23 謎の女性!
二十三話 謎の女性!
エティがスキル【摩天楼】を習得してからしばらく。
「さぁやるぞーー!! 【摩天楼】発動ーー!!」
ヘルムート樹海の中腹あたり。 もはや何もためらわないエティがスキルを発動。
効果で攻撃力を倍加させて高火力で魔物を次々と射っていく。
「あーーんエティ、私にもやらせてよーー!!」
私の手には限界突破をした死神の大鎌。
あれからエティとともに狩りまくった結果、今のランクは6!
ただそこからが全くといっていいほど上がらない。
ちなみに今の能力はーー……
●【死神の大鎌】触れた敵に大ダメージ。 相手に魔力の刃を当てることで、装備を破壊し麻痺状態にさせながら魔力を多めに吸収する。 レベルが上がるようになる。【※】
・【現在のランク】6
・【能力】魔力超吸収・麻痺属性・武具破壊・死神の加護・死神の微笑み
●【死神の微笑み】発動すると魔物が引き寄せられてくる。
この文末にある【※】の内容はレベルが上がったとしても各ステータス値は私のスキル【死神の行進】により掻き消されてしまうというもの。
レベルが一定以上ないと装備できないものもあるからそれに関しての配慮?らしい。
とりあえず武器はこのまま死神の大鎌で行くとして、出来れば腕輪とかそういうのが欲しいよね。
もちろんスキル付きの!
だから私も敵から魔力を奪うついでに討伐報酬を狙って頑張ってるんだけど……
「エティーー、飛ばし過ぎだよお……!!」
私の目の前にはすっぽんぽんの姿のエティ。
エティのたどり着いた考え……それはどうせ破れるのなら服をあらかじめ脱いで発動すればいいじゃん……というものだった。
なのでエティは討伐場所に着くとなんの躊躇いもなく衣装を脱ぎ去り【摩天楼】を発動。
破れるものが何もないのでエティは何も心配することなくバンバンと撃ち込んでいく。
エティ曰くここなら私以外に見られることがまずないから安心なのだとか……。
それにしても目のやり場には困るし私が魔物から魔力を吸い取りたくてもエティが一撃で倒してしまうので刃を魔物に触れさせることすらできない。
まぁ経験値はパーティ組んでるから私にも入ってくるし、エティが満足するまでは今のままにしておいてあげようかな……。
そう思いながら私がエティに視線を移した……その時だった。
「なに? 騒がしいわね」
「「ーー……!?」」
樹海の奥から女性の声。
誰かがこっちに向かって近づいてきている。
「ひゃああああ、ちょっと私あっち行ってるね!」
エティがせっせと服を持って茂みの中へ。
私は声のした方に視線を向ける。
すると……
「あらら、これはまた派手にやったわね」
暗闇の中から現れたのは紫色の長い髪をした白い服を着た女性。
地面に散らばるエティが倒した魔物の討伐報酬を見て感心している。
「これは……あなたがやったの? それともそこの茂みに隠れているあなた?」
女性が私たちに尋ねる。
「えっと……お姉さんは? 迷子ですか?」
「いや、私はちょっと色々あってここで暮らしてるのよ」
「ここで?」
「えぇ」
女性は即答。
すると着替え終えたエティが茂みの中から出てきて女性の前へ。
「いやいや流石にそれはウソでしょ! こんな樹海の中で暮らすとか自殺行為じゃない? 夜には強い魔物も徘徊してるって言うし! それにーー……」
エティは女性の身なりをまじまじと見る。
「お姉さん見たところ何も装備してないよね。 もしかしてヒトに擬態出来る魔物とかそういった類?」
あ、確かに。
エティの言う通り武器も持たずにここにいるなんてそれこそ自殺行為だ。 でも体には目立った傷もなければ汚れもない。
もしかしてエティの言う通りそう言うスキルを持った魔物……!?
