少女の声が響き渡り、冒険者達が動きを止めた。


空中にふわりと舞い降りるゴスロリ少女。


白い髪に赤い瞳、シミひとつなさそうな白い肌。


まるでビスクドールのようだ。


何故か神秘的な美しさを感じる。


読んでいただきましてありがとうございました。

引き続き次回もお読みいただけると嬉しいです。

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