そう考えたら怖くなった私は死神の大鎌を握りしめる。
「ーー……あら、そうなるの?」
女性はキョトンと私たちを見つめる。
「クロエ! この人多分魔物だよ! 武器構えられてまったく動じてないもん!」
エティが女性から少し距離をとって弓を構える。
「う、うん! そうだね!」
私も死神の大鎌の刃を女性に向けてスキルを発動。
周囲にタワッシーの軍勢を召喚させる。
「あらあら、威勢いいのね。 でもやめておいたほうがいいと思うけど……」
「うるさーい!! クロエ、もしかしたらこいつこの樹海のボスかもよ! 倒したらすごい討伐報酬が期待できるかも!」
「本当だね! じゃあやっちゃおう!!」
私はタワッシーを突撃させながら死神の大鎌を握りしめ女性に振るう。
エティも【摩天楼】を発動させて矢を女性に。
これだけの一斉攻撃……!
流石に樹海のボスといえど無傷で済むわけには……!
「ーー……え」
次の瞬間私たちは言葉を失う。
女性は一瞬で私の真後ろに移動。
タワッシーたちに手をかざすとそこから黒い球体がいくつも出現。 タワッシーたちに向かって勢いよく飛んでいく。
『ピギャアアアア!!!』
タワッシー前衛が崩されるも彼らは即座に防壁モードへ合体。
その強固な防御力のまま女性を取り囲み一気に畳み掛ける。
しかし……
『ピ……ピギャアアアア!!!!』
防壁の中心に風穴が。
そこから女性が華麗に飛び出しそのまま飛翔する。
「ええええええ!? 空飛べるの反則じゃない!?」
「クロエ! 私に任せて!」
エティが狙いを定めて女性に強力な一撃を放つ。
ーー……が。
「甘いわね」
女性はノールック弓矢をキャッチ。
そのままその矢をその辺にポイっと投げ捨てる。
この人……前のドラゴンよりもやばい。
こうなったらまた逃げるしかないと思いリュックからウサちゃんを取り出す。
『なんじゃい』
「ウサちゃん、私たちが逃げれる時間稼いで!」
『おぉベッピンさんじゃい。 任せるんじゃい』
ウサちゃんが頬を赤らめながら女性に向かってジャンプ。
するとーー……
「あら、なんかその大きさ懐かしいわね」
女性はウサちゃんをキャッチすると抱きしめながら頭を撫でる。
『も、もっとやって欲しいんじゃい』
「あらあら。 そういうところはあの子とは真逆ね」
女性はクスリと笑うと地面に降り立ち私に視線を向ける。
「ーー……!」
「もう、私からは仕掛けてないんだからそんなに身構えないでちょうだい」
「で……でも」
「それに私、別にこの樹海のボスでもなんでもないわ」
女性がクスクスと笑いながらエティに話しかける。
「だ、騙されないし! だってそんなに強い……!」
「まぁ私を倒したいのならかかってきてもいいけど、次は手加減しないわよ?」
「「ーー……!!」」
女性はそういうとウサちゃんを抱きしめたまま樹海の奥へと歩き出す。
「あぁ……ウサちゃん!」
『小娘、俺はこの美人と行くんじゃい。 増えた俺によろしくじゃい』
ウサちゃんが女性に抱かれたまま私に手を振る。
ーー……は?
「あ、そうそう、このままだと君たちもスッキリしないだろうから教えてあげるけど……」
女性は振り返ると私とエティを交互に見る。
「「ーー……?」」
「私、この樹海のボスじゃないけど、魔王様の部下だった者よ」
そう微笑むと女性は樹海の奥へと消えていく。
「ーー……魔王様?」
「え、クロエ、魔王様ってあの魔王のことだよね?」
エティが私のもとに駆け寄ってきて尋ねる。
「うん、多分」
魔王……それは少し前までこの世界を支配していた存在。
そんな魔王が何がったのかは分からないが邪神と呼ばれる存在に敗れ次はその邪神が姿を消したため、守りの姿勢になっていた各国の動きが活発化……戦争になったのだ。
「えっと……つまりエティ、どういうこと?」
私は頭にハテナマークを浮かばせながらエティに尋ねる。
「それはつまり……魔王軍はまだ生きてるってことじゃ……」
「「ええええええええええ!?!?!?!?」」
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